名もなき者たちが「女性の権利」のために立ち上がる
本作に登場する「ジェーン」は実在した団体で、人工妊娠中絶が違法だった1960年代後半から70年代初頭にかけて、推定12000人を救ったと言われている。しかし、1973年アメリカ連邦最高裁が合法判決を下した「ロー対ウェイド事件(※)」から50年、今、米国では、再び違法とする動きが活発化し、論争が激化している。女性たちが自ら権利を勝ち取った実話を映画化した本作は、映画祭で注目を集め大きな話題となった。※1973年アメリカ連邦最高裁が女性の人工妊娠中絶の権利を合法とした歴史的判決
本作のテーマを、シリアスな問題でありながらエンターテインメントに昇華させたのは、ハリウッドを代表するキャスト・制作陣。監督をつとめるのは『キャロル』(15)で第88回アカデミー賞脚色賞にノミネートされたフィリス・ナジー。プロデューサーは『ダラス・バイヤーズクラブ』(15)や本年度賞レースで大注目を集める『バービー』(23)など、多くの世界的ヒット作品を生み出し続けているロビー・ブレナーが務めた。
多くの話題作を手掛ける制作陣とともに本作をつくりあげたのは、こちらもハリウッドで多くの活躍をする俳優陣。裕福な主婦から、権利を求め自ら立ち上がる主人公のジョイを演じるのは、『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』(02)や「ピッチ・パーフェクト」シリーズに出演(『2』では監督&製作も)、さらに『チャーリーズ・エンジェル』(19)では製作・監督・脚本を務めるなどマルチな才能を発揮するエリザベス・バンクス。そして「ジェーン」を率いるリーダー・バージニアを、『アニー・ホール』(77)、「エイリアン」シリーズ、「ゴースト・バスターズ」シリーズなど、数多くのハリウッド大作に出演する名優シガニ―・ウィーバーが演じるなど豪華なキャストと制作陣が集結した。
予告映像は、主人公・ジョイ(エリザベス・バンクス)が緊張した面持ちで「助けて」と、あるところに電話をするシーンから始まる。
舞台は1960年代アメリカ。軽快な音楽とカラフルでキュートなファッション、ボリュームのあるヘアスタイルにレトロな車。裕福な家庭の主婦であるジョイは、夫・ウィル(クリス・メッシーナ)との間に二人目の子を妊娠し、高校生の娘と幸せに暮らしていた。そんな幸せに溢れた家族の風景から一変、ジョイは突然倒れてしまう。なんと妊娠をきっかけに自身の持病が悪化している事が発覚するのだ。
母体の影響を考えると中絶しかすべがない事を知り失意の底に落とされる一家。ジョイは生きる為、苦渋の決断をするが、中絶が法律的に許されていない時代のアメリカで、自分には選択肢がない事を知る。彼女は次第に追い詰められていくが、街で見かけた「妊娠?助けが必要?CALL JANE(ジェーンに電話を)」という怪しい張り紙を頼りに辿り着いたのは、違法だが安全な中絶手術を提供するアンダーグラウンドな活動団体「ジェーン」だった。
「誰がジェーン?」というジョイの問いにリーダーのバージニア(シガニ―・ウィーバー)は「わたしたちが“ジェーン”よ」と答える。緊張と恐怖で押し潰されそうな中、無事に手術を終え命を救われたジョイ。「わたしたちの人生のために選択の自由が、あるべきじゃない?」という言葉と共に、選択できない女性たちを救うため、「ジェーン」の一員となっていくジョイ。そんな秘密の活動に不信感を抱く夫、バージニアからの「密告した?」という言葉に込められた意味とは?
『コール・ジェーン ー女性たちの秘密の電話ー』
3月22日(金)全国公開
配給:プレシディオ
©2022 Vintage Park, Inc. All rights reserved.