15年ぶりに授かった新しい命。喜びに包まれていたジョイを心筋症が襲う。妊娠を継続すると命の保証がない。考えた末、中絶を決めるが、1967年のアメリカでは認められないことだった。映画『コール・ジェーン -女性たちの秘密の電話-』は実話をベースに、中絶が違法だったアメリカのシカゴで女性の権利を擁護し、ひたむきに闘った者たちを描いた作品である。主演は俳優としてだけでなく監督・プロデューサーとしても活躍するエリザベス・バンクス。ブルジョワの主婦から女性権利の戦士に転身していくジョイを繊細かつ逞しく演じている。そんな彼女のインタビューが本国から届いた。

女性たちの絆とその歴史を描き出す

──本作への出演を決めた理由を教えてください。

ジェーン・コレクティブが当時のシカゴの女性たちにもたらした影響の大きさを改めて知ったからです。登場人物の多くは当時の複数の実在の人物をモデルに生み出されたキャラクターでした。当然ながら彼女たちは秘密主義で非合法な地下組織だったけれど、昔ながらの女性同士の助け合いに加われたと感じました。出産や生理時に隔離されるといったコミュニティの経験は数千年の歴史がある。子どもを育てるにはコミュニティが必要です。出産におけるあらゆる場面で女性同士が助け合ってきたことが歴史に記録されています。この物語は女性たちの絆とその歴史を描き出そうとしたひとつの形だと思いました。

画像: 女性たちの絆とその歴史を描き出す

─すばらしいですね。どんな人々がどんな理由でジェーンの一員として危険な活動に関わっていたのでしょうか。

ジェーンは 「ロー対ウェイド判決」(※)の数年前の時代に中絶とその機会を提供した女性グループで、中絶処置が必要な時に頼れる団体です。当時、中絶は違法で、リスクが高く、不道徳だと糾弾する風潮もあり、ひどい偏見を恐れて、中絶を口にすることさえできませんでした。だからこそ、妊娠したくない人がいる限り必要とされる仕事だったのです。

一方で、市長や警察署長、マフィアのボスなど、愛人を持つ男性たちが愛人絡みで助けを必要としているので、中絶の需要は常にありました。そこでジェーンの女性たちはマフィア絡みの怪しい医者を頼らなくても、やり方を理解している女性たちがうまく手術をこなせればいいと気づいたのはすばらしかった。昔の助産婦さんのように女性たち自身がうまくやれれば怪しげな男性を頼らなくていいし、男性優位の社会で愛人や妻・娘として男性に仕えなくてもいいのです。

※1973年アメリカ連邦最高裁が女性の人工妊娠中絶の権利を合法とした歴史的判決

自分の進むべき道を模索していたジョイ

──ジョイはなぜ危険を冒してまで中絶をしようとしたのでしょうか。

ジョイは心筋症を患ってしまいました。まれな症例ですが、妊娠によって心臓の病気が悪化していると診断され、妊娠状態を止めるしか解決策がないと医師から言われます。妊娠したこと自体、彼女には思いがけないことでした。既に15歳の娘もいますし、再び赤ちゃんの母親になるにはかなりの高齢です。奇跡の赤ちゃんですが、自分の人生を諦められないし、シャーロットへの責任もある。果たして自分の命や娘への責務を犠牲にしてまで授かりものと思えるのか。いろいろ悩んだ末、偶然の産物で病因でもある妊娠よりも、自分と家族のために生き抜こうと決めたのだと思います。

──その後、ジョイはジェーンに参加して窮地に立つ人々を助けるようになりました。どうしてだと思いますか。

ジョイは目的意識を持った女性です。15歳になろうとする一人娘シャーロットも成長し、家を離れる時も近い。子育てもそろそろ終わりです。そのタイミングで仕事を始める女性は多いけれど、ジョイはその道を選ばず、彼女は改めて自分の人生を見つめ直しました。

その頃、女性の権利を求める革命が起きました。ジョイは傍観者であり続けるか、自身の才能を発揮していくべきか、自分の進むべき道を模索していたのだと思います。

女性たちの苦悩と団結する姿を描く

──すばらしいキャスト陣でした。

それが出演を決めた大きな理由です。特にシガニー・ウィーヴァーは俳優としてずっと憧れの存在でした。最高に素晴らしい方でした。俳優としても、女性としても、理想的なお手本です。ありがたいことに、この作品に出演して、みんなの演技を引き立ててくれました。ケイトやクリス・メッシーナ、他のキャストもよかった。題材は深刻でしたが、現場は楽しめました。ジェーンたちは素敵だし、新人のウンミはビッグになりそうな気がします。

画像: 女性たちの苦悩と団結する姿を描く

──フィリス監督はどのような方でしたか。

現状が意味することをどう伝えるのか。彼女は非常に明確なビジョンを持っています。彼女が素晴らしい物語を生み出す情熱で獅子奮迅の働きしたから、この映画ができました。実話ベースにしていますが、真の人間ドラマを作ろうとしているので、ドキュメンタリーのような堅苦しさはありません。

中絶がテーマというより、女性たちのリアルな苦悩と困難に打ち勝つために団結する姿を描いた作品です。温かい気持ちになって楽しんでください。

<PROFILE>
エリザベス・バンクス
1974年、米マサチューセッツ出身。『スパイダーマン』シリーズ、『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』(02/スティーヴン・スピルバーグ監督)、『ハンガー・ゲーム』や『ピッチ・パーフェクト』シリーズなどの話題作に出演するほか、2015年の『ピッチ・パーフェクト2』(15)では監督としてのキャリアをスタートさせ、『チャーリーズ・エンジェル』(19)では製作・監督・脚本・出演を兼ねた。俳優としての映画デビューは、1998年「Surrender Dorothy(原題)」。ほか、主演作『恋するブロンド・キャスター』(15)、出演作『シービスケット』(03)、『40歳の童貞男』(05)、『ブッシュ』(08)、『マジック・マイクXXL』(15)など。

『コール・ジェーン -女性たちの秘密の電話-』全国公開中

画像: 映画『コール・ジェーン -女性たちの秘密の電話-』ショート予告映像【3月22日(金)公開】 www.youtube.com

映画『コール・ジェーン -女性たちの秘密の電話-』ショート予告映像【3月22日(金)公開】

www.youtube.com

<STORY>
中絶が法律的に許されていない時代のシカゴで、2人目の子供を妊娠した主人公のジョイ。しかし、妊娠によって心臓の病気が発覚する。担当医から緊急に中絶を勧められるが、病院の男性責任者たちからは、あっさりと中絶を拒否されてしまうのだった。

なぜ本人の意志で中絶は決められないのか?なぜ命の危険が分かっていながらも本人の身体を優先できないのか?ジョイは正規ルートではない方法で中絶を試みる。たどり着いたのは、違法だが安全な中絶手術を提供する女性主導の活動団体「ジェーン」だった。「ジェーン」を率いるのは、威厳あるフェミニストのバージニア。彼女に誘われて、ジョイも「ジェーン」に深く関わるようになる──。

<STAFF&CAST>
監督・脚本:フィリス・ナジー 
プロデューサー:ロビー・ブレナー
出演:エリザベス・バンクス、シガニー・ウィーヴァー
2022年/ アメリカ /原題:Call Jane
配給:プレシディオ 
©2022 Vintage Park, Inc. All rights reserved.
公式サイト:https://www.call-jane.jp

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