ベスト作品 第10位(同点)
『ナポレオン』
18世紀末の革命期のフランス。若き軍人ナポレオンは才能を発揮して出世を重ね、運命の女性ジョセフィーヌと結婚も。だが皇帝にまで上り詰めた彼に思わぬ運命が待っていた。
『ナポレオン』
監督:リドリー・スコット
出演:ホアキン・フェニックス、ヴァネッサ・カービー
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
ベスト作品 第10位(同点)
『枯れ葉』
仕事を失ったアンサと工事現場で働くホラッパはヘルシンキのカラオケバーで出会い、惹かれあう。互いに名前も知らなかった2人は不運にも再会の機を逃してしまうが……。
『枯れ葉』
監督:アキ・カウリスマキ
出演:アルマ・ポウスティ、ユッシ・ヴァタネン
配給:ユーロスペース
©︎ SPUTNIK OY 2023 photo; Malla Hukkanen
ベスト作品 第9位
『モリコーネ 映画が恋した音楽家』
多数の名曲を残し2020年に死去した映画音楽のマエストロ、エンニオ・モリコーネ。彼はいかにしてファンの心をつかむ曲を生み出してきたかという謎に迫る長編ドキュメント。
『モリコーネ 映画が恋した音楽家』
監督:ジュゼッペ・トルナトーレ
配給:ギャガ
©︎ 2021 Piano b produzioni, gaga, potemkino, terras
ベスト作品 第8位
『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』
大物映画プロデューサー、ワインスタインが性的暴行を繰り返していたことを取材するNYタイムズの記者ミーガンとジョディ。2人は業界の隠ぺい体質に問題があると気づく。
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『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』
監督:マリア・シュラーダー
出演:キャリー・マリガン、ゾーイ・カザン
配給:東宝東和
©︎ Universal Studios. All Rights Reserved.
ベスト作品 第7位
『生きる LIVING』
1953年のロンドン。お堅い公務員のウィリアムズは人生に虚しさを覚えていたが、医師から癌であることを宣告される。余命を悟った彼は自身の人生を見つめなおすことになる。
『生きる LIVING』
監督:オリヴァー・ハーマナス
出演:ビル・ナイ、エイミー・ルー・ウッド
配給:東宝
©︎Number 9 Films Living Limited
ベスト作品 第6位
『エンパイア・オブ・ライト』
1980年代の英国の海辺の街。老舗映画館エンパイア劇場で働くヒラリーは心に傷を抱えた孤独な女性。そんな彼女は新たに雇われた黒人青年スティーヴンに好意を寄せていく。
『エンパイア・オブ・ライト』
監督:サム・メンデス
出演:オリヴィア・コールマン、マイケル・ウォード
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
©︎ 2024 20th Century Studios. All Rights Reserved.
ベスト作品 第5位
『フェイブルマンズ』
幼い時、両親と出かけた劇場で映画の虜になったサミー少年。自ら8ミリカメラを回して自主映画を撮り始め、才能を発揮するが、成長するにつれ家庭内に様々な変化が訪れる。
『フェイブルマンズ』
監督:スティーヴン・スピルバーグ
出演:ミシェル・ウィリアムズ、ポール・ダノ
配給:東宝東和
©︎ Storyteller Distribution Co., LLC. All Rights Reserved.
ベスト作品 第4位
『バービー』
毎日がハッピーな「バービーランド」で夢のように完璧な暮らしを送っていたバービー。だがある日、彼女の身体に異変が起き、その原因を探るためBFのケンと共に人間世界へ。
『バービー』
監督:グレタ・ガーウィグ
出演:マーゴット・ロビー、ライアン・ゴズリング
配給:ワーナー・ブラザース映画
©︎ 2023 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.
ベスト作品 第3位
『エブリシング・エブリウェア・ オール・アット・ワンス』
コインランドリーを営む中国系移民の中年女性エヴリンが、いつもは優柔不断な夫がいきなり別人のような行動を起こし、どういうことか世界滅亡の危機を救う救世主に変身?
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『エブリシング・エブリウェア・ オール・アット・ワンス』
監督:ダニエル・クワン、ダニエル・シャイナート
出演:ミシェル・ヨー、キー・ホイ・クァン
配給:ギャガ
©︎ 2022 A24 Distribution, LLC. All Rights Reserved.
ベスト作品 第2位
『キラーズ・オブ・ザ・ フラワームーン』
20世紀初頭のオクラホマ。石油の発掘で莫大な富を得た先住民オセージ族の娘モリーと結ばれた白人アーネストは、町の有力者である伯父の企みに加担していくことになる……。
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『キラーズ・オブ・ザ・ フラワームーン』
監督:マーティン・スコセッシ
出演:レオナルド・ディカプリオ、リリー・グラッドストーン
配給:東宝ピクチャーズ
Apple Original Films/Apple TV+にて全世界配信中
ベスト作品 第1位
『TAR/ター』
ベルリン・フィル初の女性首席指揮者に就任したリディア・ター。多忙な日々を送る彼女は、名声を守り続ける重圧と、何者かが仕掛けた思いがけない陰謀によって、次第に悪夢のような状態に追い詰められていく。
『TAR/ター』
監督:トッド・フィールド
出演:ケイト・ブランシェット、ニーナ・ホス
配給:ギャガ
©︎ FOCUS FEATURES. LLC
ベストワン作品『TAR/ター』を紐解く
(文・斉藤博昭/デジタル編集・スクリーン編集部)
年に何度か、観ながら心の〝ざわつき〞が収まらない映画に出会うことがある。本作はまさにそんな一本。観た人たちの感想も、かなり〝ざわつく〞ものばかりだった。
誰もが認めるのは、主人公の強烈なキャラクター。ドイツの有名オーケストラで初の女性主席指揮者となったリディア・ターの言動、佇まいは時に神経を逆撫でするレベル。完璧主義者で、すべてに対して上から目線。我が物顔のトークショーや、気に入らない学生に対する辛辣な攻撃、さらに同僚を蹴落とす工作……。
ターを巡ってパワハラやセクハラ、キャンセルカルチャーの問題も絡んでいき、そのあたりも2023年の現在、多くの人が生々しく受け止めることになった。
実際に本作は、地位の高い人の転落劇を見てみたいという、人間の隠れた本能を刺激するし、ホラー映画のような戦慄描写もあったりする。ただそれだけでは、スキャンダラスで露悪的な魅力で終わってしまった可能性もある。
しかしター役のケイト・ブランシェットが、最高峰のアーティストだけが踏み入ることのできる葛藤や苦闘に深い部分まで没入。常人には理解しがたい感情や感覚を、演技を通して〝納得させる〞という離れ業をやってのけた。
もちろん一流指揮者としてのタクトさばきもパーフェクト。その結果、物語はセンセーショナルなのに、どこか崇高な作品を観ているような錯覚をおぼえる。そこが『TAR/ター』の凄さなのだろう。ターと同性パートナーの生活も、展開のうえで重要な役割を果たしながら、ことさら強調されない。そんなアプローチも今っぽい。
冒頭は長回しのカットなどもあり、嵐の前の静けさというムードだが、前半に不可解だった問題が中盤から後半にかけて確信に迫っていくあたりも、映画らしい醍醐味。そして1回観ただけでは謎が残るパートもあり、その意味を噛みしめるためにリピートしたくなるのも本作の魔力で、トッド・フィールド監督の構成力に唸るしかない。
前作『リトル・チルドレン』から16年ぶりの新作ということで、監督作への並々ならぬ執念と、綿密な計算が実を結んだのかも。本作の成功で、次回作はインターバルを空けずに作ってくれればいいのだけれど!
ラストに関しても、いくつもの解釈が可能な本作。この運命は、ターにとって不本意だったのか? いや、むしろ最高の居場所を見つけられたのか? 観る人によって後味が変わるのも映画であると、高らかに宣言する傑作である。