2024年のはじまりは豪華クリエイターのコラボ作が続々公開! 先日来日もしたアリ・アスターが『ジョーカー』のホアキン・フェニックスと組んだ不安すぎる最新作『ボーはおそれている』をご紹介します。(文・平沢薫/デジタル編集・スクリーン編集部)

スコセッシ、デル・トロも絶賛! ようこそ、悪夢とユーモアの世界へ

画像: スコセッシ、デル・トロも絶賛! ようこそ、悪夢とユーモアの世界へ

ヘレディタリー 継承』(2018)『ミッドサマー』(2019)で観客を不穏な悪夢の世界に誘ってきたアリ・アスター監督の長編第3作は、彼が前2作より前に構想していた、彼の原点的作品。

映画構想当時のアスター監督と同じようなアパートに住み、何もかもが不安な主人公ボーが、怪死した母親の葬儀のために帰省しようとするが、なかなか家にたどり着けない。

監督はこれまでの3作を非公式な三部作と考えており、主人公の抱える不安や、家族との不安定な関係は3作共通。しかし、今回は前2作のような写実的表現ではなく、現実と主人公の妄想が判別不可能な形で描かれる。

また、主人公の旅を描くロードムービーでもあり、映画を見ながら彼と一緒にさまざまな悪夢のような世界をさまようことになる。

あのマーティン・スコセッシ監督がファーストカットは最高にゾっとしたと語り、ギレルモ・デル・トロ監督がアリ・アスターらしいユーモアと悪夢の共存を絶賛する本作が、ついにベールを脱ぐ!

【あらすじ】全てが不安な男は果たして帰省できるのか?

ボーは、うがい薬を少し飲んでしまっただけで、体に悪影響があるのではないかと不安になるほどの心配性。母親からは帰省を催促する電話が何度も来るが、なかなか帰省できない。

ある日、母がシャンデリアの落下によって急死したと告げられ、葬儀のため帰省することになるが、ドアの外は浮浪者や犯罪者で溢れ、ボーは自動車に轢かれて、気づけば運転手の家で介抱されていた。はたしてボーは、家にたどり着くことができるのか。

登場人物

ボー(ホアキン・フェニックス)

アパートで一人暮らしをする男。極度の心配性で、何を見ても不安に駆られる。資産家の母親ひとりに育てられ、父親は彼が生まれる前に死んだと聞かされている。母の葬儀のために実家に帰省しようとするのだが──。

このコラボに注目!

アリ・アスターの世界

画像: アリ・アスターの世界

不安定な精神状態の主人公、持続する緊張感と不穏な気配、急に悪夢のような様相に変貌する世界など、アリ・アスター監督の世界観は今回も共通。

ただし、フェニックスのため従来の撮影方法を変更。これまでは撮影前に俳優とカメラの位置を決めていたが、本作ではフェニックスが自由に動けるように、位置を決めなかった。

怪優ホアキン・フェニックス

画像: 怪優ホアキン・フェニックス

アカデミー賞主演男優賞に『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』(2005)『ザ・マスター』(2012)でノミネート、『ジョーカー』(2019)で受賞する一方、リン・ラムジー監督『ビューティフル・デイ』(2017)などインディ映画でも活躍中。

リドリー・スコット監督『ナポレオン』(2023)の主演に続く本作だが、野心家ナポレオンとはまた別の神経過敏な男を見事に演じる。

注目ポイントは他にも! 押さえておきたい4つのポイント

天邪鬼ぶり全開! 不安で不穏な3時間

画像: 天邪鬼ぶり全開! 不安で不穏な3時間

ドアの鍵穴に差しておいた鍵が無くなり、その理由は不明のまま。そんな漠然と嫌な後味が残る出来事が続々。さらに、ボーが風呂に浸かってホッと一息ついた瞬間、いきなり彼を襲う事態など、恐怖なのにインパクトありすぎで笑ってしまうような出来事も。

不安と恐怖と笑いが混然一体となったアリ・アスターの世界が全開。

豪華コラボはほかにも!

画像: 豪華コラボはほかにも!

ボーが森の中で奇妙な劇団の演劇に出演するシーンのアニメを担当したのは異色ストップモーション・アニメ『オオカミの家』(2018)の監督コンビ、クリストバル・レオン&ホアキン・コシーニャ。

撮影監督は、監督が学生時代に出会い、長編3作全てを担当しているパヴェウ・ポゴジェルスキだ。

ボーは比較的まとも!? 狂った登場人物

画像: ボーは比較的まとも!? 狂った登場人物

ボーの周囲の人物はみな、どこか怪しい。彼のセラピストは、ボーに母への思いを語るよう迫り、ボーに衝突した車の運転手は、彼に自分の家での静養を強要するが、その家にはなぜか精神的に不安定な退職軍人がいる。森で出会った謎の男は、ボーに彼の父親を知っていると言う。

彼らもボーの妄想の一部なのか、判別できない。

キーワードは“母”?

画像: キーワードは“母”?

監督は来日時に「家族とは?」と問われて「煩わしいもの。終わりのない義務感」と返答。『ヘレディタリー 継承』ではトニ・コレット演じる人物とその母、彼女とその息子との関係に問題があり、『ミッドサマー』ではフローレンス・ピュー扮する主人公と妹の関係に難点がある。

本作ではボーと母親の関係が物語の中心に。

『ボーはおそれている』
2024年2月16日(金)公開
2023/アメリカ/2時間59分/配給:ハピネットファントム・スタジオ
監督:アリ・アスター
出演:ホアキン・フェニックス、ネイサン・レイン、エイミー・ライアン、パーカー・ポージー、パティ・ルポーン

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