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話題作連発の英国の鬼才
ガイ・リッチー&マシュー・ヴォーンの関係とは?
今や英国を代表する監督となったガイ・リッチーの名前を一躍世界に轟かせたのが長編デビュー作『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』(1998)。そのプロデュースを手掛けたのが、当時製作者デビューしたばかりのマシュー・ヴォーンだった。
制作会社SKA Films(現在のマーヴ・スタジオ)を立ち上げた二人はその後も仕事のパートナー・友人同士として『スナッチ』(2000)などのヒット作を制作。
そしてヴォーンは『レイヤー・ケーキ』(2004)で監督デビュー。じつはこの作品も当初監督予定だったリッチーが降板したため、ヴォーンが代わりに引き受けたという経緯がある。
それ以来二人のコラボはなくなったが、つい最近ヴォーンは『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』続編についてリッチーと語ったことを明かしている。
ガイ・リッチー監督が初めて挑む壮大な社会派ヒューマンサスペンス
『コヴェナント/約束の救出』
『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』(1998)で長編映画監督デビュー後、「シャーロック・ホームズ」シリーズや『オペレーション・フォーチュン』(2023)など、これまで数々の痛快なアクション・エンターテインメントを世に送り出してきたイギリスの名監督ガイ・リッチー。
その最新作は、今までのフィルモグラフィーとは対照的な、リアルで緊迫感に満ちた感動の社会派ヒューマンドラマ。今なお続くアフガニスタン問題とアフガン人通訳についてのドキュメンタリーから着想を得て、アメリカ軍兵士とアフガン人通訳の国境を越えた固い絆、互いの尊厳をかけた“約束”を描く。
アフガニスタンに赴任する米軍曹長ジョン・キンリー役で主演を務めるのは『ブロークバック・マウンテン』(2005)のジェイク・ギレンホール。これが初めてのガイ・リッチーとのタッグとなる。
彼とかけがえのない絆で結ばれることになるアフガン人通訳のアーメッド役にイラク出身のデンマーク人俳優ダール・サリム。そのほか「ザ・ボーイズ」のアントニー・スター、ジョニー・リー・ミラーらが脇を固めている。
あらすじ
2018年、アフガニスタン。米軍曹長のジョン・キンリー(ジェイク・ギレンホール)は、アフガン人通訳のアーメッド(ダール・サリム)を雇う。彼の部隊はタリバンの武器庫を突き止めるが大量の兵を送り込まれ、キンリーとアーメッド以外は全員殺される。
キンリーも銃弾を受け瀕死の状態となるが、アーメッドによって救出され、タリバン占領下の土地から無事に妻子の元へと帰還。だが、自分を助けたことで、アーメッドがタリバンに追われる身となったことに愕然とするキンリーは、彼と家族を助け出すために、再びアフガニスタンへ戻ることを決意する。
登場人物
ジョン・キンリー曹長 (ジェイク・ギレンホール)
タリバンの武器や爆発物の隠し場所を探す部隊を率いる米軍曹長。妻とまだ幼い二人の子どもがいる。任務中に窮地に陥る。
アーメッド (ダール・サリム)
アメリカへの移住ビザと引き換えに米軍に雇われるアフガン人通訳。通訳として非常に優秀だが簡単には人の指図を受けない。
ガイ・リッチー監督インタビュー
「戦争映画に取り組みたいという思いがありました」
──“アフガニスタン問題”の映画化に至った経緯を教えてください。
以前から戦争映画に取り組みたいという思いがありました。僕が最も好きなジャンルなのだと思います。けれど、映画にしたいと思うような物語が長い間見つからなかったのです。
ある時、アフガニスタンでの戦争と、通訳者に関するドキュメンタリーを見て、通訳者たちが直面することに心を動かされました。アフガニスタンに関して様々な話を聞いていましたが、どれも恐ろしいと同時に感動的でした。それがきっかけだったんです。こんなに恐ろしい環境の中でもまだ人情が残っていて、それが他の人たちに対して差し伸べられるということが。
──主人公2人を演じたジェイク・ギレンホールとダール・サリムの印象は?
僕はジェイクの俳優としての才能に常に感動しています。それに、この役にぴったりな俳優だと分かっていました。ダールには、この役に必要なカリスマ性と、僕が望んでいた知性がありました。
彼は、父親が子に与えるような愛情を優しく表現しながら、状況によっては厳しい態度を見せる。穏やかな雰囲気を醸し出しているけれど、体を張って自分や他者を守ることができる人です。
『コヴェナント/約束の救出』
2024年2月23日(金・祝)公開
アメリカ/2022/2時間3分/配給:キノフィルムズ
監督:ガイ・リッチー
出演:ジェイク・ギレンホール、ダール・サリム、アントニー・スター、アレクサンダー・ルドウィグ、ボビー・スコフィールド、エミリー・ビーチャム、ジョニー・リー・ミラー
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マシュー・ヴォーン監督が新たに放つ、現実と空想が交差する痛快スパイ・アクション
『ARGYLLE/アーガイル』
「キック・アス」や「キングスマン」シリーズなど過激でポップな唯一無二のアクションと痛快なストーリー展開で圧倒的支持を集めるイギリスの鬼才マシュー・ヴォーン監督。スパイ映画の名手として知られる彼が新たに手掛けたのは、現実と空想のスパイ世界が交差する壮大な物語を描くファンタジック・アクション・エンターテインメント。
スパイ小説“エージェント・アーガイル”シリーズで人気の作家エリーが、小説の内容があまりに現実に酷似していたことから、謎の諜報組織に命を狙われることになる。
キャストにはマシュー作品お馴染みの顔ぶれのほか、アカデミー賞受賞者や音楽界のスーパースターなど豪華なメンバーが集結。
小説家エリーに「ジュラシック・ワールド」シリーズのブライス・ダラス・ハワード、現実世界の自称スパイに『スリー・ビルボード』(2017)のサム・ロックウェル、小説内のスパイ・アーガイルに『ジャスティス・リーグ』(2017)のヘンリー・カヴィル。
猫のアルフィーはスーパーモデルのクラウディア・ヴォーンの実の飼い猫チップが演じている。
あらすじ
米国の田舎町で静かに暮らす作家のエリー(ブライス・ダラス・ハワード)はスパイ小説「アーガイル」シリーズで人気を博す売れっ子。ある日執筆に行き詰まった彼女は、愛猫アルフィーを連れて列車に乗り気分転換の旅へ。しかし車内で突然、謎の刺客たちに襲われてしまう。
なんと彼女の小説が現実のスパイ世界の陰謀を正確に言い当てていたため、諜報組織ディヴィジョンが“預言者”である彼女を消そうとしているという。自称スパイのエイダン(サム・ロックウェル)に窮地を救われたエリーは、人生を一変させる驚愕の事態に巻き込まれていく。
登場人物
アーガイル(右)(ヘンリー・カヴィル)
エリーの小説内の超人的スパイ。
ルグランジェ(左)(デュア・リパ)
ゴールドのドレスをまとった謎のスパイ。
エリー・コンウェイ(ブライス・ダラス・ハワード)
執筆した本の内容が実際に起こってしまう人気作家。
エイダン(サム・ロックウェル)
エリーの前に突然現れスパイを名乗る。
アルフィー
猫用バックパックでエリーと冒険を繰り広げる愛猫。
マシュー・ヴォーン監督インタビュー
「ハッピーな気分になる作品を作る時だと思いました」
──本作のアイデアはコロナ禍に生まれたそうですね。
子どもたちと一緒に『ロマンシング・ストーン 秘宝の谷』(1984)を観ていて、娘たちに“なんでこれの現代版を作らないの?”と言われました。そこで、今こそ暗い世の中に一筋の陽の光が射すようなハッピーな気分になる作品を作る時だと思ったんです。
1980年代の映画はどれも素晴らしいストーリー展開と非現実さが上手く融合していました。コロナ収束後の今の世界にも、皆を笑顔にして、観ている人がまるで冒険をしているかのように感じられる映画が必要だと思ったんです。
──タイトルロールのアーガイル役にヘンリー・カヴィルを起用した理由は?
ヘンリーならあらゆる古典的スパイの要素を表現してくれる気がしたんです。私は『ロッキー4/炎の友情』(1985)のドルフ・ラングレンのような人物や、時代を象徴する角刈りなど、1980年代のスタイルにずっとこだわりを持っています。そこでアーガイルにそれを取り入れることにしました。
ヘンリーの演技は素晴らしかったです。このような見た目を上手く作るのはかなり難しいけれど、ヘンリーは完璧に体現してくれました。そして見事にジェームズ・ボンドの雰囲気を漂わせていました。
『ARGYLLE/アーガイル』
2024年3月1日(金)公開
アメリカ=イギリス/2024/2時間19分/配給:東宝東和
監督:マシュー・ヴォーン
出演:ブライス・ダラス・ハワード、サム・ロックウェル、ブライアン・クランストン、キャサリン・オハラ、ヘンリー・カヴィル、ソフィア・ブテラ、デュア・リパ、アリアナ・デボーズ、ジョン・シナ、サミュエル・L・ジャクソン
© Universal Pictures