カバー画像」:Photo by Getty Images
本命は? 対抗は? 映画のプロたちが予想するオスカーのゆくえ
2023年度の映画賞レースもいよいよ最終ゴールが見えてきましたが、その結末やいかに? アカデミー賞授賞式を間近に控え、映画のプロたちに気になる主要部門の最終受賞予想をしてもらいました! ここから今回の本命、対抗が見えてくる?
清藤秀人 予想
作品賞:『オッペンハイマー』
監督賞:クリストファー・ノーラン
主演男優賞:キリアン・マーフィー
主演女優賞:リリー・グラッドストーン
助演男優賞:ロバート・ダウニーJr.
助演女優賞:ダヴァイン・ジョイ・ランドルフ
『オッペンハイマー』の作品賞、監督賞、主演男優賞、助演男優賞は確実かと。オスカーでは無冠だったクリストファー・ノーランが、自身の最高傑作と言われる渾身の作品で黄金像を手にする姿を考えただけでウルウルする。
ノーランとは盟友関係にあるキリアン・マーフィーの感情を抑制した天才科学者像、俳優としての自我を消し去ったロバート・ダウニーJr.の洗練された役作りは、どちらも最多得票を集めそう。
主演女優賞は『哀れなるものたち』のエマ・ストーンもありだが、多様性の観点から先住民系俳優初の受賞を目指す『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』のグラッドストーンか。助演女優賞は大方の予想通り『ホールドオーバーズ(仮題)』のランドルフで。
斉藤博昭 予想
作品賞:『オッペンハイマー』
監督賞:クリストファー・ノーラン
主演男優賞:ポール・ジアマッティ
主演女優賞:エマ・ストーン
助演男優賞:ロバート・ダウニーJr.
助演女優賞:ダヴァイン・ジョイ・ランドルフ
過去数年間に比べても、今年の作品賞は最も予想しやすく、なかなかその“1強”を突き崩す作品が現れそうにない。『バービー』や『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』といった当初のライバルが、賞レース終盤にやや失速気味になり、とくに監督賞は近年稀にみる独走状態。とは言ってもサプライズ大逆転は密かに歓迎。
『ホールドオーバーズ(仮題)』は新鋭、ドミニック・セッサの演技も絶品で、彼とのアンサンブルでポール、ダヴァインが際立った。ただ主演男優は『オッペンハイマー』の快進撃に乗って、キリアン・マーフィの可能性も捨てきれず。
主演女優も冷静に判断すればエマだが、1度受賞しているし、多様性に傾けばリリー・グラッドストーン、大穴でザンドラ・ヒュラーもアリかも。
成田陽子 予想
作品賞:『オッペンハイマー』
監督賞:クリストファー・ノーラン
主演男優賞:キリアン・マーフィー
主演女優賞:リリー・グラッドストーン
助演男優賞:ロバート・ダウニーJr.
助演女優賞:ジョディ・フォスター
作品賞は圧倒的に『オッペンハイマー』に決まり! 歴史的ストーリー、サスペンス感、知名俳優を配置しての登場人物たちの性格と行動。
ノーラン監督の安定の操縦が画面を引き締め、観客を強引に引きずり込む。
マーフィーはりんごだけのダイエットで痩けた頬を効果的に見せ、彼の内面の葛藤演技は最高級。
グラッドストーンの北米ネイティヴの女性の包み込むような暖かさが胸を打つ。
ダウニーJr.の底に秘めた策略と智謀の演技には仰天させられる。
フォスターの自信に満ちた存在が映画の錨になって支えている。
まつかわゆま 予想
作品賞:『オッペンハイマー』
監督賞:クリストファー・ノーラン
主演男優賞:キリアン・マーフィ
主演女優賞:エマ・ストーン
助演男優賞:ロバート・ダウニーJr.
助演女優賞:ダヴァイン・ジョイ・ランドルフ
作品の力として今年は断トツ『オッペンハイマー』だし、その功労者は監督ノーランに尽きる。と言って監督賞と主演女優賞に『バービー』無視は問題。せめて脚色賞でグレタ・ガーウィグを讃えてあげてほしい。
主演男優賞はブラッドリー・クーパー以外は一世一代のチャンスの激戦だが作品の力でキリアンに。主演女優は演技者としてならエマしかいない。
助演賞は作品を見た途端に決定。ダウニーJr.の変身なりきりぶりは凄いし、『ラスティン:ワシントンの「あの日」を作った男』(2023)にも出ているダヴァインが同じ人とは思えない『ホールドオーバーズ(仮題)』の演技は白眉。全体的には多様性に欠ける結果になるのではないかと思う。
よしひろまさみち 予想
作品賞:『オッペンハイマー』
監督賞:クリストファー・ノーラン
主演男優賞:キリアン・マーフィー
主演女優賞:リリー・グラッドストーン
助演男優賞:ロバート・ダウニーJr.
助演女優賞:ダニエル・ブルックス
今後の関係者の発言次第ではあるものの、今回のオスカー主要賞は『オッペンハイマー』祭りがほぼ確定。
受賞作の傾向である、“史実ベース”、“その事象・人物への偏見の反省”、“興行的成功”、“独創性とアート性”、“映像・脚本の革新性”という5拍子が揃った作品だけに、作品賞、監督賞、主演男優賞、助演男優賞は手堅い(クリストファー・ノーランがユニバーサルとの新タッグで花開く、というドラマに最大の期待)。
新人にチャンスがある助演女優賞もダヴァイン・ジョイ・ランドルフとダニエル・ブルックスを抑える可能性がある。残る主演女優賞もほぼ出来レースで、リリー・グラッドストーンとエマ・ストーンの一騎打ち。この流れだと、また「白すぎるオスカー」問題が浮上することも付け加えたい。
米崎明宏 予想
作品賞:『オッペンハイマー』
監督賞:クリストファー・ノーラン
主演男優賞:ポール・ジアマッティ
主演女優賞:エマ・ストーン
助演男優賞:ロバート・ダウニーJr.
助演女優賞:ダヴァイン・ジョイ・ランドルフ
1月下旬時点の本国の様々な受賞予想記事を見ていると『オッペンハイマー』とクリストファー・ノーランが作品と監督部門のトップランナーであることは間違いない。おそらく助演男優のロバート・ダウニーJr.なども加えて“オッピー・ナイト”と呼ばれそうな気配。
難しいのは主演部門で、男優はキリアン・マーフィーとポール・ジアマッティが、女優はエマ・ストーンとリリー・グラッドストーンがデッドヒート。
全米俳優協会賞の結果発表を待っていられないので、一応個人的に取ってほしいジアマッティと誰も見たことがないような演技に果敢に挑んだエマを挙げておきます。助演女優はダヴァイン・ジョイ・ランドルフで決まりでしょう。