3月9日(ロサンゼルス時間)、いよいよ明日のアカデミー賞授賞式を控え、『ゴジラ-1.0』で特殊視覚効果賞にノミネートされた、山崎貴、渋谷紀世子、高橋正紀、野島達司の4人が日本総領事公邸で記者会見を行った。(文・写真:はせがわいずみ、編集:K&K)

「白組という会社は手作りの持っている、温かみというのを凄く大事にしてきた会社」

 いよいよ翌日となった授賞式について、山崎監督が「前日なので、やれることはもう何もないので、完全にまな板の上の鯉状態で明日は楽しみたいと思います」というと、渋谷も「投票も済んでしまっていて、私たちはもうどうしようもない ので、めちゃめちゃオスカーを楽しみたいと思っています」と答えた。また、最年少の野島は、「僕は、全てのことが初めのことなので、楽しむも何も、楽しむこともがんばらないといけないという感じなので、がんばって楽しみたいと思います」とコメントし、会場を沸かせた。

画像: 山崎貴

山崎貴

野島達司

 「楽しむ」という言葉が出てきたので、授賞式のどんなことを楽しみたいかと聞くと山崎は、「ショーアップされた空間にいられることが楽しみです。今までずっとテレビで観ていたあちら側に身をおけるということだけでも、相当滅多にないことだと思うので、華やかさを楽しんで、記憶に焼き付けておこうと思います。後で思い出せるようにしておきたいなと思います」と答えた。

 アカデミー賞の話題からは少し外れるものの、最近、ハリウッドでもストライキの項目に挙がるなど話題になっているAIの映画界への影響についての質問に山崎監督は自身の見解をこう語った。

 「白組(山崎監督の所属する総合映像制作プロダクション)という会社は最終アウトプットさえよければどの道を通ってもいいというのを社是にしているんです。ミニチュアでも絵でも、CGが一番いいならCGでも。選択肢を多くすることで生き延びてきた会社でもあるんですよ。そこでAIが、その選択肢の一つになれば、もちろんAIの力を借りることはあるんですけど、今AIに触ってみたりした感覚で言うと、すごい絵ができているんだけど何か気持ち悪い。まだ最終アウトプットにはしばらくはならないんじゃないかなって今は感じています。ただ、異常な進化のスピードなんで、ある日気づいたらそれは我々の重要なツールの一つになっているかもしれないし、極端なことを言うとぼくらの仕事がなくなるかもしれない可能性だってある。そういう点で言うと、何かを判断できる人間で居続けたいなと思っています。絵を見て、ジャッジできれば、次のステップにはなるのだと思うので。とは言え、思っているほど簡単じゃないなというのもありますね。もの凄く素晴らしい絵はできるけど、それが人間が生理的に素敵って思う絵とはちょっと違う。そのちょっとのズレが、ぼくらがずっと悩まされている“不気味の谷”という言葉があるんですけど、人間を作ると凄くよく見えてもなんか変っていう。最近、いくつか不気味の谷を乗り越えた作品がありますが、乗り越えるのにもの凄く時間がかかっている。実は、AIが不気味の谷を乗り越えるのは思ったより簡単ではない。という感覚が今はありますね。だけど、異常な進化スピードなので、来年には平気でガンガン使っているかもしれない。分からないですが……。白組という会社は手作りの持っている、温かみというのを凄く大事にしてきた会社なので、それはそう簡単には覆せないだろうとちょっと高をくくっているところもある。一生懸命人間が手でやった物に込められた、ある種の怨念みたいなものが意外と最終的にお客さんの心を掴むんじゃないかなっていうことは、今までの経験値で感じてきてたことなんで、実はそこまで心配してない部分もあります」。

 また、ハリウッドでも珍しい女性のVFXディレクターである渋谷は、女性として後輩へこんなメッセージを伝えた。

渋谷紀世子

 「Q&Aをやっていた際に、同じVFX業界の女性の方が私のところに来て、もの凄く励みになりますって言われました。みんなでどんどん女性が活躍できる業界にしていこうねって話で盛り上がりました。女性の感性というのは、決して男性に劣ることはないと思うし、むしろ女性じゃないと見えないところもあると思うんです。男性、女性というのをあまり考えなくてもやっていける仕事でもあるような気もするので、ぜひみなさん日本のVFX業界を底上げしてみんなでがんばって行ければと思っています」。

画像: (左から)山崎貴、渋谷紀世子、野島達司

(左から)山崎貴、渋谷紀世子、野島達司

 本作のVFXは秀逸で、ハリウッドの大作に全く引けを取らない。また、ハリウッドにはゴジラのファンも多いことから、『ゴジラ』作品が初めてオスカーを手にする可能性はかなり高いと予想する。明日の授賞式を楽しみにしたい。

文・写真/はせがわいずみ、編集/K&K

 

 

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