〝今世紀最大級のSF超大作〞との呼び声高い『デューン 砂の惑星PART2』にちなんで、SFファン必見の最新作から名作までをガイドします。(文・平沢薫/デジタル編集・スクリーン編集部)

『デューン 砂の惑星PART2』

画像: 『デューン 砂の惑星PART2』

ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の脚色術が堪能できる

なぜ1965年に刊行された小説が、2020年代の今、映画化されなければならないのか。

それを明確にしたのがまず、この映画化の魅力。原作にある、惑星全体の生態系という視点や、デューン先住民たちの持続可能性を意識した生活にも焦点が当てられるのは、地球温暖化の影響が加速する現在だからこそだろう。

もう一つ注目なのは、監督が直接の原作だけでなく、小説シリーズ全作を読んで物語を俯瞰したうえで映像化していること。監督が「第3作を撮りたい。なぜならこの物語は原作の続編『デューン 砂漠の救世主』で完結するから。原作はその後も続くが、撮るのは第3作まででいい」と発言しているのがその証拠。

この続編小説は前作の12年後を描くが、世界はポールが目指したものにはなっていない。監督はそれを踏まえて本作を撮っているのだ。

そのうえで、映画は、圧倒的に端正な映像美により、原作の戦闘、復讐、恋愛など多様な要素を取り入れて描かれている。原作を読むと、ヴィルヌーヴ監督の脚色術が堪能できる。

原作

フランク・ハーバート「デューン 砂の惑星〔新訳版〕」(上・中・下)
(酒井昭伸・訳/早川書房)

画像1: 不朽のSF小説から生まれた名作映画6選/『デューン 砂の惑星PART2』から辿るSFの世界
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『デューン 砂の惑星PART2』
2024年3月15日(金)公開
監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ
出演:ティモシー・シャラメ、ゼンデイヤ
配給:ワーナー・ブラザース映画

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『ブレードランナー』(1982)

画像: Photo by Sunset Boulevard/Corbis via Getty Images
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今もSF映画の近未来像に多大な影響を与える

常に酸性雨が降る薄暗い街に、広告群のネオンが光を滲ませ、人々は空中飛行する乗り物で高層ビルの間を移動する。リドリー・スコット監督の映像美学によって構築された2019年のロサンゼルスの情景が、今もSF映画の近未来像に多大な影響を与える名作。

ストーリーは原作とはかなり異なるが、人間そっくりの人造人間が存在する世界で、彼らと人間の違いはどこにあるのかというモチーフや、デッカードの陰鬱な心情は共通。

原作

フィリップ・K・ディック「アンドロイドは 電気羊の夢を見るか?」(浅倉久志・訳/早川書房)

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『ブレードランナー』
監督:リドリー・スコット
出演:ハリソン・フォード、ルトガー・ハウアー

『惑星ソラリス』(1972)

画像: Photo by LMPC via Getty Images
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タルコフスキー監督独自の静謐で内省的な世界

惑星ソラリスを調査する宇宙ステーションに送り込まれた心理学者ケルヴィンは、そこに、乗組員たちの無意識を反映した、人間そっくりの何かが出現することを知る。

大筋は原作と同じだが、J・S・バッハのコラール前奏曲と、何度も画面全体に広がる惑星ソラリスの海の静かに緩やかに続けられるうねり、今は3人しかいなくなった乗組員たちが交わす謎めいた会話により、タルコフスキー監督独自の静謐で内省的な世界が出現する。

原作

スタニスワフ・レム「ソラリス」(沼野充義・訳/早川書房)

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『惑星ソラリス』
監督:アンドレイ・タルコフスキー
出演:ナタリア・ボンダルチュク、ドナタス・バニオニス

『スキャナー・ダークリー』(2006)

画像: 『スキャナー・ダークリー』U-NEXTで配信中 TM & © Warner Bros. Entertainment Inc.

『スキャナー・ダークリー』U-NEXTで配信中

TM & © Warner Bros. Entertainment Inc.

実写をアニメ化した独特の技法が世界観に合致

フィリップ・K・ディックの小説の映画化作の大多数は、設定のみ共通でストーリーは別物だが、本作はストーリーも原作に忠実。

捜査官が、迷彩スーツのため互いの素顔を知らない近未来。麻薬捜査のため中毒者たちと共同生活をする潜入捜査官フレッドは、上官に彼自身の監視を命じられ、次第に現実を見失っていく。俳優が演じた実写映像を加工してアニメ化する技法による映像が、現実と非現実の区別が不明瞭な本作の世界観に合致。

原作
フィリップ・K・ディック「スキャナー・ダークリー」(浅倉久志・訳/早川書房)

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『スキャナー・ダークリー』
監督:リチャード・リンクレイター
出演:キアヌ・リーヴス、ロバート・ダウニーJr.

『スローターハウス5』(1972)

画像: 『スローターハウス5』U-NEXTで配信中 © 1972 Universal Pictures. All Rights Reserved.

『スローターハウス5』U-NEXTで配信中

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そこはかとなく漂うユーモアと静かな諦観の気配

20世紀のアメリカで生まれた主人公ビリーが、第二次世界大戦のドレスデンでの捕虜生活、トラルファマドール星の動物園でのポルノ女優との生活、戦後のアメリカでの子育て、自分の死の瞬間など、さまざまな時間をランダムに行き来することを繰り返す。

基本的ストーリーが原作と同じだけでなく、そこはかとなく漂うユーモアと静かな諦観の気配もヴォネガット・ジュニアの小説世界と同じ。音楽を異才ピアニスト、グレン・グールドが担当。

原作

カート・ヴォネガット・ ジュニア「スローターハウス5」(伊藤典夫・訳/早川書房)

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『スローターハウス5』
監督:ジョージ・ロイ・ヒル
出演:マイケル・サックス、ユージン・ロッシュ

『宇宙戦争』(2005)

画像: 『宇宙戦争』U-NEXTで配信中 COPYRIGHT © 2021 DREAMWORKS LLC AND PARAMOUNT PICTURES CORPORATION. ALL RIGHTS RESERVED.

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古典名作SFへのオマージュが多数

宇宙人の地球侵略を描く古典名作小説を、時代を現代に変え、人気スターと人気監督のタッグで映画化。夜、彼方に見える黒い森の向こうから、巨大な異形のものが出現するシーンが美しく恐しい。

エイリアンの乗り物のデザインが、原作小説の挿絵のタコ型火星人の姿を意識していたり、エイリアン本体の造形が1953年のジョージ・パル製作映画版のエイリアンを踏まえているなど、古典名作SFへのオマージュが多数盛り込まれている。

原作

H・G・ウェルズ「宇宙戦争」(斉藤伯好・訳/早川書房)

『宇宙戦争』
監督:スティーヴン・スピルバーグ
出演:トム・クルーズ、ダコタ・ファニング

名作SF小説のドラマシリーズ化作品も続々配信

画像: Netflixシリーズ『三体』2024年3月21日(木)より独占配信

Netflixシリーズ『三体』2024年3月21日(木)より独占配信

中国SF作家リウ・ツーシンの同名の宇宙人侵略SF三部作を、ドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」のクリエイターコンビらがドラマ化する「三体」がNetflixで3月21日から配信。

アイザック・アシモフの壮大な宇宙年代記「銀河帝国興亡史」シリーズが原作の「ファウンデーション」、終末の後、地下144階建ての建造物“サイロ”の中で暮らす人々を描くヒュー・ハウイーの同名SFシリーズのドラマ化「サイロ」はAppleTV+で。

原作

劉慈欣 「三体」(大森望、光吉さくら、ワン・チャイ・訳、 立原透耶監修/早川書房)

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