家を買うことに決めた知人から「間取りに不可解な点がある」という相談を受けた人気の出ないオカルト専門の動画クリエイターが一風変わった妄想家の設計士とともに不可解な間取りの謎の先にある真実に迫る。映画『変な家』は白い仮面をかぶった謎の人物・雨穴がYouTubeに上げた1本の動画とWEB記事をベースに、続きを書き加えるかたちで出版した小説を原作にしたミステリー。間宮祥太朗が動画クリエイターの雨宮役、佐藤二朗が設計士の栗原で主演を務め、物語の鍵を握るヒロイン・柚希を川栄李奈が演じる。メガホンを取った石川淳一監督に脚本開発やキャラクター造形について話を聞いた。(取材・文/ほりきみき)

変人だが、冷静沈着な常識人の栗原

──栗原を演じた佐藤二朗さんとはいかがでしょうか。

栗原というキャラクターはYouTubeや小説では声だけの設定です。しかし実際に人間が演じる中で雨宮とのバディ感で考えると、より変わったキャラクターの方が面白い。では、どのくらいでやるべきか。これが僕にとってテーマの1つでした。

画像: 石川監督と佐藤二郎

石川監督と佐藤二郎

二朗さんとは僕も今回が初めてだったので、世の中に期待されている二朗さんをどのくらい出せばいいのかというところが最初は気になったのですが、初めて顔を合わせたとき、二朗さんに“どこかでひと笑い”という感じがありませんでした。二朗さんと聞けば、僕らはアドリブで何か面白いことをいうのだろうとイメージしますけれどね。台本を読んで、こちらのキャスティング意図がわかっていらしたのでしょう。栗原というキャラクターについてもちゃんとつかんでいらして、それぞれのシーンにおいてご自身の役割を踏まえて、様々なアイデアを出してくださいました。

例えば、突飛なことを言うときにテンションを上げて言うのではなく、小声でぼそぼそ言っていると、逆にみんなが聞いてくれるとおっしゃったのです。そうやって栗原を作っていったので、いつもとはちょっと違う一面というか、テレビでよく見る二朗さんとは違うキャラクターとしての栗原ができたのではないかと思います。

──栗原は変わった人ではあるものの、この作品のキャラクターの中では、いちばん真っ当な人に思えました。

栗原は変人ですが、決して間違ったことを言っていません。冷静沈着な常識人です。その辺りをいいバランスでできたと思います。

雨宮は今回、何とか無事にやり遂げましたが、次にまた何かの事件に巻き込まれたらどんな感じになるのか。栗原がストッパーになるのか。妄想が広がるところです。

──栗原が登場するとき、イチゴパフェをぐちゃぐちゃにかき混ぜている様子が映し出されます。それだけでは決して怖いシーンではありませんが、その行為と音が相まって、居心地の悪い不気味さから怖さを感じました。

雨穴さんのYouTubeや小説の怖さは見えないところで起こっている伝聞に信憑性があるところ。本当かどうかわからないけれど、確かに辻褄が合っている。それが本当だったら怖いという怖さです。

しかし、映画では主人公たちが巻き込まれていく中で、どうしても直接的な画が出てきてしまいます。とはいえ、お子さんから高齢者の方まで幅広い年齢層の方々に見ていただくためにもグロい画は出したくない。ではどうしたらいいのか。

ご指摘のシーンは雨宮が栗原に相談に行っただけで、まだ何も起こっていませんが、何となく怖さを連想させる絵面を狙っていました。何かが起こってもおかしくないことを冒頭部分で感じてほしかったのです。

──監督は普段、テレビドラマを中心に仕事をされていますが、今回、映画だからこそ、できたことはありましたか。

テレビと映画は何が違うのか。毎回、これもテーマにしています。もちろん、“大きいスクリーンで見られる”、“音響が全然違う”など、いろいろ違うところはあるのですが、この作品は企画自体がテレビではなく、映画向けというところが大きいので、このストーリーラインがやれるのは映画だからこそだと思います。

今回は撮影の柳田裕男さん、美術監督の相馬直樹などスタッフのみなさんが映画を中心にされている方々ばかりでした。絵面的には柳田さんたちに委ねた部分が多く、僕自身はあまり意識し過ぎずにできました。

──最後にひとことお願いいたします。

「変な家」は雨穴さんのYouTubeや小説、そこから派生したマンガなどいろいろあります。しかし本作は「変な家」という大きいストーリーラインこそ変わりませんが、それらのどれとも違って、大きなスクリーンでエンターテインメントとして楽しむためにいろいろと工夫をしました。

一度ご覧いただいて結末がわかっていても、もう一度ご覧いただくと思わぬところで笑え、何度か劇場に足を運んでいただきますとその度に新しい気づきがあると思います。

<PROFILE>
監督:石川淳一

1971年12月31日生まれ。山梨県出身。

『エイプリルフールズ』(2015年)で映画監督としてデビュー。近年の主な監督作に、映画『ミックス。』(2017)、ドラマ「リーガル・ハイ」シリーズ、「フラジャイル」「ストロベリーナイト・サーガ」「絶対零度〜未然犯罪潜入捜査〜2020」「テッパチ!」など多くのTVドラマでチーフディレクターを務める。

『変な家』全国公開中

画像: 映画『変な家』何・か・が・“変”・な【予告変】75秒 www.youtube.com

映画『変な家』何・か・が・“変”・な【予告変】75秒

www.youtube.com

<STORY>
“雨男”の名前で活動する、オカルト専門の動画クリエイター・雨宮(間宮祥太朗)は、マネージャーから、引越し予定の一軒家の間取りが“変”だと相談を受ける。そこで雨宮は、自身のオカルトネタの提供者である、ミステリー愛好家の変人設計士・栗原さん(佐藤二朗)にこの間取りの不可解な点について意見を聞いてみることに…。次々と浮かび上がる奇妙な“違和感”に、栗原さんはある恐ろしい仮説を導き出す…。

そんな矢先、ある死体遺棄事件が世間を騒がせる。その現場は、なんとあの【変な家】のすぐ側だった。事件と家との関連性を疑った雨宮は、一連の疑惑を動画にして投稿することに。すると、動画を見た「宮江柚希」なる人物(川栄李奈)から、この家に心当たりがあるという連絡が入る。柚希と合流したことで、さらに浮上する数々の謎。そして新たな間取り図。やがて二人は、事件の深部へと誘われていく―。紐解かれていく間取りの謎の先に、浮かび上がる衝撃の真実とは─。

<STAFF&CAST>
原作:雨穴「変な家」(飛鳥新社)
監督:石川淳一
脚本:丑尾健太郎
音楽:小島裕規“Yaffle”
主題歌:アイナ・ジ・エンド「Frail」(avex trax)
出演:
間宮祥太朗 佐藤二朗
川栄李奈
長田成哉 DJ松永(Creepy Nuts) / 瀧本美織
根岸季衣 高嶋政伸 斉藤由貴 石坂浩二

※高嶋政伸の『高』は正式には『はしごだか』

配給:東宝
© 2024「変な家」製作委員会

画像: 『変な家』全国公開中

公式サイト:https://hennaie.toho.co.jp/

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