名優のキャリアを中心にその道のりを振り返る連載の第36回。今回取り上げるのは、今年になってから『ピアノ・レッスン』など1990年代の代表的出演作のリバイバルが続いているベテラン個性派アクター、ハーヴェイ・カイテルです。(文・米崎明宏/デジタル編集・スクリーン編集部)
カバー画像:Photo by Getty Images

名門俳優養成学校に10年連続で不合格になったというまさかの過去も持つ

画像: ハーヴェイ・カイテル Photo by Getty Images

ハーヴェイ・カイテル

Photo by Getty Images

今年になってからベテラン個性派アクターとして知られるハーヴェイ・カイテルの出演作品がなぜか連続リバイバルされている。

1月にまず宝石強盗を決行する男たちの一人を演じたレザボア・ドッグス(1992、クエンティン・タランティーノ監督)が公開され、続いて人間性に問題ありの警部補を熱演したバッド・ルーテナント/刑事とドラッグとキリスト(1992、アベル・フェラーラ監督)、2月には犯罪を犯したヒロインたちを追う刑事役の『テルマ&ルイーズ』(1991、リドリー・スコット監督)、そして3月には口のきけない人妻にピアノの授業を通じて求愛する粗野な男を演じた『ピアノ・レッスン』(1993、ジェーン・カンピオン監督)となぜか1990年代前半の名作、快作のリバイバルが集中。

偶然かもしれないが、この4作でカイテルの演じる役柄の幅広さがわかり、しかもこれらの監督たちとはいずれも一度ならずコンビを組んでいることから俳優としての優秀さが伺える。

こうした名監督たちも含め、長いキャリアの中で様々な監督の作品に出演したカイテルだが、中でもやはりマーティン・スコセッシとの関係を見過ごすことはできない。

カイテルのデビュー作は、オフ・ブロードウェイの新人時代に出会ったスコセッシのデビュー作『ドアをノックするのは誰?』(1967、日本はDVD公開)だったが、その後『ミーン・ストリート』(1973)『アリスの恋』(1974)『タクシードライバー』(1976)と連続でスコセッシ作品に出演。

近年も『アイリッシュマン』(2019)に出演するなどその絆は強い。

さらにスコセッシ作品の常連俳優ロバート・デ・ニーロとの絆はさらに深く、前述の『ミーン・ストリート』『タクシードライバー』『アイリッシュマン』の他に、親友デ・ニーロとの共演作は『恋におちて』(1984)『コップランド』(1997)『サン・ルイ・レイの橋』(2004、日本はDVD発売)、『ミート・ザ・ペアレンツ3』(2010、日本はDVD発売)とスコセッシ作品を離れても圧倒的に多い。

画像: 盟友スコセッシ、デ・ニーロとカイテル Photo by Getty Images

盟友スコセッシ、デ・ニーロとカイテル

Photo by Getty Images

そんなカイテルだが、元はセールスマンや裁判所の速記官などを経て演劇の世界に目覚め、デ・ニーロも通ったかの有名な俳優養成学校=アクターズ・スタジオに10年連続で不合格となった“まさかの事実”もある。

スコセッシの友人でもあるフランシス・フォード・コッポラ監督の大作『地獄の黙示録』の主演に抜擢されるも2週間後に降板というスキャンダル(?)もあり、しばらくハリウッドから敬遠される時期もあった。

そのためか1980年代はあまり大きな作品に恵まれなかったが、1990年代になって事情が逆転。アカデミー賞助演男優賞候補になった1991年の『バグジー』あたりからカイテルの本領発揮が始まる。

特にいまリバイバルされている4作を中心に、『天使にラブ・ソングを…』(1992)『パルプ・フィクション』(1994)『スモーク』(1995)『ユリシーズの瞳』(1995)など良質の作品への出演が相次ぎ、一気に名優の名をほしいままにする。

一方、バイオレントな役のイメージから抜け出したいという気持ちもあったようで、コメディー『ゆかいな天使/トラブるモンキー』(1994、R・スコットが製作総指揮)やファンタジー『フェアリーテイル』(1997)などのようなファミリー向け作品に脇役でも出演することも。

さらに『レザボア・ドッグス』で無名時代のタランティーノを支持したように、インディペンデント作品への理解も見せ、ベトナム人監督トニー・ブイの『季節の中で』(1999)では兼製作総指揮を担当。これはサンダンス映画祭で高く評価されている。

現在84歳の高齢だが、『ギャング・オブ・アメリカ』(2021)では実在のギャング、マイヤー・ランスキー役で主演を張るなどまだまだ第一線で活躍中。待機作も10作を数える売れっ子のカイテル。

私生活では女優ロレイン・ブラッコと12年間同棲し、2001年にはカナダの監督兼女優のダフナ・カストナーと結婚している。

『ピアノ・レッスン 4K デジタルリマスター』

一台のピアノをめくる「口をきかない」人妻と粗野な男の不思議な愛の形

画像: 『ピアノ・レッスン 4K デジタルリマスター』

公開30周年を記念して4Kデジタルリマスター版で再公開されるジェーン・カンピオン監督のカンヌ国際映画祭パルムドール受賞作。

19世紀半ば。「6歳で話すことをやめた」女性エイダ(ハンター)が幼い娘フロラ(パキン)と一台のピアノを伴って、ニュージーランドの孤島に住むスチュアート(ニール)の元に嫁いでくる。新しい夫はピアノが邪魔だとして、現地の先住民との通訳を務めるベインズ(カイテル)の土地と交換してしまう。ピアノに執着するエイダに惹かれたベインズは、彼女にある取り引きを持ち掛ける……。

ハンターがオスカー主演女優賞、パキンが同助演女優賞を受賞している。

『ピアノ・レッスン 4K デジタルリマスター』
2024年3月22日(金)公開(リバイバル)
オーストラリア=ニュージーランド=フランス/1993/2時間1分/配給:カルチュア・パブリッシャーズ
監督・脚本:カルチュア・パブリッシャーズ
出演:ホリー・ハンター、ハーヴェイ・カイテル、サム・ニール、アナ・パキン

©1992 JAN CHAPMAN PRODUCTIONS&CIBY 2000

This article is a sponsored article by
''.