『青春18×2 君へと続く道』は藤井道人監督の初の国際プロジェクト作品。“初恋の記憶”をめぐり、18年前と現在の想いが切なく交錯するラブストーリー。ダブル主演を務めるのは、シュー・グァンハンと清原果耶。初恋と呼ぶにはあまりにも儚く、青い恋に落ちるジミーとアミを瑞々しく、等身大に演じ切っている。藤井監督の自主映画作品の頃からの盟友で、本作でもカメラマンを務めた今村圭佑氏にインタビューを敢行。作品についてカメラマンの視点で語ってもらった。(取材・文/ほりきみき)

全編において向き合う36歳のジミーと18歳のジミー


──冒頭の会議シーンで画面が切り替わる直前にコマ送りのスピードを変えたこと、台湾のカラオケ店を水たまりに映ったネオンから映し始めたシーンが印象に残りました。

冒頭のシーンは特に意識したわけではありませんが、ジミーの感情が変わった瞬間を表現するためにあのような技法を取ったんだと思います。

台湾のカラオケ店のシーンは夜、水たまりに映ったネオンから映し始めて、ゆっくりカメラが向きを上げていき、最終的に正面からお店を捉えます。水たまりは偶然あって、こうしたら面白そうだというその場のアイデアでした。


──朝、ベッドに寝ている18歳のジミーの横顔を立っているように捉えているのは何か意図があったのでしょうか。

2人が向き合っていることを表現したかったので、全編において、36歳のジミーは左を向き、18歳のジミーは右を向いています。

冒頭、日本にいる36歳のジミーが左を向いて立っているところで場面が台湾にいる18歳のジミーに切り替わります。台湾でのジミーは寝ていたので、カメラを倒して右を向いて立っているように見せ、2人が向き合っているのを分かりやすく表現したのです。これは脚本の段階から考えていました。

画像1: 全編において向き合う36歳のジミーと18歳のジミー


──照明などの技術スタッフはそれぞれの土地の方がされていますが、撮影は日本も台湾も今村さんがなさっています。

日本を外国の人が撮った時も思いますが、海外で撮影すると、海外のスタッフから「外国の人が撮ると違う場所のように見える」と言われます。僕は特に変えて撮ろうとしたわけではないのですが、その場所の文化や生活を知っている人から見ると外国の人が撮ったものは切り取り方が違うように見えるらしい。台湾のパートは僕が撮って、日本のパートは台湾のカメラマンに撮ってもらうと視点が違って面白いかなとも思いました。


──日本パートと台湾パートを撮られて、現場の違いをどう感じられましたか。

僕は海外ロケに行くときに知っているスタッフに同行してもらうのではなく、現地のスタッフにお願いして一緒にやる方が面白いものができると思っています。

僕が監督した『燕 Yan』(2020)を台湾で撮ったのは7年ほど前になるのですが、そのときは日本に比べて、機材などが足りないのを感じましたが、今回はそういったことがなく、スタッフの考え方も6~7年しか経っていないとは思えないくらいすごく変わっていました。

もちろん言葉が通じないので、日本で撮っているときのように意図や状況をスムーズに伝えることはできませんが、その一方で言葉が通じない分、むしろ良いところがあったのです。

僕の指示が“もうちょっと弱く”とか“もうちょっと強く”といった感じでニュアンス的になってくると言葉が通じないのは苦しい。そこで「もっと寂しくしたい」とか「もっと元気にしたい」といった感じで伝えると、受け取った人のイメージで作ってくれる。そうすると自分の持っていた元気とは違うこともあるけれど、そっちの方がよかったり、微妙なニュアンスで得られるものがあったりして、それはそれで撮っていてすごく面白かったです。ただ、これを日本でやると「元気ってどういうこと?」みたいになって、逆に伝わり辛くなるのですけれどね(笑)。

台湾映画は6~7年でかなり進化しているので、今後もすごい勢いで進化していくでしょう。日本映画も負けないように進化していかないといけないなと思いました。


──今村さんの視点でこの作品の見どころ教えてください。

日本の風景と台湾の風景が2人の感情や変化にうまく映るといいなと思って撮っていました。もちろん2人の感情の機微がいちばんの見どころですが、それとともに街の風景や雰囲気が主人公たちとぴったりリンクしていくのを感じながら見ていただければ、また別の良さも感じてもらえるのではないかと思います。

<PROFILE>
撮影:今村圭佑
1988 年生まれ。日本大学芸術学部映画学科撮影・録音コース卒業。大学在学中より藤井道人監督と自主映画を制作する。卒業後は KIYO 氏のもとで約 2 年アシスタントを務めたのち、24 歳で撮影技師としてデビュー。映画・CM・MV のカメラマン、撮影監督として活動し、2020 年には映画『燕 Yan』で長編監督デビュー。主な映画作品は『帝一の國』(17/永井聡監督)、『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』(18/湯浅弘章監督)、『デイアンドナイト』(19)、『新聞記者』(19)、『約束のネバーランド』(20/平川雄一朗監督)、『ヤクザと家族 The Family』(21)『余命 10 年』(22)、『百花』(22/川村元気監督)、『リボルバー・リリー』(23/行定勲監督)など。『四月になれば彼女は』(3月22日公開/山田智和監督)が公開中。

画像2: 全編において向き合う36歳のジミーと18歳のジミー

『青春18×2 君へと続く道』5月3日(金)より TOHO シネマズ 日比谷ほか全国ロードショー

<STORY>
始まりは18年前の台湾。カラオケ店でバイトする高校生・ジミー(シュー・グァンハン)は、日本から来たバックパッカー・アミ(清原果耶)と出会う。天真爛漫な彼女と過ごすうち、恋心を抱いていくジミー。しかし、突然アミが帰国することに。意気消沈するジミーに、アミはある約束を提案する――。
時が経ち、現在。人生につまずき故郷に戻ってきたジミーは、かつてアミから届いた絵ハガキを再び手に取る。初恋の記憶がよみがえり、あの日の約束を果たそうと彼女が生まれ育った日本への旅を決意するジミー。東京から鎌倉・長野・新潟・そしてアミの故郷・福島へと向かう。 鈍行列車に揺られ、一期一会の出会いを繰り返しながら、ジミーはアミとのひと夏の日々に想いを馳せる。たどり着いた先で、ジミーが知った18年前のアミの本当の想いとは――。

<STAFF&CAST>
出演:シュー・グァンハン、清原果耶、ジョセフ・チャン、道枝駿佑、黒木華、松重豊、黒木瞳
監督・脚本:藤井道人
原作:『青春18×2 日本慢車流浪記』
エグゼクティブ・プロデューサー:チャン・チェン
撮影:今村圭佑
配給:ハピネットファントム・スタジオ
©2024「青春18×2」Film Partners

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