ソフィア・コッポラに続き、現在は多くの女性監督が映画産業に風穴を開けるべく、常に新しい視点を持ち、その挑戦を続けています。そこで今回は、今注目すべき女性監督8人をご紹介します! まずは、現在公開中である『ビニールハウス』にて長編デビューを果たした新鋭イ・ソルヒから。(文・児玉美月/デジタル編集・スクリーン編集部)
カバー画像:Photo by Getty Images

ジュリア・デュクルノー

画像5: Photo by Getty Images
Photo by Getty Images

ステレオタイプを打ち壊さんとする作家性

ジュリア・デュクルノーは『TITANE/チタン』(2021)でカンヌ国際映画祭にてジェーン・カンピオンに続き、女性監督としては史上二人目となったパルム・ドール(最高賞)を受賞した。監督長編映画デビュー作となった『RAW 少女のめざめ』(2016)、短編映画『Juior(原題)』と一貫してその作風からボディ・ホラーのジャンル名とともに語られることも多い。

画像1: ジュリア・デュクルノー

いずれの作品にも、独特の皮膚感覚が表出する。デュクルノーの映画はあらゆるステレオタイプを打ち壊さんとする作家性を特徴とし、ジェンダーやセクシュアリティの規範性をも軽やかに飛び越えてしまう。

ジュリア・デュクルノーの最近作

2016 『RAW 〜少女のめざめ〜』監督・脚本
2021 「サーヴァント ターナー家の子守」 Apple TV+ S2 1話・2話 監督
2021 『TITANE/チタン』監督・脚本
2024 「ニュールック」Apple TV+ S1 5話・6話 監督

画像2: ジュリア・デュクルノー

『TITANE/チタン』
Blu-ray:¥5,280(税込) DVD:¥4,180(税込)
発売・販売元:ギャガ
© 2021 KAZAK PRODUCTIONS – FRAKAS PRODUCTIONS – ARTE FRANCE – VOO

チョン・ジュリ

画像6: Photo by Getty Images
Photo by Getty Images

異なる世代の女性たちを主軸に様々な社会問題を描く

虐待を受けている少女を性的マイノリティでもある警察官が救おうとする長編デビュー作『私の少女』(2014)、同じくペ・ドゥナ演ずる警察官が不当な雇用契約によって精神を蝕まれてゆく実習生の自死事件を追う次作『あしたの少女』(2022)と、チョン・ジュリは一貫して異なる世代の女性たちを主軸にしながら、小さな個人の物語から大きな社会の物語へと射程を広げる。

画像1: チョン・ジュリ

『あしたの少女』は現場実習生の権利保護を強化する法改正(原題『次のソヒ』から通称「次のソヒ防止法」と呼ばれる)にまで影響を与え、彼女の作品はつねに現実の社会と密接な関わりを持つ。

チョン・ジュリの最近作

2014 『私の少女』監督・脚本
2022 『あしたの少女』監督・脚本

画像2: チョン・ジュリ

『あしたの少女』
DVD:3,960円(税込)
発売・販売元:ライツキューブ
©2023 TWINPLUS PARTNERS INC. & CRANKUP FILM ALL RIGHTS RESERVED.

ハン・シュアイ

画像7: Photo by Getty Images
Photo by Getty Images

女性たちの自由と解放を問い続ける

ファン・ビンビンとイ・ジュヨンが共演した『緑の夜』は、ベルリン国際映画祭でクィアをテーマに扱う映画を対象にしたテディ賞にノミネートされた通り、二人の女性同士の親密な関係を描いた。

画像1: ハン・シュアイ

今現在、日本未公開であるハン・シュアイの長編デビュー作『Summer Blur(英題)』は世界的に高く評価されたが、同じく女性の関係性に光が当てられており、ハン・シュアイ自身も女性同士の絆に魅力を感じると語っている。彼女は『緑の夜』で東アジア社会に通底する家父長制をシビアに批判しつつ、物語の結末を幾重にも解釈が可能な寓意性によって彩る。

ハン・シュアイ監督の最近作

2020 『Summer Blur(英題)』監督・脚本
2023 『緑の夜』監督・脚本

画像2: ハン・シュアイ

『緑の夜』
2024年6月7日(木) 発売
DVD:4,180円(税込)
発売・販売元:インターフィルム
© 2023 DEMEI Holdings Limited (Hong Kong). All Rights Reserved

マリヤム・トゥザニ

画像8: Photo by Getty Images
Photo by Getty Images

映画における“触覚性”を高らかに謳いあげる

モロッコ出身のマリヤム・トゥザニは、監督長編映画デビュー作『モロッコ、彼女たちの朝』(2019)で未婚の妊婦とパン屋を営む女性二人の、パン生地を捏ねる手と手が触れ合う瞬間を官能的に映し出してみせた。

画像: 『青いカフタンの 仕立て屋』 © Les Films du Nouveau Monde - Ali n’ Productions - Velvet Films – Snowglobe

『青いカフタンの 仕立て屋』

© Les Films du Nouveau Monde - Ali n’ Productions - Velvet Films – Snowglobe

トゥザニの作品における“触覚性”は、続く『青いカフタンの仕立て屋』(2022)でさらに深化。そのオープニングでは、手の触れる布地に限りなく接近したカメラが緻密に触覚性を掬い取り、これが触覚の映画であることを高らかに謳いあげる。トゥザニは言語化しえない心情を、人と人が触れ合うこと、人が何かに触れることを通して観客に訴えかける。

マリヤム・トゥザニ監督の最近作

2019『モロッコ、彼女たちの朝』監督・脚本
2022『青いカフタンの仕立て屋』監督・脚本

This article is a sponsored article by
''.