墓泥棒が探すのはお宝か、愛か…
本作はギリシャ神話「オルフェウスとエウリュディケ」の悲劇のラブストーリーをモチーフにした、数奇な愛の物語である。
このたび解禁となる本編映像は、トスカーナの「公現祭(エピファニア)」のシーン。刑務所から戻ってきたばかりのアーサー(ジョシュ・オコナー)が一人で歩いていると、後ろから奇声をあげる集団が追いかけてくる。彼らは墓泥棒の一味で、農業用トラックに乗り込み、なにやら全員奇妙な格好をしている。アーサーは無視を続けようとするが、絡みつくように何度も名前を呼びかける彼らは、「またこちらの仲間に戻ってきなよ」とアーサーを良からぬ世界に誘惑しているのか……。
毎年1月6日はカトリックの国イタリアでは盛大に祝う公現祭(エピファニア)の日。騎士や貴族、お祝いを持った東方3博士などをモチーフにした派手な仮装して、街中をパレードする習わしだ。その様子はさながらフェリーニ作品の大団円のような多幸感があり、練り歩きながら酒を飲み、ハグをして、「おめでとう!」と言い合う。
さらに楽隊員のなかにはアリーチェ・ロルヴァケル監督の前作『幸福なラザロ』の主演アドリアーノ・タルディオーロの姿も!本作にはこれまでのロルヴァケル作品の出演者がところどころにカメオ出演していて微笑ましい。
『夏をゆく人々』『幸福なラザロ』に続き、生まれ育ったトスカーナを舞台に映画製作を続けているロルヴァケル作品には、パゾリーニ、フェリーニからロッセリーニまで、豊かなイタリア映画史の遺伝子を見つけることができる。とりわけ、本作においてはロベルト・ロッセリーニ監督『イタリア旅行』(53)、フェデリコ・フェリーニ監督『フェリーニのローマ』(72)、ピエル・パオロ・パゾリーニ監督『アッカトーネ』(61)、マルチェロ・フォンダート監督『サンド・バギー ドカンと3発』(75)、そしてアニエス・ヴァルダ監督『冬の旅』(85)という5本の映画からインスピレーションを受けたと公言していて、随所にそのオマージュを発見するのも、映画ファンにとってはたまらないだろう。
『墓泥棒と失われた女神』
7月19日(金)Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下、シネスイッチ銀座ほか全国順次公開
配給:ビターズ・エンド
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