様々なハリウッドスターの台頭が目覚ましい今夏。今回は、多くの映画ファンを魅了する、若手からベテランまでの8人のスターを最新作とともにご紹介します! 今回は、第96回アカデミー賞にて『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』で助演女優賞を受賞したダヴァイン・ジョイ・ランドルフについて。(文・斉藤博昭/デジタル編集・スクリーン編集部)
カバー画像:Photo by Derek Reed/Contour by Getty Images
画像: Photo by Derek Reed/Contour by Getty Images
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ダヴァイン・ジョイ・ランドルフ プロフィール

1986年5月21日生まれ。イェール演劇学校を卒業し、クラシック声楽とオペラも学んだ女優兼歌手。2011年「ゴースト」のブロードウェイ公演でオダ・メイを演じトニー賞候補に。

映画は『余命90分の男』(2014)『ルディ・レイ・ムーア』(2019)『ザ・ユナイテッド・ステイツvs.ビリー・ホリデイ』(2021)『ザ・ロストシティ』(2022)『ラスティン:ワシントンの「あの日」を作った男』(2023)などに出演している。

ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』の演技でアカデミー賞助演女優賞はじめ50を越える映画賞を総なめにした。

メアリーの気持ちがその時どこにあるかを脚本に合わせてグラフ化したんです

昨年末のダヴァイン・ジョイ・ランドルフのオンライン会見は、彼女の自宅と繋いで行われた。途中で犬の鳴き声が聞こえてくると「ごめんなさい、玄関にデリバリーが来ると、うちの犬はいつも吠えちゃって」と困った顔を見せつつ、ひとつひとつの質問に丁寧に、そして誠実に答える姿勢は、オスカー受賞時の心のこもったスピーチとも重なるものだった。

「きっかけはアレクサンダー・ペイン監督からのアプローチでした。Zoomでとりとめもない雑談をするうちに、彼の人間への深い洞察力があると感じ、ぜひ一緒に仕事をしたくなったのです。私は舞台で俳優のキャリアを築いたので、演技とは本能と訓練の両方が重要だとわかっています。

今回のメアリー役での“訓練”としては、1970年代のボストンで黒人女性がどんな話し方をしていたのか、YouTubeで見つけて習得しました。また、私がタバコを吸わないと知ったアレクサンダーが、出演が決まった2日後にタバコを送ってきてくれたので、私はベティ・デイヴィスの映画を観ながら、タバコの持ち方を自分に取り入れようとしました。彼女の吸い方は本当にカッコいいんですよ!

メアリーは明らかに私と違って、悠然と構えているタイプ。誰かの話を聞くのも得意ですが、実生活での私は、あまり聞き上手ではありません。気心の知れた仲間といるとテンションが上がって、人の話をスルーすることも多くて(笑)。

さらにメアリーは男性メインの本作で貴重な女性キャラなので、観た人が愛着をもてることが大切です。悲しみの段階に点数をつけ、いまメアリーがどこにいるのかを脚本に合わせてグラフ化しました。その曲線をジェットコースターのアップダウンだと捉えれば、感情の流れに乗っていけるわけです。そのうえで監督とも相談しながら、各シーンのどの瞬間に演技のポイントを持っていくか、見極めていきました。

俳優の仕事はテニスと同じで、つまり相手のサーブを私がどこに返すかで、うまくラリーが続くかどうかが決まります。受けやすい場所にボールを返せば、相手の心も開かれ、次にどんなボールが来るのか構えられ、適切な空間が生まれるのです。

その意味で今回は共演者が最高でした。ポール(・ジアマッティ)は私がこれまで会った俳優の中で最も親切で、エゴのない人。そしてドミニク(・セッサ)は学習能力が高く、映画初出演というのが信じられませんでした。撮影の後も3人でプロモーションに参加する機会が多いのですが、その時間が本当に楽しくて、おたがい大好きな関係になれたことを実感しているんです」

ダヴァイン・ジョイ・ランドルフ出演作『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』

画像: ダヴァイン・ジョイ・ランドルフ出演作『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』

クリスマス休暇の学園内に残されたユニークで心寂しい3人

アカデミー賞脚色賞を受賞した『サイドウェイ』(2004)のアレクサンダー・ペイン監督と主演のポール・ジアマッティが再びコンビを組んで贈る笑いと感動の温かな人間ドラマ。先日のアカデミー賞でも作品賞、主演男優賞、脚本賞などにノミネートされ、助演女優賞(ダヴァイン・ジョイ・ランドルフ)を受賞した話題作。

1970年の全寮制の名門校を舞台に、嫌われ者の教師と反抗的な生徒、息子を戦争で失った料理長の3人が、クリスマス休暇で誰もいなくなった学校に残ることになる。雪に閉ざされた学内で孤独な3人の心は次第に寄り添いあっていくことに…。

他に本作が初めての映画出演という新人ドミニク・セッサらが共演。脚本をテレビ界出身で映画はこれが初というデヴィッド・ヘミングソン(全米脚本家組合賞オリジナル脚本賞受賞)、音楽を『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』(2013)のマーク・オートンが担当している。タイトルの「Holdovers」とは残留者の意味。

画像: クリスマス休暇の学園内に残されたユニークで心寂しい3人

あらすじ

画像: あらすじ

1970年。ボストン近郊のバートン校で古代史の教鞭をとる教師ハナム(ジアマッティ)は、校長からクリスマス休暇に学校に残ることになる4名の生徒の“子守役”に任命された。融通の利かないハナムは生徒からも同僚からも嫌われる存在だった。

そこに母親が再婚した夫と新婚旅行に行くため、突然学校に残ることになったアンガス(セッサ)が合流することに。だが居残り組生徒のうち裕福な一人の親がスキー旅行に全員を連れていくことになり、母親と連絡がつかなったアンガスだけがハナムと残される。

学内にはもう一人、息子をベトナム戦争で亡くした料理長のメアリー(ランドルフ)がいて、置いてけぼりになった3人だけのホリディ・シーズンが始まった。最初は分かり合えなかったハナムとアンガスは、メアリーの助けもあって、次第にお互いの知らなかった面に気づき、心を通わせるようにようになっていくが、彼らにはまだ誰にも言っていない秘密があった…。

クリスマスの学校内で心を寄せ合う3人

ポール・ハナム(ポール・ジアマッティ)

画像1: クリスマスの学校内で心を寄せ合う3人

バートン校の非常勤教師で、生真面目な性格ゆえ多くの生徒を落第にして校長からその“罰”として居残り生徒の子守役を命じられる。しかし彼のそうした行為にはある理由が?

メアリー・ラム(ダヴァイン・ジョイ・ランドルフ)

画像2: クリスマスの学校内で心を寄せ合う3人

ベトナム戦争で一人息子カーティスを亡くした学園の料理長。身寄りはボストンに住む妹だけ。息子と最後に過ごした学校で年を越そうとしているが、時に寂しさが爆発する。

アンガス・タリー(ドミニク・セッサ)

画像3: クリスマスの学校内で心を寄せ合う3人

休暇は母親とバカンスを楽しむ予定が、再婚した夫との旅行を優先した母の願いで居残り組になった生徒。優秀だが反抗的な態度も見せる。メアリーの家庭的な料理に喜ぶ面も。

注目ポイント1:監督がスタッフに見せた70年代の名作映画

画像: 演出中のペイン監督

演出中のペイン監督

アレクサンダー・ペイン監督は本作のインスピレーションを与えるために撮影監督、美術、衣装担当のスタッフたちや当時を知らないドミニク・セッサのためにボストンの映画館の厚意を得て、1970年代を中心にした名作映画を見せた。

それらのタイトルは『卒業』(1967)『真夜中の青春』(1970)『コールガール』(1971)『ハロルドとモード/少年は虹を渡る』(1971)『さらば冬のかもめ』(1973)『ペーパー・ムーン』(1973)『大統領の陰謀』(1976)といった作品で、これから自分たちが作る映画の雰囲気を理解してもらったと言う。

注目ポイント2:実際に学生だったドミニク・セッサ

画像: セッサとジアマッティ

セッサとジアマッティ

ドミニク・セッサは映画に出演した時、実際に寄宿学校の生徒だった。演技経験はマサチューセッツ州のディアフィールド・アカデミーで演劇の舞台に出演しただけ。

公募オーディションで見つけられた彼(2002年生まれ)は、映画の中でダイヤル式電話を使うシーンがあるが、この形式の電話は初めてで、ダイヤルの廻し方を知らなかったという。映画初体験の彼はペイン監督のことをとてもオープンマインドな人で仕事しやすかったと評している。

『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』
2024年6月21日(金)公開
アメリカ/2023/2時間13分/配給:ビターズ・エンド
監督:アレクサンダー・ペイン
出演:ポール・ジアマッティ、ダヴァイン・ジョイ・ランドルフ、ドミニク・セッサ

Seacia Pavao / © 2024 FOCUS FEATURES LLC.

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