美しいピアノの旋律が繋いだ、運命の出会い。その恋には切ない秘密があった──。台湾の同名ラブストーリーをリメイクした『言えない秘密』で、映画単独初主演を務めた京本大我。ミステリアスなヒロインに惹かれていく音大生を、自然な佇まいと繊細な心理表現で魅せている。長期に渡ってキャラクターと向き合い、自身にとって特別な作品になったという本作。確かな手応えと自信をのぞかせながら、撮影現場で感じていたことや、俳優としての仕事に対する思いを語ってくれた。(文・山村祥子/写真・野口貴司(sandorago)/デジタル編集・スクリーン編集部)
画像1: 京本大我、映画単独初主演『言えない秘密』インタビュー

京本大我 プロフィール

1994年12月3日生まれ。東京都出身。B型。ドラマ「私立バカレア高校」(2012)や「お兄ちゃん、ガチャ」(2015)などに出演後、2020年1月にSixTONESとしてデビュー。

近年の主な出演作品に『TANG タング』(2022)やドラマ「束の間の一花」(2022)、「ハマる男に蹴りたい女」(2023)、「お迎え渋谷くん」(2024)がある。

8月19日から上演開始のミュージカル「モーツァルト!」では古川雄大とW主演を務めるなど、幅広く活動している。

──同名の台湾映画をリメイクした『言えない秘密』で、映画単独初主演を務められました。オリジナルと、本作の脚本をご覧になった時の印象を教えてください。

オリジナルはとても斬新で、大ヒットしたことも納得の作品でした。同時に国によって描き方に違いもあるので、“日本らしく丁寧にリメイクしてみたいな”とも感じたんです。河合勇人監督から早い段階で脚本について意見を求められていたので、自分の考えをお伝えしたところ『原案と全く同じことをするのではなく、2024年らしいアプローチをしよう』と言ってくださったので、嬉しかったですね。最後にしっかりと余韻が残る、僕ららしい表現の脚本になったと思います。

──かなり早くから、出演のお話があったのでしょうか。

一昨年からドラマに出演させて頂く機会が増えているんですが、『言えない秘密』はそれよりも前にお話を頂いて、僕にとって久々の映像作品になる予定だったんです。先にドラマの撮影をしたので、クランクインの時は“満を持して”という感じでした。一つひとつのドラマに真剣に向き合った後に撮影を迎えられたので、自分にとって特別な作品になりました。

──今回、京本さんが演じられた湊人(みなと)は、トラウマを抱える音大生。ピアノという共通項をもつ女性・雪乃(古川琴音)に惹かれていきます。

湊人は不器用で、人に言えない悩みや思いを多く秘めている人です。留学から戻って、閉ざしていた心の扉を、ピアノを通じてこじ開けてくれたのが雪乃だったのだと思います。演技で気を付けていたのは、感情のグラデーションです。気持ちを表に出さなかった湊人が、雪乃と出会い、少しずつ心と血を通わせていくような変化を意識していましたね。

湊人は内に熱いものを秘めている一面もあるので、雪乃と出会ったことで沸々と情熱が蘇って、もう一度ピアノと向き合っていく。そういった温度感がしっかり伝わるように演じました。驚いた時や切ない時、一つひとつのシーンをどういう表情と塩梅で演じたらよいのか、監督にもお聞きしながら細かく調整していました。

──河合監督とのお仕事はいかがでしたか。

監督とはドラマ『お兄ちゃん、ガチャ』でもご一緒したので、すごく話しやすかったです。僕、お芝居で後悔したくないので、現場で監督に質問しまくるんですよ。それに対して毎回、的確な答えをくださったので、迷いなく臨めました。監督が悩んだ時は幾つかのパターンで撮影して選んでもらったり、相談しながら柔軟にやらせてもらいました。

──学生たちがピアノの巧さを競い合う“ピアノバトル”のシーンは、本作の見どころの一つになっています。ピアノの練習についても教えてください。

撮影の3か月前から練習を始めました。1曲でも大変なのに、課題曲が7曲くらいあったので、毎日時間を決めて練習していました。練習期間中にドラマ『霊験お初~震える岩~』の撮影で京都に滞在することになった時は、電子ピアノを買って持っていき、ホテルでも練習しましたね。撮影では最善を尽くしましたし、ピアノバトルのシーンは実際に僕が弾いている映像も使われています。

──雪乃と自転車をふたり乗りするシーンなど、自然な演技が印象的でした。

学校を抜け出して一緒に遊んでいるような感じでした(笑)。同じシーンでも、撮り直すたびにセリフが変わるほどアドリブが多かったんですが、監督も自然な雰囲気を意識されていたようで、OKしてくれていました。そうした空気の中でも、こっちゃん(古川琴音)とお芝居で向き合っている感覚は常にあったので、彼女から出てくるものに僕もリアクションする、という感じでしたね。

──古川琴音さんと共演された感想を教えてください。

映画の冒頭で湊人が感じたような“今日もまた会えるかな”という気持ちにさせてくれる、言葉にしがたい魅力がある方だと思います。雪乃の幻想的な雰囲気を見事にまとわれていて、キャラクターと深く向き合って役を仕上げているんだな、と思いましたし、僕自身も学びがたくさんありました。ご本人は大人しいかと思いきや、とても気さくで、僕のことも“きょもちゃん”って呼んでくれて。撮影の合間も色々なお話ができたので、お芝居しやすかったです。

画像2: 京本大我、映画単独初主演『言えない秘密』インタビュー

──現場の雰囲気はいかがでしたか。

スケジュールがタイトで、日帰りで地方に行って撮影することもあったので、過酷は過酷だったと思います。でも、同時にすごく優雅な時間でもあったんです。急かすのではなく、“時間はないけど、いい作品を作ろう”という空気が確かにあって。僕自身、映画の経験が多くはないので、丁寧に進めてくださってすごく安心感がありました。

──撮影の待ち時間に、生放送の深夜ラジオ番組「SixTONESのオールナイトニッポンサタデースペシャル」に出演していたメンバーに突然電話をかけて、ゲリラ出演されたことも話題になりました。

ちょうど撮影の中盤を超えた頃でしたね。番組では『現場が押してる』って多少ネタっぽく、辛辣に言いましたけど(笑)。あの日も深夜まで撮影して、少し仮眠して、翌早朝に迎えに来てもらったのかな。生放送中に予告なしで出演者に電話するなんて本当は許されないし、いい迷惑でしょうけど(笑)、メンバーと話せて少し息抜きになりました。

──メンバーの皆さんは、本作へのご出演についてどのような反応でしたか。

今回はSixTONESが主題歌の『ここに帰ってきて』を担当するということで、作品について色々聞いてくれましたね。あとは雪乃のお母さん役の西田尚美さんが(田中)樹、(松村)北斗とも共演したことがあるので『いま西田さんもいるよ』って話したり。メンバーが出演作の現場にキッチンカーを差し入れしたと聞いて、僕も手配しました!

──今後、挑戦してみたい役についても教えてください。

色々な役を演じるなかで、ドラマ『ラストマンー全盲の捜査官ー』のバスジャック犯の役は手応えがありました。見る人をゾワッとさせることに憧れがあるので『藁の楯』で藤原竜也さんが演じたサイコパスの殺人鬼のような、誰にも共感されない役を演じたいです。人間なら皆どこかしら持っている狂気を、意識して引き出してみたいですね。

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※価格は全て税込価格 その他はスタイリスト私物

『言えない秘密』

画像: 『言えない秘密』

留学先でのある出来事からトラウマを抱えている音大生・湊人と、美しいピアノの旋律を奏でる謎めいた女性、雪乃。大学の旧講義棟で出会ったふたりは、ピアノと何気ない会話を通じて心を通わせていく。雪乃の存在で、心の傷を少しずつ癒していく湊人。ところがある日突然、雪乃は湊人の前から姿を消してしまう──。

2007年に製作された台湾の同名映画をリメイク。『身代わり忠臣蔵』(2024)などの河合勇人が監督を務め、『法廷遊戯』(2023)の松田沙也が脚本を担当している。オリジナルでジェイ・チョウが演じた主人公を京本大我が、ヒロインを古川琴音が演じているほか、横田真悠、三浦獠太、坂口涼太郎、皆川猿時、西田尚美、尾美としのりが共演。主題歌はSixTONESの「ここに帰ってきて」。

樋口湊人 (京本大我)

イギリス留学から帰国した音大生。あるトラウマから、大好きだったピアノを辞めようとしている。カフェを営む父と二人暮らし。ミステリアスな雪乃と出会い、恋に落ちる。

『言えない秘密』
2024年6月28日(金)公開
日本/2024/1時間54分/配給:ギャガ
監督:河合勇人
脚本:松田沙也
出演:京本大我、古川琴音、横田真悠、三浦獠太、坂口涼太郎、皆川猿時、西田尚美、尾美としのり

©2024「言えない秘密」製作委員会

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