過去の真相と現在の当事者たちの本心が浮き上がってくるスリリングなドラマ
かつて世間を驚かせた36歳の人妻と13歳の少年の不倫騒動。当事者の女性は実刑となり獄中出産。出獄後、その少年と正式に結婚し、いまは普通の生活を送っていたが、この事件の映画化にあたり、彼女を演じることになった女優が、役作りのためにリサーチにやってくる……。
過去の真相と現在の当事者たちの本心が浮き上がってくるスリリングなドラマを『キャロル』（2015）のトッド・ヘインズ監督が描き出す。事件を起こした女性と彼女を演じることになった女優をジュリアン・ムーア、ナタリー・ポートマンの2大オスカー女優が初共演でぶつかり合うほか、『バッドボーイズ フォー・ライフ』（2020）のチャールズ・メルトンらが共演。
ナタリーはサミー・バーチの脚本（アカデミー賞脚本賞ノミネート）に心酔し、自らヘインズに脚本を送って、エリザベス役を演じるほかに本作の製作も務めているほどの熱の入れよう。ちなみにタイトルの「メイ・ディセンバー」とは、親子ほど年齢が離れたカップルという意味の慣用表現。
あらすじ
ジョージア州サバンナ。ここにかつて世間を騒がせた「メイ・ディセンバー事件」の当事者グレイシー（ムーア）とジョー（メルトン）の夫妻が子供たちと暮らしている。そこにやってきたのは事件の映画化で、グレイシーを演じることになった有名女優エリザベス（ポートマン）。
36歳当時ペットショップで働いていたグレイシーは、アルバイトの13歳の少年だったジョーと不倫関係になり、実刑となった。獄中出産を経て、出所後は結婚した2人だが、今は幸福に暮らしているように見える。グレイシーの周辺をリサーチを始めたエリザベスは、演技の手掛かりとなるヒントを探してグレイシーと行動を共にするうちに、時に“取材”の範囲を超えていく。
少年だったジョーは今は当時のグレイシーと同じ36歳になり、自分の過去と現在に向き合う時もあり、グレイシーも捨てきれない感情を表わすことも……。周囲の人物たちも巻き込んで、彼らの中に残された“歪み”はエリザベスにも影響を与えていく。
モデルとなったのは1996年に起きた実際の事件
本作の脚本にはモデルとなった事件がある。1996年当時教師だったメアリー・ケイト・ルトーノーは、家族がありながら当時13歳の少年ヴィリと関係を持ち、懲役7年の実刑判決を受けた。メアリーは妊娠しており、獄中出産で長女を生む。出所後2005年にヴィリと結婚した。この事件はケイト・ブランシェット主演の『あるスキャンダルの覚え書き』（2006）のモデルともなったことがある。
衝撃的な事件の当事者である女性と彼女を演じることになった女優
36歳の時に13歳の少年との情事が発覚し、実刑判決を受けた女性グレイシー。そんな彼女を演じることになった女優エリザベスは、役作りのためにいまは穏やかに暮らすグレイシーの元を訪ね、事件当時のことを深く理解しようとするが……。グレイシーをジュリアン・ムーア、エリザベスをナタリー・ポートマンが演じ、共に難役を見事に熱演している。
登場人物
グレイシー（ジュリアン・ムーア）
かつて13歳の未成年の少年ジョーと不倫関係を持ち、獄中で彼との子供を出産したことで世間を騒がせた女性。現在はジョーと家庭を持つ。
エリザベス（ナタリー・ポートマン）
グレイシーの起こした騒動を映画化するにあたり、彼女の役を演じることになった人気女優。役作りのためグレイシー一家にコンタクトする。
ジョー（チャールズ・メルトン）
13歳の時にアルバイト先で人妻のグレイシーと関係を持ち大騒動の渦中に。現在は36歳となりグレイシーと平穏な家庭を築いている。
『メイ・ディセンバー ゆれる真実』
2024年7月12日（金）公開
アメリカ／2023／1時間57分／配給：ハピネットファントム・スタジオ
監督：トッド・ヘインズ
出演：ナタリー・ポートマン、ジュリアン・ムーア、チャールズ・メルトン
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