東京・新宿武蔵野館ほかで2024年7月19日(金)より公開の新作ホラー『怨泊ONPAKU』に主演した香港スターのジョシー・ホーが、日本の民泊をモチーフにした本作についてインタビューに応えてくれた。

この世で一番怖いのは幽霊ではなく人間なのです

香港、マカオの伝説的富豪スタンレー・ホーを父に持ち、俳優、歌手として活躍。香港映画『エグザイル/絆』をへて『コンテイジョン』『オープングレイヴ 感染』でハリウッドにも進出、日本では三池崇史監督の『DEAD OR ALIVE FINAL』のヒロイン役で知られるジョシー・ホー。親日派でもある彼女に、日本が舞台のオカルトホラー『怨泊ONPAKU』に主演した際の裏話などを聞いてみた。(文/望月美寿)

画像: 『怨泊ONPAKU』

『怨泊ONPAKU』

撮影で使った民泊はすごく古くて怖かったです

――『怨泊ONPAKU』はジョシーさんが自ら設立されたプロダクションの製作です。なぜ日本を舞台に、日本のスタッフ、キャストと手を組んで映画を作ろうと思ったのでしょう。
「私はずっと日本の制作チームと映画を撮りたいと思っていました。日本映画には独特の文化があります。そこに違う国の文化を融合させたら、きっと意外な効果が生み出されるだろう、と常々考えていました。そして映画というものには、その意外な効果が必要なのです」

――『怨泊ONPAKU』が作られた経緯を教えてください。
「藤井秀剛監督はかなり前からこの映画の構想をお持ちでした。私は日本の知り合いに紹介されて監督と出会い、あらすじを読ませていただいてすぐ、この作品の内なるダークワールドに魅了されました。私は監督と電話でお話し、自分の意見を伝え、『1週間後に日本に行くので詳しい話をしましょう』と約束しました。ところが監督は私が日本に着く前、数日の間に脚本の手直しを終えられていたのです。映画の醸し出すスタイルについて、私と監督はすぐに考えを共有することができました」

――藤井監督との話で特に印象的だったことは?
「監督とは家庭についてよく話しました。私と彼は同じような複雑な家庭で育ったのです。お互いにそのことを理解し、映画の中で、深くて歪んだ家庭関係を描こうと意見が一致しました」

画像: 藤井秀剛監督

藤井秀剛監督

――三池崇史監督の作品やハリウッド映画など、世界で活躍されてきたジョシーさんから見た日本映画の魅力とは?
「日本の映画にはつねに、ある種の冷静さと抑圧されたスタイルがあると思います。多くの部分をぼやかして、あとは観客に考えてもらうという手法です。『怨泊ONPAKU』にもその特徴があります。どうぞ皆さん『怨泊ONPAKU』を見るときは、それぞれの登場人物の関係に注意してみてください。劇中の人物関係を理解すればするほど、恐怖がより深く感じられます」

――日本での撮影はいかがでしたか?
「日本で撮影するとき、私はいつも日本の制作チームの真面目さと慎重さに感動します」

――現場でのエピソードを教えてください。
「私は幽霊や神に対して畏敬の念を抱いています。だから中国人はお線香をあげると言う伝統を撮影現場に持ち込むのです。撮影前には撮影チームとお線香を焚いて無事を祈りました。特にこの作品はほとんどが深夜の撮影でしたから、私は毎日戦々恐々としていました」

――物語の舞台となった民泊の建物は実在するそうですが、実際に行ってみてどんな感じでしたか?
「撮影で使った民泊はすごく古くて怖かったです。撮影中に停電したことがあって、私はすぐにお線香を焚いて拝みました。不思議なことに少ししたら電気が戻りました。信じないわけにいかないものが確かにあるのだと感じました」

――ヒロインのサラを演じる上で大変だったことは?
「サラというキャラクターは受け身の性格で、実際の私とは正反対です。でも私は逆にこの役に満足できました。芝居の満足感とは、自分とは全く違う役を演じることにあります」

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――刑事役の高橋和也さんはアイドル出身でたくさんのファンがいます。今回共演された感想は?
「高橋和也さんとは残念ながらあまりお芝居での絡みがなかったです。ただいつも現場でお会いすると、しっかりと準備をされていて、セリフも全部入った状態でした。本当のプロフェッショナルだと思いました」

――民泊の大家役の白川和子さんは知る人ぞ知るベテラン女優ですが、撮影中のエピソードはありますか?
「白川和子さんとは絡み芝居が多かったです。白川さんは現場でいつもどの俳優さんにも親切でした。一緒にお芝居するときは本当に真面目で、相手のセリフまで覚えていてくださっているので、撮影がとてもスムーズでした」

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三池崇史監督の『オーディション』『殺し屋1』が好き

――現在、日本でも世界でも民泊が注目されています。インバウンドという言葉も日本で一般的になりました。
「民泊は今世界中で流行っていますよね。中でも日本の古い民泊には独特の雰囲気があります。私はまだ泊まったことはありませんが、いつか試したいと思っています」

――『怨泊ONPAKU』が香港で公開されたときの反響はいかがでしたか?
「香港で上映されたときには大きな反響を呼びました。実は用意したポスターがあまりに怖くて、審査を受けたところ公の場には貼らないようにと言われてしまい、仕方なく他のポスターを使いました。今回、日本では問題がなかったので、オリジナルのポスターデザインを使用することができました。日本の街でぜひ、この“怖すぎる”ポスターを見かけたいと思っています」

――香港、台湾でも多くのホラー映画が作られていますが、それらと比較して『怨泊ONPAKU』が作られたことの意味とは?
「藤井監督は女性のダークな部分を描くことが得意です。そして『怨泊ONPAKU』が他のホラー映画と違う点は、その暗い面をさらに家庭にまで伸ばして描いているところです。私は香港公開時に付けた映画の宣伝フレーズが好きです。『どの家庭も邪教だ、結局誰かが犠牲になる』。これは本作のテーマです。『あなたが一番愛している家族があなたを裏切る』、これこそが人間の恐怖なのです。この世で一番怖いのは幽霊ではなく人間なのです。あの出口のない暗黒こそが、この映画の世界です」

――ジョシーさんご自身はホラー映画は得意ですか?
「ホラー映画は『好きだけど怖い!』ですね。見るのは好きですが、一方で私は小心者なので、見るときはいつもすごく怖くて、両足を縮めながら見ています。怖いけど見たい!という心理ですね(笑)。私は日本のスリラーが大好きで、三池崇史監督の『オーディション』と『殺し屋1』が特に好きです」

――『怨泊ONPAKU』のエンドクレジットには主演された『ドリーム・ホーム』(10年)でも使われていたご自分の楽曲が使用されていましたが、なぜ再びこの曲を使用されたのでしょうか?
「私は『ドリーム・ホーム』の主題歌『Watch you Going Down』が好きなんです。あるとき藤井監督にこの歌をお聞かせしたところ気に入ってくれて、エンディングに使わせて欲しいと言われたので、喜んで提供させてもらいました」

――最後に日本のファンの皆さんにメッセージを。
「私はしばらく日本に行っていませんでした。いつも日本に行くと日本のファンの皆さんの情熱に深く感動させられます。あなたたちに会いたい!今回、本作のプロモーションで皆さんにお会いできることになりました。楽しみにしています」

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『怨泊ONPAKU』
2024年7月19日(金)より新宿武蔵野館、池袋シネマ・ロサほか全国順次公開
/配給:フリーマン・オフィス
©︎852 Films Limited. All Rights Reserved.

香港から日本に来て不気味な民泊を利用した女性が、想像を絶する恐怖に飲み込まれていくオカルトホラー。2024年7月19日(金)より新宿武蔵野館、池袋シネマ・ロサほか全国順次公開

香港で不動産関係の会社のCEOを務めるサラは、東京で不動産開発用の土地を購入する計画を立てていた。だが予約したホテルはアメリカ大統領の突然の東京訪問のために宿泊できなくなり、老婦人が営む民泊を利用することに。古びた民家の一室で不安な夜を過ごすサラは、やがて部屋の中で女を痛めつける男の不気味な光景を目にし、その部屋の床下から朽ちた遺体が発見される。捜査を担当する刑事は、この家が住民失踪の連続猟奇事件に関わっていることを突き止める。そしてサラとこの家にはある因縁があった…

『怨泊ONPAKU』舞台挨拶決定
2024年7月20日(土)
新宿武蔵野館 10:00の回上映後 12:30の回上映前
池袋シネマ・ロサ 14:15の回上映後
【登壇者】コンロイ・チャン(プロデューサー)/ジョシー・ホー/高橋和也/白川和子/藤井秀剛監督
※登壇者は予定につき、予告なく変更となる場合がございます。予めご了承ください。

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