「私の仕事は皆がうまく演技をできるようにすること」
――今、南インド映画が世界中で人気を集めています。監督はその理由についてどのようにお考えですか。
今のところ、インド映画はほかのどの国の映画よりも感情表現が豊かだと思います。ですが、私たちはそれを70年代や80年代のヒンディー語映画から学んだのです。私たちはそこから学び、このような映画を作り続けてきました。私たちが他の誰よりも情熱的だとは言いません。映画作りに関わる人は皆情熱を持っているとは思いますが、私たちには、感情を背景にした大胆なものを見せよう!という信念があります。
――南インドの映画の特徴はどういったところにあるでしょうか。
映画のスタイルです。80年代にはヒンディー語映画が私たちにとって最も魅力的な映画で、映画の中ではヒンディー語がつかわれていました。しかし、その後、私たちはそれに似たような映画を南でも作り始めました。子供のころは、物語そのものよりもスターに夢中でした。ラジニカーントなどのスターです。
――多くの民族、宗教があるインドでの映画作り。苦労される点はありますか。
もちろん宗教は皆に関係してくることです。しかし、私たちは政治や宗教に煩わされることなく、可能な限り普遍的なものを作ろうとしています。コミュニティを特定したり、宗教を特定したりすることはしません。
皆に平等であるためです。宗教や政治を話に盛り込むと、多くの人に影響がありますから。ですから、私たちは物語を作るうえで慎重を期しています。同時に、映画を作る際には政治的環境はあまり気にしないようにしています。
――“ラモージ”のような巨大な映画スタジオがあることは映画作りに役立っていますか?
もちろんです!私たちが作ろうとしているのは、巨大スタジオが必要なアクション映画です。というのも、新人で映画を撮り始めたころは、道路で撮影するのは簡単です。しかし、熱烈なファンをもつ大スターを起用するようになれば、一般の道で撮影することはできなくなります。
撮影シーンの95%はスタジオ内にセットを組まなければなりません。一般の人々の往来がある街中ではなく、セットがあれば撮影は楽になります。そして、スタジオのインフラは常に私たちにとって便利で、監督としてより良い仕事をさせてくれるのです。
――監督が映画を作るときに最も大切にしていることは何でしょうか。
映画で大事な事は、演技ですね。主要な登場人物だけでなく、出演俳優全員の演技が重要です。俳優たちは皆プロですが、画面の後ろの方にいる人は、初めてセットに入る人たちかもしれない。エキストラたちも…ハリウッドでは“エキストラ”と言いますが、私たちは“ジュニア”と呼んでいます。私の仕事は皆がうまく演技をできるようにすることです。
しかし、それ以前に、技術者たちがいます。カメラマン、アートディレクターなどプロとして、彼らは自分の仕事を既にやっているはずなので、プロの仕事はプロに任せています。なので、私の仕事は、役者全員の演技と、そのキャラクターが映画全体を通して一貫しているのを確認することです。
――貴重なお話をありがとうございました。最後に日本のファンへメッセージをお願いします。
まずは、私たちの映画を日本で公開してくださることに感謝いたします。そして、私たちは日本のファンから送られる称賛を非常にうれしく思っています。そして、多くの観客の皆様がこの作品を気に入ってくれることを願っています。本作はまだ物語の前編です。早く2作目の制作に入り、皆さんにお届けできることを願っています。本当にありがとうございます。
『SALAAR/サラール』全国公開中
監督・脚本:プラシャーント・ニール(「K.G.F」シリーズ)
出演:プラバース(「バーフバリ」シリーズ)、プリトヴィラージ・スクマーラン(『セルロイド』)、シュルティ・ハーサン(『ザ・フェイス』)、ジャガパティ・バーブ(『ランガスタラム』)
2023年/インド/テルグ語/シネスコ/5.1ch/174分/字幕翻訳:藤井美佳/字幕監修:山田桂子/
提供:ツイン、Hulu/配給:ツイン PG12
公式HP:salaar-movie.com