観客に偶像化されないような演じ方を心掛けた
──「粛軍クーデター」におけるチョン・ドゥファン(全斗煥)元大統領をモデルにしたチョン・ドゥグァンという人物を演じられましたが、出演オファーをされたときのお気持ちと脚本を読んだ感想をお聞かせください。
この映画の脚本を最初に読んだとき、「映画としてこの内容で本当に大丈夫なのだろうか? 韓国の近代史に汚点を残すような事件なのに、果たして観客に受け入れてもらえるだろうか?」などと考え、葛藤がありました。
──チョン・ドゥグァンの役作りはどのようにされましたか。
チョン・ドゥグァンという人物が集団を統率する立場にあるので、観客に偶像化されないような演じ方を心掛けていました。
多数の役者が軍人として登場しているので、役柄を区別するのは難しいかもしれませんが、監督がそれぞれのキャラクターを立体的に表現し、メリハリのある作品に仕上げてくださったと思います。
──高潔な軍人として知られる首都警備司令官イ・テシンを演じたチョン・ウソンさんとは『アシュラ』(2017)でも共演されています。ファン・ジョンミンさんからご覧になって、チョン・ウソンさんのここが素晴らしかったと思うところを教えてください。
とにかく格好いいです! それにチョン・ウソンさんは非常に思いやりがある方で、以前『アシュラ』でご一緒したときも、撮影現場の雰囲気がとてもよかったんです。
当時チョン・ウソンさんと「『アシュラ』が終わったら、ぜひまた一緒にやりましょう」と話していたので、この作品で再会することができて、とても嬉しかったですね。
──完成した作品をご覧になっていかがでしたか。
この映画の題材となった事件の壮大なストーリーをたった2時間という短時間にまとめ上げたのを見て、「監督はさすがだな」と感心してしまいました。もともと脚本の構成がしっかりしていたので、完成した作品を観て特に驚いたりすることはありませんでした。
──日本の観客に向けてひとことお願いします。
1979年12月12日に韓国で起きた軍事反乱を「チョン・ドゥグァン」と「イ・テシン」の2人の対立を軸に、緊迫感たっぷりに描いた映画です。本作を通じて、近くて遠い国である韓国のダイナミックな現代史を知っていくのは興味深い経験になることと思います。
また、映画的な面白さをふんだんに盛り込みました。演技力の高い俳優たちの熱演もこの映画の見どころです。楽しみながらご覧ください。
<PROFILE>
ファン・ジョンミン
1970年9月1日生まれ。『ユア・マイ・サンシャイン』のピュアな男、『新しき世界』の人情派ヤクザ、『国際市場で逢いましょう』の父親、『ベテラン』の熱血刑事、『哭声/コクソン』の祈祷師、『ただ悪より救いたまえ』の凶暴な殺し屋などジャンル・役柄を問わず、リアリティを超えた存在感で善と悪を表現し続けている。
『ソウルの春』8月23日(金)新宿バルト9 ほか全国公開
<STORY>
1979年10月26日、独裁者とも言われた大韓民国大統領が、自らの側近に暗殺された。国中に衝撃が走るとともに、民主化を期待する国民の声は日に日に高まってゆく。しかし、暗殺事件の合同捜査本部長に就任したチョン・ドゥグァン保安司令官(ファン・ジョンミン)は、陸軍内の秘密組織“ハナ会”の将校たちを率い、新たな独裁者として君臨すべく、同年12月12日にクーデターを決行する。一方、高潔な軍人として知られる首都警備司令官イ・テシン(チョン・ウソン)は、部下の中にハナ会のメンバーが潜む圧倒的不利な状況の中、自らの軍人としての信念に基づき“反逆者”チョン・ドゥグァンの暴走を食い止めるべく立ち上がる。
<STAFF&CAST>
監督:キム・ソンス
脚本:ホン・ウォンチャン、イ・ヨンジュン、キム・ソンス
出演: ファン・ジョンミン、チョン・ウソン、イ・ソンミン、パク・ヘジュン、キム・ソンギュン、チョン・マンシク、チョン・ヘイン、イ・ジュニョク
配給:クロックワークス
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