(インタビュー、作品解説・斉藤博昭/デジタル編集・スクリーン編集部)
── ケイシーが脚本に参加し、マットがキャスティングされるという流れで本作がスタートしたのですね。
ケイシー「はい。僕はつねにマットのような友人をプロジェクトに巻き込むことを考えてる。もちろん脚本に書かれた役と俳優がぴったりマッチすることが重要だけれと、今回はマットの参加によって、(彼が演じた)ローリーのキャラクターはもちろん、作品自体が面白い方向に変わったと思うな」
マット「僕はケイシーの脚本家としての才能を信頼していた。彼の兄貴(ベン)と一緒に、つねにケイシーが書いたものを読み、楽しんできたからね。今回も初めて脚本を読んだ瞬間から、登場人物の会話に引き込まれた。監督のダグ・リーマンが加わって、終盤の展開がさらに洗練されたんじゃないかな」
── あなたたちは2002年の『GERRY ジェリー』で共演し、共同脚本にもクレジットされていました。この22年で、おたがいの関係に変化はありましたか?
ケイシー「この20年くらいで、マットは“史上最高”ともいえる何人もの監督と仕事をして、その経験や知識を生かして進化したと感じる。でも(マットに向かって)僕らの関係性はあまり変わってないよね? こうして一緒に仕事をしながら、もちろん意見が対立することもあるけれど、マットの態度にエゴを感じたことはない。自分中心ではなく作品を最高にするために意見を言ってくるんだ。そんな彼と一緒に仕事をするのが好きだよ」
マット「エゴという概念は、創作の大いなる敵だからね。僕とケイシーの付き合いは、かれこれ43年になる。現在に至るまで、僕も彼のエゴで嫌な気分になった記憶がない。根底では愛と尊敬で結ばれている(笑)。だから自分のアイデアをはっきり主張し、意見を闘わせられるんだ」
── 今回のように、何かに追い詰められて犯罪に加わる役どころでは、どのような演技のアプローチをするのですか?
マット「役が置かれている状況に対し、とにかく正直になることかな。ローリーは、人生でちょっとした極限状態に追い込まれるけれど、今の時代、多くの人が不安定な状況を経験しているから共感してもらえると思う。共感を誘うと言っても、犯罪を推奨するわけじゃないけどね(笑)。この映画はコメディ要素も強いから、そこを楽しんでもらえればいいな」
ケイシー「そうだね。マットが演じたローリーは、たしかに大金を得ることに奔走するわけだけど、本来の目的は父親としての人生を取り戻すこと。そこをポイントにしてキャラクターを体現することが重要なんだ。映画の中で、強盗劇やカーチェイスなど次々とんでもないことが起こる。ユーモラスな瞬間も用意される。それらすべてが僕らの演技を導く“光”になった気もする」
── 目指した映画が完成したという実感はありますか?
ケイシー「このようなバディムービーは、共通するユーモアのセンスがある相手ではないと、うまくいかないと思う。そこは今回、クリアできたという自信がある。僕らが目指したのは、繰り返し観たくなるエンタテインメントなので、とにかく1回観てもらって、その思いが伝わればいいな」
マット「ダグ・リーマン監督の“トーン”を感じてもらえるんじゃない? 僕がダグと組んだ『ボーン・アイデンティー』でもそうだったけど、彼は細胞レベルで、決まりきった表現を拒否する(笑)。初期の『go』から、『Mr.&Mrs.スミス』、『オール・ユー・ニード・イズ・キル』あたりの流れで本作を観れば、ダグの作り出す世界に没入できると思うよ」
Apple Original Films『インスティゲイターズ 強盗ふたりとセラピスト』(配信中)
ボストン市長が不正に溜め込んだ資金。それを狙う犯罪計画に、家族の問題で悩むローリーと前科者のコビーが加わる。しかし想定外の事態が重なり、彼らは警察だけでなく、犯罪組織の手先にも追われることに……。監督は、犯罪アクションを得意とするダグ・リーマンで、要所のカーチェイスや銃撃でノンストップの勢い。コビー役のケイシー・アフレックが共同脚本を務め、ローリー役マット・デイモンは、ベン・アフレックとともに製作で関わった。
監督:ダグ・リーマン 出演:マット・デイモン、ケイシー・アフレック、ホン・チャウ、マイケル・スタールバーグ、ポール・ウォルター・ハウザー、ヴィング・レイムス