彼のキャリアを語るうえで、欠かすことのできないアクション映画。そこで今回は、「マトリックス」シリーズ、「ジョン・ウィック」シリーズなどの大ヒットシリーズを生み、新鮮なアクションを魅せてはファンを喜ばせてきたキアヌのアクション映画ヒストリーを振りかえってみましょう!
(文・相馬学/デジタル編集・スクリーン編集部)
カバー画像:『ジョン・ウィック』より Motion Picture Artwork ©2015 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved. © David Lee

初めて挑戦し転機となったアクション映画『ハートブルー』

画像: 『ハートブルー』Photo by GettyImages

『ハートブルー』Photo by GettyImages

 キアヌ・リーヴスをアクションスターとして認識するか否かはファンの間では論議を呼ぶところだが、彼のキャリアを振り返るとアクション映画が転機となっているのは疑いの余地がない。そもそも彼はハイスクール時代、アイスホッケーの選手として活躍したことがあるアスリートで、運動神経に優れている。本稿では、そんなキアヌとアクションのヒストリーをたどってみよう。

 まず注目したいのは、キャリア初期に主演した『ハートブルー』(91)。後に『ハートロッカー』(09)でアカデミー賞を受賞するキャスリーン・ビグロー監督の硬派な演出の下、キアヌはFBI潜入捜査官にふんし、エクストリームスポーツに挑戦。それまで出演してきた青春映画のイメージとは180度異なる、タフな大人の魅力を武器にアクションの分野に切り込んだ。

 このイメージは『スピード』(94)にも生かされ、若きSWAT隊員にふんした彼は爆弾を仕かけられたまま暴走するバスの車内での奮闘を体現し、短髪姿も精悍に頼れるキャラクターになりきった。本作は世界的なヒットを飛ばし、日本でのキアヌの人気も急上昇。当時は無名だったヒロイン、サンドラ・ブロックとともにスターダムに上り詰める。本作で初めて彼を知った日本のファンも少なくないだろう。

画像: 『スピード』ディズニープラスのスターで配信中 ©2024 20th Century Studios. All Rights Reserved.

『スピード』ディズニープラスのスターで配信中 ©2024 20th Century Studios. All Rights Reserved.

 その後、北野武と共演したサイバーパンクストーリー『JM』(95)や、サスペンス風の『チェーン・リアクション』(96)とアクション寄りの作品に立て続けに主演。前者は記憶の運び屋というSF的なキャラクターにふんし、ハードワボイルドな魅力を発揮。後者で演じたのは、少々肥満気味の科学者役だが、一般人のようにも見えるそのキャラの危うさはアクションのスリルを加速させるうえで効果を発揮していた。これらは『スピード』と似たようなキャラクターを演じたくないというキアヌのこだわりの表われとも言えるだろう。

画像: 『JM』Photo by GettyImages

『JM』Photo by GettyImages

画像: 『チェーン・リアクション』Photo by GettyImages

『チェーン・リアクション』Photo by GettyImages

新世代のアクションヒーロー像を体現した『マトリックス』

画像: 『マトリックス リローデッド』U–NEXTで配信中 © 2003 Village Roadshow Films (BVI) Limited. © 2003 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

『マトリックス リローデッド』U–NEXTで配信中 © 2003 Village Roadshow Films (BVI) Limited. © 2003 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

 つねに新しい役に挑むキアヌのこだわりは『マトリックス』(99)で大きな実を結ぶ。人類を支配するマシンに逆らい、サイバーワールドでバトルを繰り広げる主人公ネオの活躍は世界中に大きなインパクトをあたえた。黒いレザーとサングラスのクールなルックに、カンフーとVFXが融合した超人的なアクションが一体化。ウォシャウスキー兄弟(当時)のこだわりの映像世界の中で、キアヌは新世代のアクションヒーロー像を魅力的に体現してみせた。

 日本では『スピード』以上の興行収入を記録。続編『マトリックス リローデッド』(03)はさらに上の110億円もの興行収入を計上し、キアヌ主演作では最大のヒット作となる。第3弾『マトリックス レボリューション』(03)で、トリロジーは完結。18年後に『マトリックス レザレクションズ』(21)が作られたのは記憶に新しい。

「マトリックス」三部作に続いてキアヌが挑んだのは、DCコミック原作の『コンスタンティン』(05)。霊能者であり、悪魔祓いの専門家でもある男ジョン・コンスタンティンにふんした彼は、現実世界と魔界を股にかけた死闘を体現。末期の肺がんを患いながらもタバコを止めない、どこかやさぐれたヒーロー像をキアヌはいたく気に入ったようで、続編への出演も切望している。監督のフランシス・ローレンスとは現在もしばしば、その可能性について話し合っているようで、実現が待たれるところ。

画像: 『コンスタンティン』Photo by GettyImages

『コンスタンティン』Photo by GettyImages

スピーディな立ち回りを魅せた「ジョン・ウィック」シリーズ

 2013年、キアヌは2本のアジアンテイストの強い2本の作品に関わる。ひとつは『47 RONIN』で、日本ではおなじみの“忠臣蔵”を伝奇ファンタジーとして解釈した異色作。主君を処刑された四十七士の最後のひとりとなる外国人にふんしたキアヌは、剣げきにも挑戦した。もうひとつの『ファイティング・タイガー』は、現時点でのキアヌの唯一の監督作。『マトリックス』でともに仕事をしたスタントマン、タイガー・チェンを主演に起用したカンフーアクションで、キアヌは珍しくヴィランを演じている。

『マトリックス』では、もうひとり、キアヌにとって重要な出会いがあった。それは同作で彼のスタントダブルを務めたチャド・スタエルスキ。彼の監督デビュー作『ジョン・ウィック』(14)は、キアヌのアクションヒーローとしての歩みの中で、現在進行の重要作となっているのは言うまでもない。孤高の殺し屋にふんしたキアヌは、銃撃とカンフーが一体となった“ガン=フー”と呼ばれるスピーディな立ち回りをビシッとキメて、凄みを見せつける。『ジョン・ウィック:チャプター2』(17)、『ジョン・ウィック:パラベラム』(19)と続編が作られ、『ジョン・ウィック:コンセクエンス』(23)でひと息ついたが、すでに撮影を終えたスピンオフ作品『バレリーナ』では5度、ジョン・ウィックを演じているとのこと。

 他にも今後のキアヌは、自身が原作者のひとりに名を連ねるコミックの映画化『BRZRKR(原題)』で主演を務め、不死身の戦士を演じるプランがある。60歳を間近にしてなおアクションに精力的な彼の今後にも注目していきたい。

画像: 『ジョン・ウィック:チャプター2』TM&©2017 Summit Entertainment,LLC. All Rights Reserved.

『ジョン・ウィック:チャプター2』TM&©2017 Summit Entertainment,LLC. All Rights Reserved.

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SCREEN読者が好きなキアヌ・リーヴス映画は?

1位:「ジョン・ウィック」シリーズ
2位:「マトリックス」シリーズ
3位:『スピード』
4位:『コンスタンティン』
5位:「ビルとテッド」シリーズ

 SCREEN8月号の読者アンケートにて募集したアンケート結果を発表! 1位は、キアヌのアクションの集大成という読者の声も多かった「ジョン・ウィック」シリーズ。続いて2位は、革新的な映像技術とストーリーで社会現象を巻き起こした「マトリックス」シリーズ。キアヌの代表作でもある2つのシリーズに続いて3位となった『スピード』は、ストーリーのシンプルさもまた魅力となっており、初めてみた彼の作品であまりのかっこよさに驚いたとの声も。4位は、ファン念願の続編も始動していると噂の『コンスタンティン』。5位には、キャリア初期に出演した「ビルとテッド」シリーズもランクイン! 上位を独占した作品のほとんどが、アクション映画となったが、常に映画製作に情熱を注ぐ彼の“努力と愛”が目に見える結果となった。
(文・SCREEN編集部)

画像: (左)『ジョン・ウィック』 4KUHD・ブルーレイ・DVD発売中/デジタル配信中 4KUHD:¥7,480( 税込)ブルーレイ:¥2,750( 税込)DVD:¥1,980( 税込) 発売元・販売元:ポニーキャニオン Motion Picture Artwork ©2015 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved. © David Lee (右)『ジョン・ウィック:チャプター2』 4KUHD・ブルーレイ・DVD発売中/デジタル配信中 4KUHD:¥8,580( 税込)ブルーレイ:¥2,750( 税込)DVD:¥1,980( 税込) 発売元・販売元:ポニーキャニオン TM&©2017 Summit Entertainment,LLC. All Rights Reserved.

(左)『ジョン・ウィック』
4KUHD・ブルーレイ・DVD発売中/デジタル配信中
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(右)『ジョン・ウィック:チャプター2』
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