登場人物
崩壊しかけたアメリカの終焉を最前線で目撃する者たち
リー(キルステン・ダンスト)
数々の体験を経て一流のカメラマンとして同業のジャーナリストたちからリスペクトされる存在となったリー。だが内戦の状況を取材していくうちに彼女の強い精神が徐々に蝕まれていく…。演じるのは『パワー・オブ・ザ・ドッグ』などの実力派キルステン。
ジョエル(ワグネル・モウラ)
リーと長年コンビを組むジャーナリストで、常軌を逸した内戦を取材しながら、独特のユーモアでリーの空洞化していく心を埋めるジョエル。しかしある残酷な民兵に出会った時、彼の魅力も奪われてしまう…。『グレイマン』などに出演のモウラが演じている。
ジェシー(ケイリー・スピーニー)
リーたち、ベテランのジャーナリストに同行することになる若手カメラマンのジェシー。取材の旅を通じて先輩たちを感心させるほど成長していく彼女を演じるのは、『プリシラ』『エイリアン:ロムルス』と話題作への主演が続いているハリウッドのホープ、ケイリー。
サミー(スティーヴン・マッキンリー・ヘンダーソン)
リーの恩師的なベテラン・ジャーナリストで、足が悪いことから彼女たちの車に同乗し、戦火のワシントンDCを目指すサミー。愛すべき年長者の彼を演じるのは、『DUNE/デューン 砂の惑星』『フェンス』など最近売れっ子バイプレイヤーになってきたヘンダーソン。
大統領(ニック・オファーマン)
独善的な政策で、アメリカを二分化する事態に追いやった張本人である合衆国大統領。14か月も取材を受けていないため、リーたちがスクープを狙う。演じるのはガーランド監督の「DEVS/デヴス」でもケイリーやヘンダーソンと共演していたオファーマン。
赤いサングラスの民兵(ジェシー・プレモンス)
「お前は、どんな種類のアメリカ人だ?」という本作でも最も衝撃的な台詞を発する冷酷な兵士。分断化の象徴の一つ“人種差別”を具現化するこの人物を、特別出演のプレモンスが演じる。彼はリー役のキルステンの夫で『憐れみの3章』などで活躍中の注目俳優だ。
CHECK POINT
これは世界が直面する危機
アレックス・ガーランド監督は、アメリカの内戦の物語を遠く離れたロンドンで構想を考えていた。脚本を書き始めたのは2020年のパンデミック下。それまで人類が考えてもいなかったことが現実になったころ、何年も彼の中で蓄積されていたものが噴出してきたという。「私は怒りと不安が入り混じった状態で脚本を書き、書きながら感じたフラストレーションは収まるどころか次第に大きくなっていきました」と語る監督は、これはアメリカだけの話でなく、世界的な問題だとも主張する。「現代の内戦とは全てが崩壊して粉々に分裂することです。世界が直面しているのは明確な境界線で起きる分裂ではないのです」
リアリティと非リアリティの衝突
本作の軍事アドバイザーとして雇われたレイ・メンドゥーサは元ネイビー・シールズで、兵士たちをエキストラで演じたのも彼の同僚たち。退役した軍人たちを大量に投入し、台詞や雰囲気、銃撃戦に至るまで正確さを求めた。一方で戦争と日常生活の衝突による奇妙さを表現したのは美術担当のキャティ・マクシー。駐車場に不時着したヘリコプターの残骸や、放棄されたアメフトのスタジアム、一見平穏な街に垣間見える非日常的光景など、彼女は自然主義的な物理的デザインの感覚をあちこちで披露している。リアリティと非リアリティのぶつかり合いが本作のオリジナリティを醸し出している。
監督&脚本:アレックス・ガーランド
A24製作の『エクス・マキナ』で監督デビュー。アカデミー賞オリジナル脚本賞などにノミネートされたガーランドは、1970年英国ロンドン生まれ。キャリアのスタートは小説家でレオナルド・ディカプリオ主演、ダニー・ボイル監督の『ザ・ビーチ』の原作者は彼だ。その後脚本家になり、ボイル監督の『28日後…』でデビューした。監督・脚本作品に配信作品『アナイアレイション-全滅領域-』、テレビシリーズ「DEVS/デヴス」、再びA24作品『MEN 同じ顔の男たち』などがある。次回作は『Warfare』。
『シビル・ウォー アメリカ最後の日』
2024年10月4日(金)公開
アメリカ=イギリス/2024/1時間49分/配給:ハピネットファントム・スタジオ
監督:アレックス・ガーランド
出演:キルステン・ダンスト、ケイリー・スピーニー、ワグネル・モウラ、スティーヴン・マッキンリー・ヘンダーソン
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