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『ヴェノム:ザ・ラストダンス』で3度目のヴェノムとエディの2役を演じるトム・ハーディ。「人間と地球外生命体の2役を演じるのは最高」と言う彼は本シリーズで世界的な人気俳優の一人になったが、実は遅咲きの実力派。その道のりはどんなものだったか。
1977年9月15日ロンドンのハマースミス生まれの現在47歳。父親は作家で母親は画家。イギリスとアイルランドの血を引くトムはロンドン・ドラマセンターなどで演技を学び、21歳でモデル・コンテストで優勝したものの、20代前半はアルコールと薬物依存症で苦しんだ。ハリウッドで「スタートレック」シリーズの『ネメシス:STX』(02)に悪役で出演したが、その後、依存症の治療に専念。当時の妻だったサラ・ウォードとも別れることに。
それでも『レイヤー・ケーキ』(04)『マリー・アントワネット』(06)『ロックンローラ』(08)など脇役でキャリアを重ね、06年にはアンダーグラウンド劇団を創設するなど活躍を重ねてきたが、注目されたのはニコラス・ウィンディング・レフン監督の『ブロンソン』(08)に主演し、伝説的服役囚“チャールズ・ブロンソン”を怪演した時。トムはこの作品で英国インディペンデント映画賞主演男優賞を受賞した。
その好演がクリストファー・ノーラン監督の大ヒット作『インセプション』(10)に繋がり、イームスを演じたトムの魅力が世界的に知られることとなる。ノーラン監督とは後に『ダークナイト ライジング』(12)でも組み、バットマンの最恐の敵ベインをパワフルに演じて観客を圧倒。さらに同監督の『ダンケルク』(17)では英国軍パイロット、ファリア役をヒロイックに演じた。また『インセプション』で共演したレオナルド・ディカプリオとは『レヴェナント:蘇りし者』(15)で再共演。レオはオスカー主演男優賞を初受賞、トムも助演男優賞に初ノミネートとなっている。
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このように2010年代になってからのトムは絶好調。スパイ映画の秀作『裏切りのサーカス』(11)はじめ、クリス・パイン、リース・ウィザースプーンと共演した『Black & White/ブラック&ホワイト』(12)、全編一人芝居の『オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分』(13)、戦時下のスリラー『チャイルド44 森に消えた子供たち』(15)など話題作への参加が続く。その中でもジョージ・ミラー監督に抜擢された『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(15)は大当たりで、砂漠化した荒地でV8インターセプターを駆る元警官マックスに扮し、ハード・アクションをこなして批評家からも絶賛されたことは輝かしいトムのキャリア。打って変わって『カポネ』(20)では伝説のギャング、アル・カポネの末路を熱演。役作りの巧妙さを見せた。
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こうしたフィルモグラフィーの中で、トムが出会ったのが『ヴェノム』(18)。「ぼくにとってエディとヴェノムは一つだから、一つの精神の異なる二つの部分を演じるのはすごく楽しい」と語ったトムは、息子がもともとヴェノムの大ファンだったそうで、ヴェノムの詳細を何から何まで聞かされたとか。マーベルの世界の一員になることよりも、とにかくヴェノムとエディという2人で一つの役柄を演じることがクールだと思ったと言い、2作目『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』(21)の時は「もしみんなが望んでくれれば3作目を作ることも考えている」といかにこの役を楽しんでいるかを明かしていた。そしてその発言通りシリーズ第3弾『ヴェノム:ザ・ラストダンス』(24)が完成したわけだが、長く一緒に暮らしてきたエディとヴェノムが今回で“お別れ?”になるのか、その行方にも注目が集まっている。
ちなみにトムの素顔に少し触れておくと、11年に出演した『ウォーリアー』の役作りがきっかけでブラジリアン柔術にめざめ、22年に英国で行われた柔術大会で優勝した腕前を持つ。また動物愛護家の面も持ち、犬が大好きで、保護犬を家族に迎えたり、レッドカーペットに連れだって現れることもあるほど。そうした顔もファンに愛される理由の一つだ。
さてトムにはこの秋、もう一つの出演作があり、その『ザ・バイクライダーズ』(24)では、60年代の荒くれたちの集団がモーターサイクルクラブを立ち上げ、そのリーダー的なジョニー役を好演。ここでは革ジャン・スタイルの渋いトムを堪能したい。現在はNetflix製作のクライム・アクション『ハヴォック』の撮影を終えたところだが、まだまだ快進撃は続きそうだ。