カバー画像:Photo by JB Lacroix/WireImage
“選択肢”ができたことでこれからの活躍の幅はさらに広がる
Netflixで来年1月配信予定の映画『バック・イン・アクション』で主演復帰するキャメロン・ディアス。最後の出演映画『ANNIE/アニー』(14)からブランク10年、ついにスクリーンに帰ってくることで、再び熱視線を集めている。
日本でも人気の高かった彼女だが、キャリアの初期に日本に一時的に住んでいたことがエピソードとして挙げられることで、親近感を覚えるのかもしれない。滞在理由はもちろん仕事。といっても俳優ではなくモデルとして。16歳のときに大手モデルマネジメント会社と契約し、17歳から21歳までファッションモデルとして活躍していた彼女。日本にいたのは20歳のときに2ヶ月。とはいえ、そのときの思い出は強烈にあったようで、何度か取材で会う度に、こちらが日本人と分かると「あのときは六本木によく連れて行かれてた」という話をしてくれた。
そんな時期を経て、『マスク』(94)で映画デビュー。ジム・キャリーが世界に羽ばたいた作品だけに、そのときの彼女の影は薄かった。が、98年の『メリーに首ったけ』からキャリアが一転する。当時はロマコメといえば、下ネタご法度で甘く切ないのが当たり前。ところが、この作品からこの手のコメディで一時代を築くボビー&ピーター・ファレリー兄弟のおかげで、女子を巻き込んだ下ネタが一世を風靡する。そのきっかけとなったのが『メリー〜』だ。ベン・スティラー演じる主人公テッドがマスターベーションで飛ばした精液を、彼女が演じるメリーがヘアジェルと間違えて前髪につけ……というのは、いまでも語り継がれる名シーンであり、この作品のメインビジュアルでも使われたほど。
この作品から「ロマコメの女王」の座に……とはいかなかったのが彼女の特徴だ。90年代はとかく「ヒットした作品と似た役」が新進俳優につきまとった。おそらく彼女のもとにも、その手の作品オファーが大量に届いたに違いない。ところが彼女が選んだのは、鬼才として一大旋風を巻き起こしたスパイク・ジョーンズ監督の『マルコヴィッチの穴』やオリヴァー・ストーン監督のシリアスなアメフト映画『エニイ・ギブン・サンデー』(ともに99)、アレハンドロ・アメナーバル監督の代表作『オープン・ユア・アイズ』のリメイク『バニラ・スカイ』(01)、マーティン・スコセッシ念願の大作『ギャング・オブ・ニューヨーク』(02)など。いわゆるアイドル的な俳優には不釣り合いな、個性強めの作品で活躍する。その一方で、『メリー〜』で見せた快活さを活かすことができる「チャーリーズ・エンジェル」シリーズや、シモネタゼロの王道ロマコメの傑作『ホリデイ』(06)などにも出演。これら彼女のパブリックイメージ通りの作品が並行することによって、どっちつかずといった印象も与えることになった。
だが、彼女が『私の中のあなた』(09)や『ANNIE/アニー』のときに聞かせてくれた話からは、いかに我々が勝手に作り出したイメージが先行していたかを思い知った。彼女は求められているイメージも分かったうえで作品選びは常に慎重なのに、自分が心からやりたいと思って挑む役が評価されにくい、とこぼしていたのだ。俳優業での大成功の裏で、自分のパブリックイメージの維持と芝居への欲求のギャップの板挟みにあっていた彼女。結婚というタイミングで俳優業を一時休止することを選んだのも納得できるし、ドル箱俳優の彼女に、休業中も次々とオファーが舞い込んでいたことは想像に易い。それでも頑なに復帰をしなかったのは、家族との時間を有意義に過ごすことこそ、それまで得られなかった充実感だったからだろう。
今年第二子が誕生し、第一子もまだ5歳と、子育て真っ盛りの彼女だが、それでも『バック・イン・アクション』での復帰を選んだのは、公開前の大型プロモーションを控えることができる配信オリジナル作品だったからだろう。撮影の期間だけ集中して仕事をこなし、プロモーション時期に無理に世界を飛び回らないでもいいという選択肢ができたことで、これからの彼女の活躍の幅は広がるのではないだろうか。
キャメロン・ディアス SCREEN 表紙コレクション
SCREENの表紙になったのはこれまでに6回。中でも2000~2001年だけで4回も表紙を飾っており、当時の人気がいかに凄まじかったかがうかがえる。
キャメロン・ディアスの最新作はコレ!
CIAを引退していた男女が過激なスパイの世界にカムバック!『バック・イン・アクション』
キャメロン・ディアスの10年ぶりの女優復帰作は、引退していた元スパイの活躍を描くコメディ・アクション。キャメロンが演じるのは、数年ぶりにスパイの世界へカムバックせざるを得なくなってしまう元スパイのエミリーという、まさに自身のキャリアとも重なるようなキャラクター。キャメロンは「この作品を作るのは本当に楽しかった! だから、見る方もきっと同じように楽しめると思う」と復帰作へ自信をのぞかせている。
家庭を築くためにCIAを引退していた男女が、その正体がバレてしまったことでスパイの世界へと引き戻されてしまうというストーリー。キャメロンとともにスパイの世界へ舞い戻ることになる男マット役を演じるのは『ANNIE/アニー』でキャメロンと共演したジェイミー・フォックス。さらにアンドリュー・スコットやカイル・チャンドラー、グレン・クローズといった実力派俳優が脇を固めている。監督・脚本は『ベイウォッチ』のセス・ゴードン。
Netflix映画『バック・イン・アクション』
2025年1月17日(金)より独占配信開始
監督:セス・ゴードン
出演:キャメロン・ディアス、ジェイミー・フォックス、アンドリュー・スコット、カイル・チャンドラー、グレン・クローズ