監督を務めたのは、2012年に手掛けた『ブランカニエベス』が第27回ゴヤ賞にて作品賞を含む最多10部門を受賞したスペインを代表する名匠パブロ・ベルヘル。アニメーション映画へは初挑戦ながら、サラ・バロンのグラフィックノベルを基に、切なくも温かい傑作として結実させた。さらにアース・ウインド & ファイアーの名曲「セプテンバー」が映画に彩りを添えている。
名匠パブロ・ベルヘルは、ニューヨークを舞台とした本作のBGMについて「どんな音楽が合うか」と悩んでいたが、考えを重ねるうちに“ニューヨークの音とは何か”というアイデアにたどり着き、ジャズが最も適していると感じたという。そこで彼はミュージックエディターに音楽探しを依頼したと語っている。
ミュージックエディターを務めたのは日本人の原見夕子氏。監督の指示を受け、クールなジャズを探し求めたが、最終的にはスタッフとの協議を重ね、オリジナルの映画音楽を制作する決断に至った。メイキング映像には、耳に心地よい穏やかなテンポと粋なピアノの旋律が流れ、その音楽が観る者の心に響く。オリジナルの映画音楽が完成するまでの道程について、原見氏は「本当に大変だった」と語り、この映像のハイライトとなっている。
本作は、全編にわたってキャラクターの台詞が無いという、近代映画史でも大胆な挑戦を試みている。80年代のニューヨークを意識したジャズに加え、花が歌うシーンに合わせたコーラスを取り入れた楽曲も制作されている。ビブラフォン、アコーディオン、ウクレレ、タップダンスの靴音など、多様な楽器を用いたオリジナル楽曲が次々と生み出されていく様子も映し出されている。
音楽制作を率いたアルフォンソ・デ・ヴィラロンガ氏と原見夕子氏をはじめとする優秀な音楽スタッフの現場での奮闘も見どころの一つだ。キャラクターの心情を豊かに表現する、心地よいオリジナル映画音楽に注目してほしい。
アカデミー賞・長編アニメーション映画賞で、宮崎駿監督『君たちはどう生きるか』と競い合った本作の完成度を、ぜひスクリーンで確認を!
『ロボット・ドリームズ』
11月8日(金) 新宿武蔵野館ほか 全国ロードショー
<STORY>
大都会ニューヨーク。ひとりぼっちのドッグは、孤独感に押しつぶされそうになっていた。そんな物憂げな夜、ドッグはふと目にしたテレビCMに心を動かされる。
数日後、ドッグの元に届けられた大きな箱――それは友達ロボットだった。セントラルパーク、エンパイアステートビル、クイーンズボロ橋……ニューヨークの名所を巡りながら、深い友情を育んでいくドッグとロボット。ふたりの世界はリズミカルに色づき、輝きを増していく。
しかし、夏の終わり、海水浴を楽しんだ帰りにロボットが錆びて動けなくなり、ビーチも翌夏まで閉鎖されてしまう。離れ離れになったドッグとロボットは、再会を心待ちにしながら、それぞれの時を過ごす。やがてまた巡りくる夏。ふたりを待ち受ける結末とは――。
監督・脚本:パブロ・ベルヘル
原作:サラ・バロン
アニメーション監督:ブノワ・フルーモン
編集:フェルナンド・フランコ
アートディレクター:ホセ・ルイス・アグレダ
キャラクターデザイン:ダニエル・フェルナンデス
音楽:アルフォンソ・デ・ヴィラロンガ
配給:クロックワークス