『モアナと伝説の海2』の冒頭ではるかかなたの海へと航海に繰り出す自由に胸を膨らませ、自分の心のままに生きられることへの喜びを歌い上げるこれから始まるモアナの壮大な冒険への期待をあふれさせる今作の2曲の劇中歌を先取りしてご紹介します!(文・よしひろまさみち、編集部/デジタル編集・スクリーン編集部)

新たな仲間たちと冒険に出るモアナが歌う!

画像: 新たな仲間たちと冒険に出るモアナが歌う!

物語の冒頭を飾る劇中歌「帰ってきた、本当のわたしに」

新たな運命に漕ぎ出す決意が込められた「ビヨンド 〜越えてゆこう〜」

『モアナと伝説の海2』でのプリンセス、モアナが歌う「帰ってきた、本当のわたしに」と「ビヨンド 〜越えてゆこう〜」が、作品公開に先駆けて発表された。「帰ってきた、本当のわたしに」は作品冒頭を飾るオープニング曲。前作から3年後という舞台設定の本作で、かつては海を恐れていたモアナが深めていった海との親密性について歌っている。「ビヨンド 〜越えてゆこう〜」は、本作で描かれる次なる冒険に出ていこうとするモアナが歌う劇中歌。二度と戻れないかもしれない航海への不安と旅立ちの決意を歌い上げている。

今回の音楽を主に担当したのは、アビゲイル・バーロウとエミリー・ベアー。近年のディズニー作品では、ブロードウェイ・ミュージカルなどで話題となった作家を起用しているが、彼女らコンビはまさにその旬の中の旬。2人が手掛けたミュージカルサントラ「The Unofficial Bridgerton Musical」が第64回グラミー賞にて最優秀ミュージカル・シアター・アルバム賞受賞(同部門最年少記録)となったばかり。また、エミリー・ベアーは2022年から始まった東京ディズニーシーの人気演目「ビリーヴ!〜シー・オブ・ドリームス〜」の作曲も手掛けていることで知られる。

『モアナと伝説の海2』
2024年12月6日(金)公開
アメリカ/2024/1時間40分/配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
監督:デイブ・デリック・ジュニア
声の出演:アウリイ・クラヴァーリョ、ドゥエイン・ジョンソンデイブ・デリック・ジュニア、ジェイソン・ハンド、デイナ・ルドゥー・ミラー

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ディズニープリンセスソングに秘められた歴史とメッセージ

ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ(以下ディズニー)作品の人気を支え続けているのはミュージカル、もしくは楽曲の力が大きい。そのなかでも、ディズニー・プリンセスたちが奏でてきた楽曲群は、そのときどきの子どもたちの脳裏に焼き付き、何世代にもわたって歌い継がれてきている。その実、ディズニー作品の人気の尺度を図るのにわかりやすいテーマパークでのパレードやアイスショーの「ディズニー・オン・アイス」、オーケストラによるコンサートシリーズ「ディズニー・オン・クラシック」を観れば一目瞭然。それらのリアルイベントでは歴代ディズニー・プリンセスの歌はド定番だし、『白雪姫』や『シンデレラ』など、ディズニーでもっとも古いプリンセスの楽曲群がそのまま使われても古さを全く感じさせない強さがある(これらプリンセスのキャラクターの変遷は、ディズニープラスで「プリンセス・コレクション」カテゴリとして作品群がまとまっているのでチェックを)。では、そのディズニー・プリンセスが歌う楽曲にはどのような歴史とメッセージがあるのか振り返りたい。

若い女性が幸せな未来に夢をはせる自立した女性像への期待

まずディズニー最初のプリンセスソングは、ディズニー長編第一作で第一黄金期のきっかけとなった『白雪姫』の「いつか王子様が」。物語中盤で小人たちからせがまれて白雪姫が他国の王子への思いを歌うシーンで流れる。1937年、日本では二・二六事件が起きたころ。当時のジェンダー観で「白馬に乗った王子様がいつか迎えに来る」というのが女性の夢だった。ジェンダーの平等が整い始めた今となっては古い価値観ではあるものの、メロディの美しさと苦境から救いを求める代弁ソングとして親しまれている。それから13年後の1950年に『シンデレラ』、1959年には『眠れる森の美女』、と2人のプリンセスが現れた50年代。戦勝国の好景気に湧くアメリカは、新しい秩序を模索していた時期だ。特にそれが現れているのが『シンデレラ』の「夢はひそかに」。王子様との出会いが物語のキモとなるのに、この楽曲の歌詞にはプリンスは出てこない。苦境に立たされた若い女性が幸せな未来に夢をはせる歌。この時点で自立した女性像への期待を込めた未来予想図が描かれていたといえる。その後、60〜70年代に起こるウーマンリブ、公民権運動など、ジェンダーや人種に依存しない平等を訴える時代への胎動といってもいいだろう。

ディズニープリンセスの楽曲は時代を切り開く次の世代へ

時代は流れ90年代。ディズニーは89年の『リトル・マーメイド』から続く第二黄金期に突入。楽曲的にはディズニー・レジェンドの一人で今も活躍するメロディメーカー、アラン・メンケンの時代でもある。彼が生み出すメロディは『白雪姫』時代から継がれてきた壮大かつキャッチーなもので、どんなアレンジをしても心に残る。彼がこの時代に作り出したプリンセスソングは「パート・オブ・ユア・ワールド」、「美女と野獣」、「ホール・ニュー・ワールド」(『アラジン』)、「カラー・オブ・ザ・ウィンド」(『ポカホンタス』)だが、それらは全てオスカーを獲得した名曲揃い。そのどれもが、ミュージカル全盛だった古き良き時代を回顧するかのような美しいメロディと、女性をはじめとする、なにかしらの抑圧を受けている人々への応援歌となっている。

そして『塔の上のラプンツェル』から続く第三黄金期。時代の躍動を受けて、プリンセスソングも変容する。ラプンツェルのソロ曲「自由への扉」、デュエット曲の「輝く未来」も、主人公は誰も救いを待っていない。自分の足で次なるステージへと歩みだそうとするシンボル曲として使われる。それがもっとも象徴的に現れるのが、『モアナと伝説の海』の「どこまでも〜How Far I’ll Go〜」。アラン・メンケン、ロペス夫妻、リン=マニュエル・ミランダといった随一のメロディメーカーによってクラシカルながらも力強いメロディラインをベースに、プリンセスが誰にも依存せず自力で運命を切り開こうとする象徴的なセリフを歌に乗せた。時代を切り開く次の世代、すなわちディズニー作品を観る子どもたちへのメッセージとして、ディズニープリンセスの楽曲はこれからも生み出されていくだろう。

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