カバー画像:Photo by Matt Doyle Photo/Contour by Getty Images
ジェームズ・マカヴォイ プロフィール
1979年4月21日、スコットランド・グラスゴー生まれ。ロイヤル・スコティッシュ・アカデミーを卒業後、1995年『The Near Room(原題)』でスクリーンデビュー。2005年の『ナルニア国物語/第1章:ライオンと魔女』で英国アカデミー賞ライジング・スター賞を受賞し、世界的な注目を浴びた。その後『ラストキング・オブ・スコットランド』(06)、『つぐない』(07)と出演を重ね『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』(11)では、若き日のチャールズ・エグゼビア/プロフェッサーX役に大抜擢。M・ナイト・シャマラン監督『スプリット』(16)では 23の人格を持つ主人公を見事に演じ分け話題となった。待機作は、ロベルト・シュヴェンケ監督のアクション×スリラー『Control(原題)』など。
ブラムハウスの作品は完璧な娯楽映画だよ、完全に観客の心をつかんでいる。これこそ本物の映画だ
──初めて脚本を読んだ時の感想はいかがでしたか?
「“彼らは善良な夫婦だ”だが夫婦の関係性は、健全とは言えない。愛は冷めきっていて色のない日常を送っており、幸せも感じられていない。こういう夫婦は現実世界でも多いだろうね。そこに怪しい夫婦が登場する。その夫婦は愛し合っていて、それはとてもリアルで情熱的に描かれている。誰もが憧れる夫婦関係さ。この対照的な2組の夫婦が互いに影響を及ぼしあっているから面白い。それが出演の決め手だ」
──複雑で魅力ある役柄をどのように実現しましたか?
「まるで綱渡りのようだったよ。僕が演じたのは魅力的な男性でありながら、野性的で恐ろしい男だった。政治的に正しい一面と間違った面を持っている“男らしさ”のいい面と悪い面が混在している。コメディとホラーの狭間で揺れていて、どちらかに降りきることはできない。ワトキンス監督は、そのバランスを見事に調和してくれた。遠すぎても、近すぎてもダメなんだ。それが役作りの難しいところだ」
──本作のアクションシーンのために何か準備をしたことはありますか?
「体つきは映画の冒頭から筋肉質だけれど、弱い男を演じている。終盤では強く見えるよう意識したけどね。撮影前に腕立て伏せをしたり、体を大きく見せるために肩を広げてみたり、撮影前に腕のトレーニングもした。それだけで印象が変わる。筋肉質で野性的な男に見えるんだ。彼(パトリック)は血を求める危険な男だからね」
──子役たちが演技をする際に配慮したことはありますか?
「映画の環境と真逆さ!2人の子役も仲よくなって楽しそうだったよ。撮影場所は少なくて、クロアチアでは2週間の撮影期間があり、イギリスの撮影では美しい夏を楽しんだよ。子役たちも走りまわっていた。怖いシーンの撮影にはとても気を使ったよ。子役本人や保護者に確認し、子役の様子を確かめながらいつでも撮影を止められるようにしていた。肝心の子役たちはへっちゃらな感じだったから、すばらしい環境だったと思う。意外だろうけど、悲劇やホラー映画の撮影現場はとても穏やかなんだ。逆にロマンスやコメディはピリピリしている現場が多い。作品と現実は違うってことさ」
──演じる際に緊張感や恐怖を感じたシーンはありましたか?
「レストランでディナー中の出来事を描いたシーンだね。好きな音楽が流れて僕は妻とダンスを踊る。店にはもう1組の夫婦とシェフだけ。“5分くらいセクシーなダンスを踊れ”と言われたんだ。僕と妻役のアシュリンには悪夢みたいな経験だったよ。冒頭にあるダンスシーンは気軽に楽しく踊れた。だけど問題のシーンはそれだけじゃ不十分だったんだ、“セクシーなダンス”が求められていたからね。音楽に合わせてセクシーに踊るなんて最悪だ。2人とも汗をかいて必死に演じきったのに、全部カットされていたよ」
──オリジナル版を観られたりもしましたか?
「撮影が終わった翌日に観たよ。リメイク版と同じ部分や違いに驚くシーンもあったし、オリジナル版とは別物だとも思った。だけど、他の人の演技を観るのはとても面白かったよ。昨日まで僕が演じていた役だからね」
──最も怖い生物は“人間”だと思いますか? そして、あなたにとって“怖いもの”はありますか?
「そんなの当然さ。それこそ、この映画で描いていることだ。人間社会を描くホラーだから余計に恐怖を感じる。日常に潜む恐怖を切り取った社会派ホラーであり、上品な人間と無礼な人間のホラーでもある。登場人物のベンとルイーズは極めて普通の夫婦に見えるだろう。夫婦関係に悩みながら日常生活を送っている。だけど、僕が演じるパトリックと妻のキアラは違う。あまりに自由でもはや宇宙人だよ。堅苦しい日常や決断から解き放たれているように見える。2組の夫婦は両極端なんだ。全ての決断が理解不能だから恐怖を感じさせる。それと、僕が怖いのは駐車違反切符だね。何枚もたまっているから支払わなくちゃいけない!」
──ブラムハウスとの作品作りの感想は?
「ブラムハウスの作品は完璧な娯楽映画だよ。完全に観客の心をつかんでいる。これこそ本物の映画だ。彼らの映画には深い意味が隠されている。人間社会を客観視させるんだ。それでも作品のエンタメ性は決して失われない。それが他プロダクションとの差だと思う」
──ジェイソン・ブラムと本作について話しましたか?
「とにかく撮影が楽しみだったよ。オリジナル版とは別物にしようと決めた。ブラムハウスらしさといえば社会への問題提起だ。それでいて魅力的なエンタメ作品。話していたとおりの作品を作りあげたよ」
『スピーク・ノー・イーブル 異常な家族』
あるアメリカ人一家が、旅行先で感じの良い子連れのイギリス人一家と親しくなり、週末の休みに自宅へ招待される。そこは、人里離れ隣家も居ない静かな場所に存在する一軒家だった。自然を散策したり食事を楽しんだりして過ごしていたが、次第にイギリス人一家の“おもてなし”に小さな違和感を抱き始め…。
『スピーク・ノー・イーブル 異常な家族』
2024年12月13日(金)公開
アメリカ/2024/1時間50分/配給:東宝東和
監督:ジェームズ・ワトキンス
出演:ジェームズ・マカヴォイ、マッケンジー・デイヴィス、スクート・マクネイリー、アシュリン・フランチオージ