カバー画像:『グラディエーターⅠⅠ 英雄を呼ぶ声』より ©2024 PARAMOUNT PICTURES
「グラディエーター」「デューン」の続編が大量ノミネートか?
昨年度のアカデミー賞は興行的にも成功した『オッペンハイマー』が作品賞ほか大量受賞となったが、今年度のオスカー・レースはどの作品、どの俳優が有力と言われているだろうか。現時点(10月下旬)で興行収入トップテン入りしている作品の中で賞レースに絡んできそうな作品は『デューン 砂の惑星PART2』くらいだ。
『デューン 砂の惑星PART2』
4K ULTRA HD&ブルーレイセット 8,580円(税込)
発売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
販売元:NBC ユニバーサル・エンターテイメント
©2024 Warner Bros. Entertainment Inc. and Legendary. All rights reserved.
昨年は『バービー』と『オッペンハイマー』のトップ1、2がノミネート数を争ったことを考えるとちょっと寂しいが、本年度1位の『インサイド・ヘッド2』は長編アニメーション部門でノミネートが確実視されている。さて『デューン…』だが、作品賞、監督賞(ドゥニ・ヴィルヌーヴ)の他、美術、撮影、編集、音響など技術部門での大量ノミネートが噂されている。しかし今回はまだ主要部門で本命視される作品があまり確定していないためか、これから発表される全米各都市の批評家賞の結果次第で大きく変わりそうな気配だ。
その中でも最多候補を獲得しそうな作品が現在ヒット中のリドリー・スコット監督最新作『グラディエーターⅠⅠ 英雄を呼ぶ声』で、作品賞はじめ、スコットの監督賞、ポール・メスカルの主演男優賞、デンゼル・ワシントンの助演男優賞の他、『デューン…』同様、美術、撮影、編集、音響などでのノミネートが予想され、この2本の続編映画の激突が話題になるかもしれない。スコットは念願の監督賞初受賞なるかが注目ポイントだ。『デューン…』の主演俳優であるティモシー・シャラメは、本作でなくボブ・ディランの若き日を演じる『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』での主演男優賞候補が有力視されている。他に作品、監督(ジェームズ・マンゴールド)、脚色賞部門での候補にも挙がるかもしれない。
『グラディエーターⅠⅠ…』『デューン…』に続く大量ノミネートが噂されているのがNetflix作品『エミリア・ペレス(原題)』だ。カンヌ国際映画祭で、カルラ・ソフィア・ガスコン、ゾーイ・サルダナ、セレーナ・ゴメス、アドリアナ・パズの4人が同時に最優秀女優賞を受賞したことも記憶に新しいジャック・オディアール監督作で、麻薬カルテルのボスが引退してジェンダー交換手術を受けることから始まる犯罪と贖罪のドラマ。作品、監督、主演女優(ガスコン)、助演女優(サルダナ)、脚色などで有力と言われており、カンヌで絶賛された本作は今度はオスカーで波乱を起こすかもしれない。またカンヌでパルムドールを受賞した『ANORA アノーラ』も作品、監督(ショーン・ベイカー)、主演女優(マイキー・マディソン)、脚本、編集などでノミネートされるのは必至と注目されている。
複数候補を狙えるという作品は他にもあり、レイフ・ファインズがついに主演男優賞獲得か?と絶賛される『教皇選挙』はローマ新教皇を選出する儀式の手配を任された枢機卿が、陰謀に巻き込まれるエドワード・ベルガー監督のスリラーで、ファインズの主演男優、ベルガーの監督賞に加え、作品、助演男優(スタンリー・トゥッチ)、助演女優賞(イザベラ・ロッセリーニ)など主要部門でことごとく有力とされている。もうひとつは来春日本でも公開が決まっている大ヒット・ミュージカルの映画化『ウィキッド ふたりの魔女』で、オズの世界を舞台にしたふたりの若い魔女の物語。作品賞ほか、主演女優(シンシア・エリヴォ)、助演女優賞(アリアナ・グランデ)や技術部門でのノミネーションが期待されている。
さらに3時間半を超える野心的なA24作品『ブルータリスト』はアメリカにやって来た欧州の建築家夫妻が裕福なクライアントに翻弄されるドラマで、監督は俳優出身のブラディ・コーベット。これも作品、監督の他、主演男優(エイドリアン・ブロディ)、助演男優(ガイ・ピアース)、脚本などの候補入りが有望とのこと。またApple TV+のスティーヴ・マックィーン監督作『ブリッツ ロンドン大空襲』も作品はじめ助演女優(シアーシャ・ローナン)や技術部門での複数候補が囁かれている。ローナンは本作以外にスコットランドを舞台にした女性ドラマ『アウトラン(原題)』で主演女優賞候補も可能と言われ、Wノミネーションもあるかもしれない。先日のベネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞したペドロ・アルモドヴァル監督の『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』(前ページ参照)も作品賞候補10本に入るという評判。同作からはティルダ・スウィントンの主演女優賞ノミネートなども期待されている。
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