「ライオン・キング」と言えば楽曲も魅力。作り手たちを中心にシリーズを音楽面から振り返ってみましょう。(文・宇田夏苗(音楽解説)/デジタル編集・スクリーン編集部)
カバー画像:ディズニープラスで配信中の『ライオン・キング』より © 2024 Disney

『ライオン・キング』が1994年に長編アニメーション映画として公開された時、パワフルで印象的な楽曲に心を掴まれた人は多いのではないだろうか。それを証明するように同年アカデミー賞音楽部門を独占し、この映画をもとにしたブロードウェイ・ミュージカル版は日本でも25年を超えてロングラン上演中だ。映画でも舞台でもオープニングを飾る「サークル・オブ・ライフ」をはじめ、聴いた瞬間にアフリカ・サバンナの情景が目の前に広がる「ライオン・キング」の音楽。その作り手たちにフォーカスしてみたい。

アフリカが舞台のオリジナル・ストーリーであるという点で、『ライオン・キング』はそれ以前のディズニー作品と異なる作品だったが、音楽をエルトン・ジョンが提供すると発表された時、そのニュースは驚きを持って迎えられた。ロック界のキングと呼ばれるエルトンは1971年以来映画音楽を手掛けておらず、超売れっ子の大スター。ところがエルトンはディズニーのオファーを快諾したという。本人曰く「脚本を読んですぐに物語とキャラクターが大好きになった。何よりディズニー映画の音楽を作れる、こんなチャンスはないと思った」とのこと。歌詞を担当したティム・ライスはエルトンの類稀なる才能を目の当たりにしたこんなエピソードを明かしている。「『サークル・オブ・ライフ』の歌詞を渡すと、エルトンはなんと1時間半で曲を書き上げたんだ」。「サークル・オブ・ライフ」はそのタイトル通り、“生命の連環”という作品のテーマを謳う賛歌のようだ。「この世界は不思議だらけ 人生は大きな輪」といった美しく心に響く歌詞と音楽。これほど力強くドラマティックな映画のオープニングがあるだろうかと思わずにはいられない。

「ライオン・キング」の音楽が特別なのは、エルトン・ジョンにハンス・ジマーとレボ・Mという才能溢れるアーティストたちが参加していることが大きい。3人のコラボレーションが洗練されていて、なおかつ楽しさに満ちた音楽を生み出した。

画像: 3人の気ままな暮らしを彩る「ハクナ・マタタ」 ディズニープラスで配信中の『ライオン・キング』より © 2024 Disney

3人の気ままな暮らしを彩る「ハクナ・マタタ」
ディズニープラスで配信中の『ライオン・キング』より © 2024 Disney

ドイツ出身のハンス・ジマーは『グラディエーター』『トップガン マーヴェリック』など数々の映画音楽を手掛けてきた人気作曲家。映画音楽界の革命児ともいわれる彼のアレンジが、エルトンのポップな音楽にアフリカンなサウンド感を絶妙なバランスで加えて完成させた。ジマーの誘いで参加した南アフリカ出身のプロデューサーで作曲家のレボ・Mは、自身のルーツを生かして「サークル・オブ・ライフ」の冒頭を歌い、ズールー語やアフリカ音楽の監修を担った。異なるバックグラウンドを持つ音楽の作り手たちは、さまざまな生き物たちが登場する物語の世界を表現するのに、まさにぴったりだったのだ。

2019年公開の超実写版でも冒頭に流れるのはやはり「サークル・オブ・ライフ」だ。ファンにとっては『これぞ『ライオン・キング』!」と心躍らせてくれるサウンドとリズム。リアルな動物たちに驚かされる超実写版では、俳優、歌手、作曲家の顔を持つドナルド・クローヴァーがシンバの声を、幼馴染ナラの声を世界の歌姫ビヨンセが担当。いずれもグラミー賞受賞経験を持つ2人がおなじみのキャラクターに命を吹き込み、美しいデュエット「愛を感じて」など名ナンバーを歌い、またビヨンセ作曲の新たな劇中歌「スピリット」が加えられるなど、音楽面でも進化を遂げている。

画像: シンバとナラの恋を歌う「愛を感じて」 ディズニープラスで配信中の『ライオン・キング』より © 2024 Disney

シンバとナラの恋を歌う「愛を感じて」
ディズニープラスで配信中の『ライオン・キング』より © 2024 Disney

そのほかOVAシリーズ『ライオン・キング2 シンバズ・プライド』(1998)、『ライオン・キング3 ハクナ・マタタ』(2004)でも人気を集めてきた「ライオン・キング」。シンバの物語の前日譚『ライオン・キング:ムファサ』の音楽の作り手には、オリジナルの音楽チームに現代ブロードウェイを代表する作詞・作曲・脚本・演出家であり俳優のリン=マニュエル・ミランダが参加。アメリカ建国の立役者の1人アレクサンダー・ハミルトンの生涯をヒップホップで綴った「ハミルトン」での成功でブロードウェイ・ミュージカル史にその名を刻んでいるミランダは、映画界でも大活躍中。ディズニー映画『モアナと伝説の海』(2016)の作曲と歌、『ミラベルと魔法だらけの家』(2021)の作曲、実写版「リトル・マーメイド」(2023)の作詞を手掛けている。そんな彼は「『ムファサ』の脚本を読んでとても興奮した。今まで見たことのないミュージカルにできる瞬間はなんだろう?と考えた」と語る。『ムファサ』の予告に一瞬流れるミランダ作詞・作曲の「ブラザー/君みたいな兄弟」を聴いただけでも、躍動感のある音楽に期待が高まるばかりだ。

Hakuna matata「ハクナ・マタタ」

ミーアキャットのティモンとイボイノシシのプンバァが歌う陽気なナンバー。スワヒリ語で「どうにかなるさ、くよくよするな」という彼らの歌に、幼いシンバは励まされる。

Circle of life「サークル・オブ・ライフ」

『ライオン・キング』のテーマ曲。地平線に太陽が昇る冒頭、アカペラで歌われる「ナンチ・インゴンヤマナミ〜」というズールー語の歌詞がアフリカの地へと誘ってくれる。

He lives In you「ヒー・リブズ・イン・ユー」

レボ・M作詞・作曲による『ライオン・キングII』の主題歌。アフリカンなリズムとポップスが見事に融合。「自分を信じていけ」と背中を押してくれるドラマティックなナンバー。

Can you feel The Love Tonight「愛を感じて」

故郷を離れて生きていたシンバはナラと再会。幼い日々をともに過ごした2人が愛を確かめるように歌うロマンティックなこのバラードでエルトン・ジョンはグラミー賞を獲得。

This article is a sponsored article by
''.