養蜂家としての自分を受け入れてくれた恩ある老婦人が詐欺に遭い、全財産を奪い取られて死を選んだ。主人公は復讐を誓い、詐欺集団の末端組織から壊滅していき、トップに君臨するターゲットを追い詰めていく。2025年1月3日公開の『ビーキーパー』はジェイソン・ステイサム主演のリベンジアクションである。デヴィッド・エアー監督がSCREEN ONLINEのインタビューに応じ、作品への思いやジェイソン・ステイサムについて語ってくれた。(取材・文/ほりきみき)

アクションに説得力をもたらしたジェイソン・ステイサム


──高齢者が詐欺に遭う事件は日本でも大きな問題になっています。本作は脚本家のカート・ウィマーさんのドイツに住んでいた伯母様が詐欺に遭われたことがきっかけとのことですが、企画を聞いてどう思われましたか。

愛する人が理不尽な仕打ちを受け、それを正したいという思いをカートは映画という形でポジティブなメッセージに昇華させました。個人的な思いがきっかけでしたが、カタルシスを誘い、すごくいいストーリーテリングに繋がったと思います。


──主人公がビーキーパー(養蜂家)という設定で、社会の秩序が崩れたときにビーキーパーが現れて、正しい方向に導くという考え方が作品のベースにあることが興味深かったです。

ハチの巣が捕食者や天候にやられないように、ビーキーパーがケアすることで、ハチはそれぞれの役割を果たし、協業して社会を作っていく。しかし、ハチはビーキーパーの存在に気付いていない。ただ黙々と巣の中で働いている。それを我々の社会に置き換え、社会の管理システムが崩壊したときに、システムの外側にある見えざる神の手が差し伸べられることを描いています。

社会の腐敗をヒーローが是正する。古くは神話を介して、こういった話が語られてきているので、我々は慣れ親しんでいます。現実の世界では、作品のように単純な話にはなりませんが、アダム・クレイみたいに我々を助けてくれる存在がいたらいいですよね。希望あふれる比喩だと思いました。

画像1: アクションに説得力をもたらしたジェイソン・ステイサム


──アダム・クレイを演じたジェイソン・ステイサムとは今作で初めて組まれたかと思います。一緒に仕事をされてみて、いかがでしたか。

素晴らしい協業相手でした。一生懸命に取り組み、時間も寛大に使ってくれる。あれだけのステイタスのある俳優なのに、僕が「やってください」と言ったことはすべてやってくれる。ここまでしてくれるのはすごいことです。僕を監督として信頼してくれたのだと思うと、とても謙虚な気持ちになりました。

アクションに関しては、僕よりも格段に経験値が高いだけでなく、まるで歩くアクション映画辞典のよう。「あのキックの歴史は…」とか、「あのパンチの歴史は…」と語ってくれるのです。僕もそれなりに映画のことを分かっているつもりでしたが、話していると比べものにならないくらい、映画のことを詳しく知っていることがわかりました。

何といっても、いちばん感心したのは、自分でスタントをするところですね。スタントマンにお願いしないのです。しかも、格闘センスだけでなく、カメラに対するセンスもある。カメラが人体の動きをどう捉えていて、どう動くとカメラ的に映えるのかをちゃんと把握した上で体を動かしていました。そして、格闘シーンとはいえ、本当に人を殴っているわけではありませんから、その振り付けにどう説得力を持たせるかということが大切。それにも長けているのです。本当に素晴らしいです。彼からさまざまなことを学びました。

画像2: アクションに説得力をもたらしたジェイソン・ステイサム


──クレイが敵を倒すとき、骨が折れたり、関節が外れたりする音が聞こえました。視覚の説得力に加えて、聴覚でも痛みを感じます。

サウンドミキシングはカメラのフォトグラフィーと同じくらい大事なものだと思っています。そもそも映画はイリュージョン。音をいかに効果的に使うのかはカメラワーク、芝居、音楽に引けを取らないくらい重要です。フォーリーアーティストがどうやって、あの音を作り出したのか、キャベツをいじっているのか、泥を叩いているのか、チキンの骨を折っているのか、具体的なことは知らないのですが、できあがったサウンドはストーリーテリングの一端を担ってくれました。

フォーリーアーティストが作ったサウンドをミキシングしていく作業はすごく楽しいし、大事です。とはいえ、ミキシングルームに入ると1日中、爆発音を何度も繰り返し聞くような状況になりますから、退屈に感じることもあります。だからといって、つまらないなんていっているわけにはいきません。100%の意識を投じて取り組まないといけないので、監督業というのは修行みたいな部分もあるのです。

画像3: アクションに説得力をもたらしたジェイソン・ステイサム


──編集も部屋に籠って行う作業ですが、本作で編集を担当されたジェフリー・オブライエンさんとは『フューリー』(2014)『スーサイド・スクワッド』(2016)『ブライト』(2017)『L.A.スクワッド』(2020)とこれまで何度も組んでいらっしゃいます。今回の編集ではどのようなことを意識されましたか。これまでの作品との違いがあったら教えてください。

映画はポストプロダクション次第といわれますが、特に撮影した映像をどう編集するかどうかで、映画が歪むか、次の次元へと昇華するかが決まるので、とても大事なプロセスです。僕は監督として、編集がいちばんプレッシャーを感じます。しかも、『スーサイド・スクワッド』が自分のコントロールの効かないところで全然違うものにされてしまったという経験がありますので、編集に関してはとてもセンシティブに考えています。

一般的に、撮影そのものはかなりカオスというか、撮影した素材は膨大な量になるので、作品を編集するのに必要な素材を見つけ出すのは本当に大変。編集者に伝えなくてはならない情報量も無限大ですから、膝を突き合わせて、一緒に作業をしていくしかありません。僕自身も編集権を持っているので、「こういう風に繋げたい」とシーンを選んで、繋げて、見せたりします。

今回、いちばん注力したのは、ジェイソン・ステイサムをカッコよく見せつつ、いかに説得力を持たせるかということ。彼はレジェンドなアクションスターですから、彼がカッコよく見えないと作品として成り立たないのです。彼が出演しているアクションシークエンスをいちばん最後に編集しました。

画像4: アクションに説得力をもたらしたジェイソン・ステイサム


──ジェイソン・ステイサムとは次回作でも組まれ、その作品はシルヴェスター・スタローンが脚本を手掛けると聞きました。ジェイソン・ステイサムはどのような役を演じるのでしょうか。

ジェイソン・ステイサムが演じるキャラクターはとても多層的な人間で、誰もが共感できると思います。アクション俳優としての魅力だけでなく、心の琴線に触れるような演技も見せてくれるので、恐らく、彼のベストパフォーマンスと言われる作品になるでしょう。彼の新しい一面を楽しみにしてもらえればと思います。

<PROFILE>
デヴィッド・エアー監督
1968年1月18日、米国イリノイ州シャンペーン出身。海軍での勤務経験を活かして『U-571』(2005)の脚本執筆に参加。思春期を過ごしたL.A.サウスセントラルでの強烈な生活体験に加え、圧倒的なリサーチ力を発揮した『トレーニング デイ』(2001)の脚本で業界中の注目を集める。 『ワイルド・スピード』(2001)『ダーク・スティール』(2002)『S.W.A.T.』(2003)などで脚本家として名声を高めたのち、『バッドタイム』(2005)で監督デビュー。主な監督作は、『フェイク シティ ある男のルール』(2008)、『エンド・オブ・ウォッチ』(2012)、『フューリー』(2014)、『サボタージュ』(2014)、『スーサイド・スクワッド』(2016)など。 本作ではアクションスターのジェイソン・ステイサムと初タッグを組み、カート・ウィマーの脚本を得て、カタルシスを呼ぶ荒唐無稽さと硬質なリアリティを融合。互いに新境地を切り開いたジェイソン・ステイサムとは、次回作『Levon's Trade(原題)』でも再び共闘する。

画像: 【インタビュー】ジェイソン・ステイサムは歩くアクション映画辞典!『ビーキーパー』デヴィッド・エアー監督

『ビーキーパー』2025年1月3日(金)公開

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<STORY>
アメリカの片田舎で静かな隠遁生活を送る養蜂家。ある日、彼の恩人である善良な老婦人がフィッシング詐欺にかかり、全財産をだまし取られた末に自ら命を絶ってしまう。 詐欺組織への復讐を誓った養蜂家は、かつて所属していた世界最強の秘密組織“ビーキーパー”の力を借り、怒涛の勢いで事件の黒幕へと迫っていく。
その先に立ちはだかるのは、この国では絶対に誰も手が出せない最高権力の影。それでも養蜂家は何も恐れず前進し、社会の秩序を破壊する害虫どもを完膚なきまでに駆除し続ける。
そしてついに、彼が辿り着いた最大の“悪の巣”とは――?

<STAFF&CAST>
監督:デヴィッド・エアー
脚本:カート・ウィマー
出演:ジェイソン・ステイサム、ジョシュ・ハッチャーソン、ジェレミー・アイアンズ
2024/アメリカ・イギリス/105分/シネスコ/5.1ch/英題:THE BEEKEEPER
配給:クロックワークス
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