立ち退き命令に戸惑い困惑する家族・・・
少女の特別な夏を描いた初の長編監督作『悲しみに、こんにちは』がベルリン国際映画祭で最優秀新人作品賞とジェネレーション部門グランプリを受賞したカルラ・シモン。長編2作目となる『太陽と桃の歌』はカタルーニャが舞台。3代にわたって桃農園を営む大家族のソレ家が家族経営する桃農園がソーラーパネルに取って代わられる。世界中で起こっている自然と人間の問題を描き、ベルリン国際映画祭に凱旋するや見事、金熊賞を受賞。世界各地で56の映画祭やアワードに受賞&ノミネートされた。
今回解禁された本編映像では、立ち退き命令に戸惑い困惑する家族の様子が収められている。先代が譲ってくれた土地だと主張するものの、契約書がなければ正式な証明が成立しないことを指摘され、行き詰まった表情を浮かべる祖父・ロヘリオ。口約束を交わす程度の仲だったのだろうとロヘリオを責め立てる父・キメット。重苦しい空気が流れるソレ家……。
リアリティ溢れる家族の演技を魅せるソレ家のキャストは、なんとほとんどが実際にカタルーニャの村々に住む演技未経験の人々。9000人を超えるオーディションを行った上で選出されたキャスティングを振り返り、カルラ・シモン監督は「私はこの作品では、実際にこの地で農業を営み、土地を失う意味を理解できる人たちに演じてほしいと考えました。俳優が役柄に近づけば近づくほど、そこに真実味が生まれます」と話し、農家、または農家で育った人たちの中からいいキャストに出会える確信があったという。「日々、口にする食べ物をどんな人たちが供給し、どのように栽培しているのか考えてみるべきなのです」
さらに、スペインのなかでも独自の言語であるカタルーニャ語を、この土地を描くために話されている言語を尊重したとしている。集められたキャスト陣は本当の家族になるよう多くの時間を共に過ごし、少しずつ関係性を築いていった。最終的には普段でも役名でお互いを呼び合うぐらい、本当の家族のような絆を築き上げたという。「私たちは、家族を選ぶことはできません。だからこそ、家族の関係は複雑で深く、矛盾に満ち、それでいて無条件なのです」。時に笑わせ、時に目頭を熱くさせる、家族のぶつかり合いと絆の行方が描かれている。
『太陽と桃の歌』
2024年12月13日(金)、全国ロードショー
監督・脚本:カルラ・シモン
出演:ジョゼ・アバッド、ジョルディ・ プジョル・ ドルセ、アンナ・ オティン
2022年/スペイン・イタリア /カタルーニャ語/カラー/ヴィスタ/5.1ch/121分/原題:ALCARRÀS/日本語字幕:草刈かおり
後援:スペイン大使館 インスティトゥト・セルバンテス東京
配給:東京テアトル
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