応仁の乱前夜の京で一揆を起こしたアウトローたちを描いた『室町無頼』で、“無敵の棒術”を身につけ戦う青年・才蔵を演じた長尾謙杜。大泉洋をはじめ個性派俳優たちがしのぎを削る大作時代劇で、壮絶なアクションを披露し、注目度も評価も高まっている。才蔵の成長物語でもある本作を通して、長尾が感じたこととは?(文・杉谷伸子/写真・野口貴司(San Dorago)/デジタル編集・スクリーン編集部)
長尾謙杜 プロフィール
2002年8月15日生まれ。大阪府出身。2021年に「初心LOVE(うぶらぶ)」でCDデビューした、なにわ男子のメンバー。Amazon Orginal映画『HOMESTAY(ホームステイ)』(22)で主演、NHK大河ドラマ「どうする家康」の久松源三郎勝俊役、映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』(23)の露伴の青年期など、話題作への出演が続いている。
──作品のスケールの大きさにもアクションのかっこよさにもテンションが上がりますが、棒術の達人へと成長する長尾さんが演じる才蔵という役がまた素晴らしいですよね。
「ありがとうございます。脚本を読んだときは、最初と最後ではまったく別人のような才蔵の成長をどう表現しようかなというのが一つ大きくありました。ト書きに書かれているアクションも人間じゃないような感じでしたし。でも、完成した作品を観て、すごく身体能力の高い才蔵が出来上がったと思いますし、映画全体も才蔵もかっこいいなというのがまず第一印象にあって。その中でもキャッチコピーに“世界を変えるは、人の力”とあるように、みんなが意思を持って動くことの大切さが表現されていて、 今の日本に刺さる作品になってるのではないかなと思いますね」
──トレーニングも大変だったのでは?
「飢饉の時代のお話なのでほとんどの共演者の方々は役作りのために体を絞られていたと思うんですけど、僕はガリガリだったので、逆に“食え”とは言われましたね。体を鍛えてほしいということで、人生で初めてちゃんとジムに通って、筋トレをしました。棒術は初めてだったので素振り100回から初めて、3か月くらい練習してからインしたんですけど、練習初日も撮影初日も大変でしたね。これが 2か月、3か月続くと考えると、 “どうしよう!?”みたいな。でも、練習していくにつれて、どんどん楽しくなってきましたし、スタッフさん含め共演者の皆さんが温かく優しくしてくださるので、撮影も楽しくできました。ただ、アクション監督のボスが、棒術の長い棒を何百回も振る練習を一緒にしてくれていたんです。“すごいですね!僕、無理ですわ”って感心してたんですけど、ボスの棒を持ったら、すっごい軽い棒だった。僕は同じものを振っていると思っていたのに、僕だけ重い棒だったので、 ちょっと腹立ったんですけど、おかげで鍛えられました(笑)。スタントはなしです。アクションは、全部自分でやりました」
──兵衛役の大泉洋さんと一緒のシーンが多いですが、どのように過ごされましたか。
「大泉さんだからこそ、すぐに打ち解けれましたし、いろんな話をさせていただいたり、 ご飯にも連れて行っていただいたりして、たくさんお話できたので、それが兵衛と才蔵のいい師弟関係として表現されてるのではないかなと思います。野外での撮影が多かったので、オフのときも青空の下で椅子2つ置いて2人でずっといい感じで話してました。それだけでも番組撮れるんじゃないかってくらい(笑)。テレビで拝見して想像していた以上に優しくて素敵な方でしたし、エキストラの皆さんが何百人といらっしゃるシーンでも、撮影前の大泉さんがかける一声がみんなの原動力になってました。そこでも、“この作品は『レジェンド&バタフライ』というんですけども”って、鬼の嘘をついて笑いを取ったり。そういう面白さで場を和ます力も素敵だなと思いましたね」
──この作品は、才蔵の成長物語でもあります。才蔵の変化を見事に体現されましたが、演じるにあたって入江悠監督とはどのようなお話をされましたか。
「監督からは原作や台本に書かれている才蔵の人物像について教えていただきましたが、絶対にこう演じてほしいという要望はなかったので、 自分でいろいろと才蔵を模索しながら作り上げていきました。僕、監督のSNSを結構チェックしていて、この撮影が始まるまでに8年かかったとポストしてらっしゃったので、それだけ計画し続けてきた作品に携わらせていただけるのは嬉しかったです。少年らしさは、自分が普段生活している中で大切にしてることの一つでもあるんですけど、才蔵を演じるにあたって、より少年らしさというか、純粋で正直な感じは意識しましたね。何にも染まってないからこそ、感情を剥き出しにできるだろうし、信じる人ができてからの頑張りや、 役目を任された時の嬉しさも出てくるのではないかなと感じたので。なので、喋り方も最初はちょっと幼い感じがありますし、最初と最後では全然違うかな。才蔵はあんまり笑わないというのも意識したかもしれないですね。劇中でも2回か3回しか笑ってない気がする。修行が終わってから、ちょっと笑うところが出てきたりするだけ。才蔵の心が打ち解けていく感じとかも、そういうところで見ていただけたらなと思います」
hair&make/yuka(JOUER) styling/菅沼愛(TRON)
衣装/ベスト¥33,990(SUPPLIER) ジャケット¥22,000、パンツ¥18,700(共にmeltum/BOW INC) ネックレス¥5,720(AIVER/Sian PR) ブレスレット¥13,200(LITTLEBIG) リング¥132,000(SHINGO KUZUNO/Sian PR) その他スタイリスト私物
【問い合わせ】SUPPLIER ☎︎03-5774-7701 BOW INC ☎︎070-9199-0913 Sian PR ☎︎03-6662-5525 LITTLEBIG info@littlebig-tokyo.com
※全文はSCREEN2025年2月号に掲載
『室町無頼』
大飢饉と疫病の連鎖で混沌とする応仁の乱前夜。己の腕と才覚だけで世を渡り歩く蓮田兵衛(大泉洋)は、この暗黒時代を終わらせるべくある企てを進めていた。凄まじい武術の才能を秘めながらも絶望の中にいた才蔵(長尾謙杜)は、兵衛に見出され、六尺棒を武器に兵法者としての道を歩み始めるが、世界を変えようとする兵衛たちの前には、幕府から京の治安維持を任された武装集団の頭目・骨皮道賢(堤真一)が立ちはだかっていた。直木賞作家・垣根涼介の同名小説を、入江悠の監督・脚本で映画化。
才蔵(長尾謙杜)
天涯孤独で餓死寸前を生き延びたものの、自己流の棒術で糊口を凌ぎながら絶望の中を生きていた。凄まじい地獄の修行を経て、六尺棒を自在に操る超人的な棒術を身につける。
『室町無頼』
2025年1月17日(金)公開
日本/2025/2時間14分/配給:東映
監督・脚本:入江悠
出演:大泉洋、長尾謙杜、松本若菜 遠藤雄弥、前野朋哉、阿見201、般若、武田梨奈、水澤紳吾、岩永氶威、吉本実憂、ドンペイ、川床明日香、稲荷卓央、芹澤興人、中村蒼、矢島健一、三宅弘城、柄本明、北村一輝、堤真一
©️2016垣根涼介/新潮社 ©︎2025「室町無頼」製作委員会