イントロダクション
テレビアニメ&映画「けいおん!」で監督を務め、以降『映画 聲の形』『リズと青い鳥』やテレビアニメ「平家物語」で繊細な心情描写を紡ぎ出し、その手腕が高く評価された山田尚子監督。盟友である脚本家・吉田玲子との最新タッグ作『きみの色』では、長編映画3作目にして初となるオリジナル作品に挑戦した。
本作は、音楽を通して繋がった3人の高校生の青春物語。人が「色」で見える高校生・トツ子は、美しい色を放つ同級生きみ、音楽好きのルイとバンドを結成。友情をはぐくみながら、それぞれが抱える葛藤と向き合い、やがてライブの日を迎える——というイノセントなストーリーラインが、「ダンダダン」で話題沸騰中のアニメーションスタジオ・サイエンスSARUによる流麗で可愛らしい映像、温かみある色彩の中で躍動していく。
トツ子を1600人に及ぶオーディションから選ばれた鈴川紗由、きみを「ベイビーわるきゅーれ」シリーズでブレイクし、NHK連続テレビ小説「ばけばけ」(2025年放送)のヒロインを射止めた髙石あかり、ルイをNetflixシリーズ「First Love 初恋」で世界的にファンを獲得した木戸大聖と、フレッシュな若手のアンサンブルにも要注目。テルミンやシンセサイザーを使った劇中楽曲の数々も心地よく耳に響き、エモーションを高めてくれる。
ストーリー
人が「色」で見えるのんびり屋な高校生・トツ子。才色兼備な同級生のきみ・穏やかで音楽好きのルイと古書店で出会った彼女は、勇気を出して2人に3ピースバンド結成を提案。3人は離島の古教会でバンド練習を重ね、距離を縮めていく。そして、ほのかに色づき始める各々の心――。やがて3人のお披露目の場である学園祭ライブの日がやってくる。
登場人物
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(左から)影平ルイ、日暮トツ子、作永きみ
日暮トツ子(鈴川紗由)
全寮制の高校に通う女子高生。幼少期から自分以外の人が「色」で見える。ピアノを担当。
作永きみ(髙石あかり)
トツ子の同級生。学校を中退したことを家族に明かせず、思い悩む。ボーカルとギターを担当。
影平ルイ(木戸大聖)
母親に家業の病院を継ぐことを期待され、音楽の夢を隠す物静かな少年。テルミンとオルガンを担当。
CHECK『きみの色』を彩る「色」たち
声を演じた豪華キャストの色
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鈴川紗由、髙石あかり、木戸大聖による体温を感じられる等身大の演技に加え、各方面で活躍する面々が織りなす多彩な共演も見もの。声優の悠木碧、寿美菜子、お笑い芸人のやす子がそれぞれトツ子のルームメイトを演じ、戸田恵子がきみの祖母、そして『正欲』『違国日記』で新境地を拓いた新垣結衣が、トツ子たちを見守る学校のシスターに扮する。
物語を奏でる音楽の色
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音楽・音楽監督を手掛けるのは、山田監督作品や「チェンソーマン」「ダンダダン」「チ。-地球の運動について-」と人気作に引っ張りだこの牛尾憲輔。穏やかながら遊び心を感じられる劇伴で、シーンに花を添える。さらに、主題歌「in the pocket」をMr.Childrenが書き下ろした。ボーカルの桜井和寿は「主人公たちには その繊細さのまま、その柔さのまま、しなやかに強く飛び立って欲しい」とコメント。
豪華スタッフの色
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脚本・吉田玲子、音楽・牛尾憲輔に加え、「進撃の巨人」The Final Seasonや『ルックバック』の小島崇史がキャラクターデザインと作画監督を担当。また、キャラクターデザイン原案を三月のパンタシアやSixTONESとのコラボレーションで知られるダイスケリチャードが務めた。各々の作家性=色が過不足なく発揮され、画面の中で輝いている。企画・プロデュースは『すずめの戸締まり』のSTORY inc.。
山田尚子監督の描く色
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セリフや表情に頼ることなく、キャラクターの心情とその微細な変化を構図やアングル、色彩のトーンや温度、質感、そして音楽等を使い分けながら画面全体で掬い取ってきた山田監督。時に人物の足元だけを映して孤独や不安を表し、かと思えば高揚感で舞い踊るシーンは画面全体を跳ねるように演出するなど、登場人物に徹底的に寄り添う“優しさ”が画面の隅々から感じられる。