イントロダクション
まもなくアメリカ合衆国大統領に返り咲くドナルド・トランプは「世界一ヤバイ大統領」「モンスター大統領」などと呼ばれる前には、一体どんな人物だったのか。成功を夢見る20代の青年だったトランプが、伝説の凄腕弁護士に導かれ、劇的な変身を見せてトップに成りあがるが、“師匠”の予想を超えて次元の違うモンスターになっていく道のりを、カンヌ国際映画祭のある視点部門グランプリ受賞作『ボーダー 二つの世界』のアリ・アッバシ監督が描く問題作。脚本は作家でもあるガブリエル・シャーマンが担当。
若きドナルド・トランプを演じるのは「キャプテン・アメリカ」シリーズのウィンター・ソルジャーことバッキー・バーンズ役で知られるセバスチャン・スタン。彼の師匠となる弁護士ロイ・コーンに扮するのは『アルマゲドン・タイム ある日々の肖像』のジェレミー・ストロング。2人は本作で第82回ゴールデングローブ賞でそれぞれドラマ部門の主演男優賞、助演男優賞候補に選ばれている。またトランプの最初の夫人になるイヴァナを『続・ボラット 栄光ナル国家だったカザフスタンのためのアメリカ貢ぎ物計画』のマリア・バカローヴァが、父フレッドを『TENET テネット』のマーティン・ドノヴァンが演じている。
ストーリー
まだ20代の青年だったドナルド・トランプ(スタン)は政財界の有力者が集まる高級クラブの最年少会員になり、そこで大物ばかりを顧客に持つ悪名高い辣腕弁護士のロイ・コーン(ストロング)に声をかけられ、運命が変わる。その頃父が営む不動産会社の副社長だったドナルドだが、独裁的な父は黒人の入居を断り、全米黒人協会から訴えられてた。「このままでは破産する」という危機感を持っていたドナルドはロイに弁護してほしいと懇願し、彼を気に入ったロイは「自分の言うことに100%従う」という条件で弁護を請け負う。ドナルドはロイから「勝利への3つのルール」も叩き込まれ、相手に対し劣勢だった裁判も裏の手口を使って、訴訟を取り下げろと脅迫。汚いやり方で勝ちを奪ったロイのやり方にショックを受けるドナルドに、“師匠”は「大切なのは勝つことだけ」と言い放つ。
ロイのドナルドへの「教育」はさらに突き進み、洗練された人物に変身していくドナルドは、父からも自立し、NY42丁目のぼろホテルを買い取って超高級ホテルに変えるなど、大事業を次々成し遂げる。だが成功を重ねるうちに、ドナルドはロイの予想を超えるとんでもない怪物に変貌。“師弟関係”も歪み始めていくのだった。
ロイ・コーンによる勝利の3つのルール
ルール1「攻撃、攻撃、攻撃」
ルール2「絶対に非を認めるな」
ルール3「自分の勝利を主張し続けろ」
ゴールデングローブ賞(ドラマ部門)ノミネートの“師弟コンビ”
ドナルド・トランプ (セバスチャン・スタン・主演男優賞候補)
最初はナイーブなお坊ちゃまタイプだったものの、ロイ・コーンとの運命の出会いによって、「どんな手段を使っても勝つことがすべて」というタイプの実業家に変貌していく。
セバスチャン・スタン コメント
「誰もが知る有名人を演じることはもちろん怖い。でもやってみたいという気持ちは抑えられなかった。怖いのは意欲の裏返しと思うことにして、どっちにしろこの役を演じる運命にあるなら、この冒険がどうなるか見てやろうと考えた。僕はアリ(アッバシ監督)をアーティストとして敬愛しているからこの映画で彼が描こうとするものを信じた。彼は具体的に参考にすべき映画として『バリー・リンドン』『真夜中のカーボーイ』『ブギーナイツ』と作品名を挙げてくれたので、演じるキャラクターがどこへ向かうかイメージできた。ネットで探して70~80年代のトランプのインタビューや記事は全部読んだよ。いかにも彼らしいという言葉も、今の彼から想像しにくい言葉もあった。実在人物を演じる上で絶対外せないテクニックは、常に対象に没入すること。いつでもトランプを見て、話を聞き、映像を繰り返し見た。僕にとって対象人物の動作を自分の血肉にする術は他にないんだ」
ロイ・コーン (ジェレミー・ストロング・助演男優賞候補)
米大統領も顧客に持つ超やり手弁護士。ドナルドを気に入り自分の“弟子”のように常に勝利する方法を伝授していくが、やがて弟子は思いもよらないモンスターになってしまう。
ジェレミー・ストロング コメント
「アリ(監督)がこの企画を進めていると聞いて驚くと同時に、ロイを演じるのは挑戦し甲斐があると思った。緻密なリサーチを重ねたガブリエル(シャーマン)の脚本は実に巧妙かつ的確で、活力があった。ロイはドナルドのことを好んで“親友”と言っていたらしいね。情け容赦ない人物と思われ、実際にそうだったロイの人生はいつも満たされることがなくて、自己嫌悪と同性愛者という負い目の裏返しの心理が、彼を権力の掌握に邁進させたんじゃないかな。複雑な人物だけど、誰もと同じくやはり愛されたかったのでは?最後には失ってしまうけど、やっと愛の対象をドナルドとの関係に見つけたという気がする。ロイが登場する作品はこれまでもあって、(ストロングが尊敬する)アル・パチーノもドラマ『エンジェルス・イン・アメリカ』でロイを演じ、それも素晴らしかったけど、僕自身はたくさんリサーチをして得た要素を直感的に組み合わせてロイを演じたんだ」
『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』
2025年1月17日(金)公開
アメリカ/2024/2時間3分/配給:キノフィルムズ
監督:アリ・アッバシ
出演:セバスチャン・スタン、ジェレミー・ストロング、マリア・バカローヴァ、マーティン・ドノヴァン
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