映画『サンセット・サンライズ』公開初⽇舞台挨拶レポート
本作のイベントで、菅⽥将暉、井上真央、中村雅俊が顔を揃えるのは今回が初めて。菅⽥は「現場で中村さんと最初にお芝居したのが、僕(晋作)が家を借りることになって、電話がかかってきて、電話に出たら遠くに中村さんと井上さんが双眼鏡を持ちながらこっちを⾒ているというシーンでした。現場でも本当に遠くに(中村さんが)⾒えたんですけど、(指と指を狭むポーズをしながら)こんなんで(笑)。<⼩っちゃい中村さん>を覚えています」と懐かしそうに述懐。この⾔葉に中村も「俺も<⼩っちゃい菅⽥くん>を覚えてます(笑)。その時、菅⽥くんを初めて⾒ました。それまで会ったこともないので『これが菅⽥か…』と思って⾒ていました」と初共演を振り返る。
井上は“⽗”中村について「いつもシュッとされているので、(役柄の⾐装の)腹巻とか、ももひきをつけている姿が想像できなかったんですけど、いざ現場に現われるとすごく似合ってらっしゃって(笑)。でも⽅⾔については雅俊さんはネイティブなはずなのに、すごく現場で練習されていて…」と現場での様⼦について明かす。
宮城県出⾝の中村は「俺ね、ネイティブの宮城弁をしゃべれると思ったら、意外と難しいんですよ(苦笑)。俺は⼥川で、(本作の舞台の)気仙沼とはビミョーに違っていて結構、練習しました。⾃分で⾔ってて『あれ︖ これネイティブじゃないな…』と思いながら」と苦笑交じりに語った。さらに中村は「最初の問題は『俺が漁師に⾒えない』というところから始まって…」と振り返ったが、岸監督は「ご協⼒いただいた漁師さんたちになじんでいただいて、⿂のさばき⽅とかを⼀緒にやっていくうちにどんどん漁師に⾒えてきました」と称賛を送る。
宮藤の脚本は、様々な⼩ネタが満載だが、菅⽥は「そういうの(=⼩ネタ)がいっぱいで、冒頭のアニエスベー(※釣りのエサのイソメが『アニエスベーのロゴに⾒える』というギャグ)に始まり…これ、どうやって撮るんだろう︖って思っていたら、すごく⼤変だったみたいです、現場で(笑)」と指摘。宮藤は「アオイソメがアニエスベーに⾒えるなって、前から思ってたんです(笑)。どうやって撮るんだろうと思っていましたけど、(完成した映画を)⾒たら完璧」と製作陣を称賛。岸監督は「実は、CGですごく⼤変だったんです(苦笑)。イソメの⼝が開いてエイリアンみたいになるところまで想定したんですけど、流⽯にそこまではお⾦がなかったです」と明かし、菅⽥も「CG部の⼈も発注が来た時、ビックリしたでしょうね。(気仙沼の描写の)⼤⾃然がリアルで<イソメがCG>って変な話ですね(笑)」と楽しそうに笑みを浮かべていた。
井上は、宮藤の脚本について「コメディ要素だけでなく、宮藤さんが描く、さみしさ、モヤモヤした気持ちがふっとにじみ出る瞬間、(⾃⾝が演じた)百⾹の最初の『キレイ…』というひと⾔もそうですけど、⾒ている⼈に託す感じがすごく好きです」と語り、三宅も「笑いも⼤好きですけど、⾏間を感じられる脚本だったので、『泣く』とか意識せずとも、気づいたら宮藤さんのセリフで気持ちを持っていかれることが多々ありました」と明かす。宮藤は、“モモちゃんの幸せを祈る会”のメンバーのタケを演じた三宅の現地への溶け込みっぷりも絶賛︕「現場でお会いした時、⾦髪で真ん中がちょっと⿊くなってる⼈がいて『絶対に地元の⽅だ…。地元の暴⾛族が来ちゃったんだな』と思ったら本物の三宅さんでした(笑)。すごくハマっていてビックリしました」と明かし、会場は笑いに包まれていた。
また、中村もデビューから半世紀以上を経て、地元・宮城県で撮影され、初めて宮城弁のセリフをしゃべることになった本作への特別な思いを⼝にする。さらに、共に演じるシーンはなかったものの、かつて中村の付き⼈を務めていた⼩⽇向⽂世と、初めて同じ作品へ出演したそうで「エンドロールで、名前が並んで出てくるのは初めて。特別な思いでした。すごく嬉しくて、最後のタイトルを⾒た時『あぁ、⼩⽇向と俺が映ってる…』と」と感慨深げに語り、会場は温かい拍⼿に包まれた。
すると菅⽥が「⼩⽇向さんが中村さんに『つなぎを借りパクされた』と楽しそうに話してました」と⼩⽇向から聞かされたという“疑惑”について切り出す。真相を尋ねると中村は「もう40何年前の話(笑)。あいつが、デカいつなぎを着てて、それがすごく良いんですよ。『⼩⽇向、それちょっと貸してよ』って⾔って、そのまま何かの番組に出て、返さずにいたら何⼗年も経っていて。『雅俊さん、あれ、どうしました︖』って聞くから『あんなのどこ⾏ったか知らねぇよ』って⾔ったら『ひどい︕』って(笑)」と明かし、再び会場は笑いに包まれていた。
また劇中、中村と菅⽥が2 ⼈で朝焼けの中で歌う感動的なシーンもあるが、菅⽥は「気持ちよかったですねぇ。朝の気仙沼の⽔平線がキレイで…」としみじみと語り、中村も「感激するほど素晴らしい景⾊でいい感じでした」とうなずいていた。
笑いの絶えない撮影現場だったことがキャスト陣のトークからも伝わってきた本イベント。続いて2025年の“初笑い”エピソードを尋ねられると、三宅は、⾃⾝の初笑いとして、本作のライブ配信イベントでの井上のある振る舞いについて⾔及。「おそらくYouTubeの⽣配信を井上さんはやったことないからご存じなくて、僕が、配信にコメントを寄せてくれる⼈たちのコメントを⾃分の携帯で⾒ていたんですけど、僕のスマホを取って『私が撮ってあげる』って⾔い出して…(笑)。『この⼈、本当に天然なんだな』って笑っちゃいました。とてもかわいらしい⼈だなと思いました」と井上の天然でキュートな⼀⾯を明かしてくれた。
舞台挨拶の最後に岸監督は「現場も本当に笑いがたくさんあふれていて、楽しい撮影が終わりまして、なんとか現場で感じた笑いを映画として完成させたいなと思いました。今⽇、楽しんでいただけたら本望です」と観客に語りかけ、菅⽥は「みなさんのおかげで公開できて、こうして舞台挨拶ができて嬉しいです」と感謝の思いを⼝に。そして「(この映画を⾒て)晋作のように、いろんなところに旅に⾏くきっかけになったり、『おいしいものが⾷べたいな』と気仙沼や東北の地に⾜を運んでいただけると嬉しいです。あとは、どうかみなさま、今年も⼀年、健康でがんばっていきましょう︕」と呼びかけ、温かい拍⼿の中で舞台挨拶は幕を閉じた。
『サンセット・サンライズ』
全国公開中︕
出演:菅⽥将暉
井上真央
⽵原ピストル ⼭本浩司 好井まさお 藤間爽⼦ 茅島みずき
⽩川和⼦ ビートきよし 半海⼀晃 宮崎吐夢 少路勇介 松尾貴史
三宅健 池脇千鶴 ⼩⽇向⽂世/中村雅俊
脚本:宮藤官九郎
監督:岸善幸
原作:楡周平『サンセット・サンライズ』(講談社⽂庫)
配給︓ワーナー・ブラザース映画
Ⓒ楡周平/講談社 Ⓒ2024「サンセット・サンライズ」製作委員会