ロサンゼルスの大火災の影響で発表が1月23日まで延期された第97回アカデミー賞のノミネーションですが、待望のノミネートを果たした近日日本公開作をクローズアップします。今回はオリンピック開催中に歴史的テロ事件に出くわしたTVクルーたちが敢行した緊迫の生中継の状況を描くことで、現代に通じる問題を提議し、脚本賞にノミネートされた『セプテンバー5』を紹介。(文・米崎明宏/デジタル編集・スクリーン編集部)

緊迫の生中継を実行したTVクルーを演じた俳優たちのコメント

ピーター・サースガード(ルーン・アーレッジ役)

画像: ピーター・サースガード(ルーン・アーレッジ役)

ルーン・アーレッジ

ABCスポーツ社長、テレビ界の伝説的な人物

「この映画は現在のジャーナリズムや出来事の捉え方、誰が物語を語るのか、主観が幻想であるというテーマについても語っている。今や多くの小型カメラが事象を記録し、それが真実全体のように感じてしまう。一つの出来事をめぐって無数の視点が存在する中で、公平な物語を伝えようとする者がいないのが現状だ」

ベン・チャップリン(マーヴィン・ベイダー役)

画像: ベン・チャップリン(マーヴィン・ベイダー役)

マーヴィン・ベイダー

良心、道徳、倫理の問題に取り組むABCスポーツの運営責任者

「中継を世界中の多くの人が目撃したことはもはや取り消せない。テクノロジーが予期せぬ副作用などをどう軽減するか、また現実世界に及ぼす影響について我々の理解を越えて進んでいる点で、私たちは同じような瞬間にいると言える。だからこそ今こそ直面すべき問題を提議するこの映画は非常に重要なんだ」

レオニー・ベネシュ(マリアンネ・ゲブハルト役)

画像: レオニー・ベネシュ(マリアンネ・ゲブハルト役)

マリアンネ・ゲブハルト

現場に居合わせ重要な役を担うドイツ人通訳者

「この映画はテロ事件そのものを描くのではなく、生中継の報道についての疑問を扱っていて、それが私には魅力的だった。なぜならここで提議された全ての問題、例えば報道する価値のある情報とは何か?などといったことは今も変わらず、もしかして今の方がさらに切実に感じられることだから」

ジョン・マガロ(ジェフリー・メイソン役)

画像: ジョン・マガロ(ジェフリー・メイソン役)

ジェフリー・メイソン

現場を仕切るコーディネートプロデューサー

「アクションに満ちていて退屈な瞬間がなく、立体的なキャラが描かれている脚本だった。ジェフリーというキャラクターが直面する決断、恩師を裏切って視聴率を追求するのか、それとも伝説的な人物であるルーンと手を組むのか──そのすべてが私を引き付け、是非この作品に参加させてほしいと電話したんだ」

ティム・フェールバウム監督からのメッセージ

画像: ティム・フェールバウム監督からのメッセージ

1972年のミュンヘンオリンピック襲撃事件は政治的に重大な意味を持つ悲劇でした。この日の生中継はメディア報道における画期的な転換点となり、こうした事件が一般の人にどう見られ、理解されるかに新しい視点をもたらしました。米国のスポーツ番組チームが突如、テロ発生後22時間の生放送を担当することになり、私はこの前例のない状況に強い関心を持ちました。こうした出来事が生中継で扱われたのはこれが初めてだったからです。

この映画では1972年9月5日の出来事を純粋にABCスタジオのスポーツレポーターの視点から描いています。この視点を取ることでジャーナリズムの転換点となったこの瞬間と、その影響力を持つ遺産に光を当てることができると考えました。今日のメディア環境とそれを支えるテクノロジーは、24時間365日という速報のサイクルに対する私たちの欲求と共に、絶えず進化し続けています。私たちは危機報道の責任と影響、その消費に関する倫理的な問題を提議しようとしていて、これらの問題は当時と同様に、現在も非常に重要なのです。

『セプテンバー5』
2025年2月14日(金)公開
ドイツ、アメリカ/2024/1時間35分/配給:東和ピクチャーズ
監督:ティム・フェールバウム
出演:ジョン・マガロ、ピーター・サースガード、レオニー・ベネシュ、ベン・チャップリン

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