オリンピック史上最悪のテロ事件が発生！メディアの在り方を問う衝撃の問題作
今回の第82回ゴールデングローブ賞では、ドラマ部門作品賞にノミネートされ、第97回アカデミー賞では脚本賞にノミネートされた問題作。いまから半世紀以上前の1972年9月5日、ミュンヘン・オリンピック開催中に起きたパレスチナ武装集団「黒い九月」によるイスラエル選手団人質事件を生中継することになったアメリカのTVクルーたちの視点から、刻一刻と事態が変わっていく事件の発生から終結までを、当時の実映像も入れ込みながら描く緊迫のドラマで、監督・脚本（共同）は新鋭ティム・フェールバウムが担当。世界中で9億人が見たとされる歴史的なテレビ中継のバックヤードで何が起きていたのか。知られざるテレビマンたちの奮闘と共に、彼らが直面した圧倒的な緊迫感、そして70年代当時はまだ考えられていなかった報道に関する責任なども描き出す。出演には『パスト ライブス／再会』のジョン・マガロ、『ニュースの天才』のピーター・サースガード、『ありふれた教室』のレオニー・ベネシュ、『スノーデン』のベン・チャップリンらが顔をそろえる。
STORY オリンピックの選手村でその大事件は静かに始まった…
1972年、当時の西ドイツ、ミュンヘンで行われていたオリンピックを生中継していた米ABCのスポーツ担当テレビクルーたち。9月5日、1日の競技が終わり、コントロールルームで前の中継班と次の当番となる班が入れ替わりをしようとしていた深夜、選手村で何か異変が起きていることに気づいた者は多くなかった。しかし不穏な銃声が響いたという情報は大事件の幕開けだった。その時起きていたのはパレスチナの武装集団「黒い九月」が選手村に侵入し、イスラエル選手団を人質に取るという平和の祭典を舞台にしてのテロ行為だった。これを知った駆け出しプロデューサーのジェフリー（マガロ）は、上司のマーヴィン（チャップリン）、重役のルーン（サースガード）らと協議の上、専門はスポーツ報道ながら一気に国際政治の報道に番組内容を変更。当時最新技術だった衛星中継を通じて、衝撃のリアルタイム放送を世界中に届けることになる。
オリンピック競技は通常通り進行される中、展開される救出作戦など緊迫の状況をそのまま報じるうちに、ジェフリーは、この放送を犯人たちも見ているのではないかということに気づくが……。
基礎知識
世界的に知られたテロ集団「黒い九月」とは?
1970年代前半、数々のテロ事件を起こしたことで知られるパレスチナの過激派組織。元々ヨルダンで活動していたパレスチナ解放機構（PLO）が、その過激さに手を焼いたフセイン国王により、ヨルダン内戦（黒い九月事件）で武力追放され、拠点をレバノンのベイルートに移し、結成した秘密テロ組織の名称。ミュンヘン・オリンピックで起こした事件により世界的に知られるようになった。このテロ行為によりイスラエル諜報特務庁は報復として、黒い九月のメンバーの多くを暗殺した（この報復作戦はスティーヴン・スピルバーグ監督の2005年の映画『ミュンヘン』に詳しい）。
平和の祭典を震わせた「パレスチナ選手団人質事件」
1972年9月5日に、開催中のミュンヘン・オリンピックで起きたテロ事件。パレスチナ武装組織「黒い九月」の8人がイスラエル選手たちが宿泊する選手村を襲撃。2名を殺害、9名を人質に籠城し、イスラエルに拘束されている同胞たちの解放を要求。これは米ABCのクルーによって世界中に生中継された。しかし交渉は決裂。テロリストと人質は空港に移動し、海外逃亡を図ったが、西ドイツ警察による救出作戦が決行したところ、事態が悪化し惨劇となる。その後、大会中止を求めるデモも行われたが、IOC会長指示によりオリンピック競技は続行となった。
『セプテンバー５』
2025年2月14日（金）公開
ドイツ、アメリカ／2024／1時間35分／配給：東和ピクチャーズ
監督：ティム・フェールバウム
出演：ジョン・マガロ、ピーター・サースガード、レオニー・ベネシュ、ベン・チャップリン
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