ロサンゼルスの大火災の影響で発表が1月23日まで延期された第97回アカデミー賞のノミネーションですが、ノミネートを有力視されていた作品をクローズアップします。今回は『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』を紹介。(文・米崎明宏/デジタル編集・スクリーン編集部)

二人のアカデミー賞受賞女優によるベネチア国際映画祭金獅子賞受賞作

画像: 二人のアカデミー賞受賞女優によるベネチア国際映画祭金獅子賞受賞作

末期ガンに冒され安楽死を望む初老の女性と、彼女の最期に寄り添い数日間を共に過ごして看取ってあげる同年代の親友……。

『フィクサー』でアカデミー助演女優賞受賞を受賞したティルダ・スウィントンと、『アリスのままで』で同主演女優賞受賞のジュリアン・ムーアが共演したヒューマンドラマ。脇を固めるのは『THE BATMAN−ザ・バットマン−』のジョン・タートゥーロ、『クレイヴン・ザ・ハンター』のアレッサンドラ・ニヴォラら。『オール・アバウト・マイ・マザー』でアカデミー賞外国語映画賞、『トーク・トゥ・ハー』でアカデミー賞脚本賞受賞のスペインの名匠ペドロ・アルモドヴァル監督(『パラレル・マザーズ』)の初の長編英語作品でアルモドヴァルは脚本も担当している。

昨年のベネチア国際映画祭では最高賞の金獅子賞に輝いており、第82回ゴールデングローブ賞ではティルダ・スウィントンがドラマ部門の主演女優賞候補になった。

STORY

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戦場ジャーナリストだったマーサ(スウィントン)は末期ガンに冒されている。かつて同じ雑誌社の同僚で親友だった小説家のイングリッド(ムーア)は長年疎遠だったが、共通の知人からそのことを知ると入院しているマーサを訪れ、会っていなかった時間を埋めるかのように病室で語らい続け、マーサが眠っている時も傍に居続ける。

治療を拒み自ら安楽死を望むマーサは、最期の時に人の気配を感じていたいと、イングリッドに“その日”に隣の部屋にいて欲しいと頼む。悩んだ末にマーサの最期に寄り添うことを決意したイングリッドは、森の中に小さな家を借りたマーサに同行し、二人だけの数日間の静かな暮らしが始まった。マーサはイングリッドに告げる。「ドアを開けて寝るけれど、もしドアが閉まっていたら私はもうこの世にはいない」と−。

登場人物紹介

マーサ(ティルダ・スウィントン)

画像: マーサ(ティルダ・スウィントン)

戦場ジャーナリストとして何度も死地に赴いた初老の女性。若い頃はニューヨークの「ペーパー・マガジン」誌の編集部で働いていた。現在は末期ガンのため入院中で、密かに自宅療養期間中の安楽死を望んでいる。

イングリッド(ジュリアン・ムーア)

画像: イングリッド(ジュリアン・ムーア)

「ペーパー・マガジン」誌時代のマーサの同僚で、現在は小説家。彼女は最近、死に対する恐怖を題材にした新作を出版したが、そのサイン会で共通の友人からマーサの病気のことを知り、病院へ見舞いに行く。

CHECK アルモドヴァル監督のコメント

画像: ジュリアンとティルダに囲まれたアルモドヴァル監督 Photo by Getty Images

ジュリアンとティルダに囲まれたアルモドヴァル監督
Photo by Getty Images

『ザ・ルーム・ネクスト・ドア 』は、とても親密でかつ普通では考えらない状況において旧交を温める物語である。友人同士の一人であるマーサは死が近づいており、他方のイングリッドは、当人の決断を尊重し、死を理解し受け入れるようになっていく。そして結局のところ、死は絶対的な終焉ではないということを学ぶ。人は完全に死ぬことはないのだ。無神論者である私の世界観から、生まれ変わりの可能性、あるいは暗闇を超越した何かが“その先”にある可能性を本作には忍ばせている。末期ガンに冒されたマーサは、(文字通りでも超常的でもなく)友人のイングリッドのなかで生まれ変わるのだ。

『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』
2025年1月31日(金)公開
スペイン/2024/1時間47分/配給:ワーナー・ブラザース映画
監督:ペドロ・アルモドヴァル
出演:ティルダ・スウィントン、ジュリアン・ムーア、ジョン・タートゥーロ、アレッサンドロ・ニヴォラ

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