『ミッドナイトスワン』や『サイレントラブ』などで、生きづらさを抱えながらも愛に触れ、懸命に生きる人々の姿を描いてきた内田英治監督による、心震わす静謐な愛の物語『誰よりもつよく抱きしめて』。本作で久保史緒里と共に主演を務める三山凌輝は、俳優、また、BE:FIRSTのRYOKIとして、アーティストとしても大活躍しているが、彼ならではの表現力は映画にも大いに生かされている。そんな三山に、この映画への想いや、撮影の裏側などについて語ってもらった。(文・清水久美子/写真・奥田耕平(THE96)/ヘアメイク・西村裕司/スタイリスト・田中香菜/デジタル編集・スクリーン編集部)
衣装協力/ジャケット¥66000、中に着たセーター¥33000/ヒステリックグラマー(☎︎03-3478-8471) パンツ、シューズ/スタイリスト私物 その他/本人私物

三山凌輝 プロフィール

1999年4月26日生まれ、愛知県出身。俳優であり、BE:FIRSTのメンバー・RYOKIとしても活躍。近年の主な出演作に、ドラマ「往生際の意味を知れ!」(23)、「生理のおじさんとその娘」(23)、「虎に翼」(24)などがある。

すごく切ないですが、本作のテーマが泣くシーンによく出ていると思います。泣くシーンの撮影は、ギリギリまでずっと常に集中している感じでしたね。

画像: すごく切ないですが、本作のテーマが泣くシーンによく出ていると思います。泣くシーンの撮影は、ギリギリまでずっと常に集中している感じでしたね。

──2024年は、NHK連続テレビ小説「虎に翼」での演技が絶賛され、若手俳優の中でも演技力が高いと評判です。すでに俳優として、さまざまな作品に挑戦してきたかと思いますが、『誰よりもつよく抱きしめて』の水島良城は、ご自身とは正反対の役柄ですよね。最初に脚本を読んだ時、良城をどのような人物だと思いましたか?

「みなさんによく言われるんですが、僕はすごく明るいイメージですよね。逆に良城はすごくネガティヴで、表面的な部分で言うと正反対に思えるかもしれないんですが、脚本を読んで、良城と向き合った時に思ったのは、やっぱり人間って感じるものは同じなんだなと。僕もネガティブになることもたくさんありますし、良城の感情を自分に落とし込んだ時に、共感とか共鳴できる部分がたくさんあったんですね。なので、それをしっかりと深掘りしていって、僕なりの良城を演じることにしました」

──良城は、強迫性障害による潔癖症に苦しんでいますが、こういった題材の作品に出演することについては、どう思いましたか?

「僕に、こういう役をやらせてもらえるんだということが、率直にうれしかったです。役者としての幅が広がるのは間違いないですし。強迫性障害による潔癖症を扱っていますが、この映画では他人が理解しようにもできないものを極限に描いていて、分かり合おうとするけど分かり合えない、でも分かり合おうと努力して、どう生きていくのかということが題材になっていると思いました。この作品に、役者としてどのように貢献できるのかを考えて撮影に臨みました」

──内田監督の演出はいかがでしたか? 三山さんには、割と自由に演じるように、お任せされたとお聞きしました。

「そうですね。基本的に1回テストでやってみる際に、僕が感覚でやってみると、意外とそのまま『じゃあ、それで行こうか』ってなることが多かったですね。でも、強迫性障害による潔癖症を表現する演技については、その場その場で監督と話し合いながら演じました。ここはあえて、ちょっと抑えて演じてみようとか、月ちゃん(久保が演じる月菜)に触ろうとする瞬間などは、ビビらずに手をさし出そうとするけれど、やっぱり無理だったという動きを調整したり、祖父から詰め寄られてパニックになってしまうような、緊迫した状況では、どんな動作をするのかなど、動きの強弱を含めて、その都度、監督と話し合って進めていきました」

──細かい調整をされたのですね。

「良城の心理的な面では、シーンごとの流れやつながりなど、監督と相談して、細かく調整したりしましたが、結構スムーズに撮っていく感じもしましたね。内田監督は決断も早く、『こうするのはどうですかね?』という相談や提案にも、『分かりました』とすぐに応じてくださったので」

──本作では、感情を露わにするシーンが割と多いですよね。泣くシーンもありましたが、撮影は大変でしたか?

「役とリンクしてくると、感情も自然と同じになって、良城の情けない気持ちや、抱えていたもの、張り詰めていたものが切れたと同時に、男らしさなんてものはなくなって、ただただクシャクシャになって泣いたんです。この映画は、恋人同士が分かり合いたいのに分かり合えない、通じ合えないみたいなものを表現しているので、良城も泣いているけど、月ちゃんも彼の知らないところで1人で泣いている。すごく切ないですが、本作のテーマが泣くシーンによく出ていると思います。泣くシーンの撮影は、ギリギリまでずっと常に集中している感じでしたね」

※全文はSCREEN2025年3月号に掲載

『誰よりもつよく抱きしめて』

画像1: 『誰よりもつよく抱きしめて』

『ミッドナイトスワン』(20)、『サイレントラブ』(24)の内田英治監督が、新堂冬樹が2005年に発表した同名小説を映画化。愛しているのに、触れ合うことができない男女の葛藤を描く。海沿いの街で同棲する、絵本作家の水島良城と書店員の桐本月菜。二人は仲の良い同棲カップルだが、心の奥では互いにもどかしい思いを抱えて過ごしている。テーブルから家電まで、家の中に張り巡らされたラップ。それは良城が強迫性障害による潔癖症に苦しんでいるが故だった。直接物に触れられない彼は、常にビニール手袋を装着し、月菜と手を繋ぐことすらできないのだ。二人がそれぞれに苦しみを抱える日々の中、月菜の書店を韓国人の青年イ・ジェホンが訪れたことと、良城が勇気を出して受診した心療内科で同じ症状に悩む千春に出会ったことで、良城と月菜の関係が揺れ始める。やがて、二人の間の溝はどんどん深くなっていき……。

画像2: 『誰よりもつよく抱きしめて』

水島良城(三山凌輝)

高校生の時に絵本作家としてデビュー。処女作「空をしらないモジャ」の続編に取り掛かるも、なかなか筆が進まないでいる。恋人の桐本月菜と同棲を始めるが、コロナ禍をきっかけに強迫性障害からくる潔癖症に苦しむことになり、月菜にさえ触れられなくなる。

『誰よりもつよく抱きしめて』
2025年2月7日(金)公開
日本/2025/2時間4分/配給:アークエンタテインメント
監督:内田英治 脚本:イ・ナウォン 原作:新堂冬樹
出演:三山凌輝、久保史緒里(乃木坂46)、ファン・チャンソン(2PM)、穂志もえか、永⽥凜、北村有起哉、北島岬、竹下優名、酒向芳

©2025「誰よりもつよく抱きしめて」HIAN /アークエンタテインメント

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