── 本作の台本を読んだときの感想からお聞かせいただけますか。
吉野「登場人物が多く、それぞれのエピソードが描かれていたのですごく読み応えのある台本だなと思いました。全く展開が読めず、“もしかしたら池永が序列を作ったのか?”と疑いましたし、真相が明かされるまでドキドキが続くところもおもしろかったです」
松井「生徒24人全員にいろんな背景があって、遺書を公開するたびにそれぞれのエピソードが明かされていくところがおもしろいなと思いました。キャラが濃くてヤバい一面を持っている生徒が多いのも衝撃でしたし、“これが映像になったらどうなるんだろう?”と、撮影がすごく楽しみでした。それと同時に、僕が演じた赤﨑は途中から豹変するので、クランクインの日はものすごく緊張しました」
── クランクイン初日はどのようなシーンの撮影だったのでしょうか。
松井「映画では赤﨑宛の遺書が最初に公開されますが、初日にこのシーンの撮影だったので緊張感がハンパなかったです。今回初めて単独で映画に出演させていただいたので、右も左もわからない状態で。でも、教室のセットに入った瞬間に“ちょっと薄暗くしてあるんだな”と、作品の世界観を照明部や美術部などたくさんのスタッフさんが作り上げていることにすごくワクワクして、緊張しつつも気持ちが高まったのを覚えています」
吉野「僕は毎回クランクインの前日はあれこれ考え込んでしまって、少し睡眠不足の状態で挑むの、初日の撮影が終わるとどっと疲れが出るタイプで(笑)。特に今回は遺書を公開するという重いシーンを、緊張感が漂うなか集中して撮影していたので、初日の疲労感はすごかったです」
── 今回お二人は初共演となりますが、ご一緒する前はお互いにどんなイメージを抱いていたのでしょうか。
松井「北人くんは生まれながらのイケメンスターというイメージがあったので、実際に会ったらどんな人なんだろうと思っていたんです。そしたら撮影初日からフランクに話しかけてくれたのでホッとして。すごくチャーミングでのほほんとしていて、たまにボケたりふざけたりする楽しい方だなと。それに気分が落ち込んでいるときには気遣って声をかけてくれたので、優しい人柄にもグッときました」
吉野「褒められるとなんだか照れますね(笑)。僕も奏のことをキラキラしたアイドルだと思っていて、実際に会ったらアイドルのオーラを放っていたのでイメージ通りでしたし、背が高くてかっこいいなと思いました。奏も僕もグループで活動しているので、共通点をきっかけに話し始めたらすぐに仲良くなって。一緒にいると楽しい人だなと思いました」
── 現場で一緒にお芝居をされてみて刺激になったことがあれば教えていただけますか。
吉野「まず台本を読んだ時に、赤﨑は誰からも憧れられるような人物なのに、物語の途中からクラスみんなの前で豹変するので、この役を演じる俳優さんは大変だろうなという印象を受けたんです。そんな難易度の高い役を奏が見事に表現しているのを見て、純粋にすごいなと思いました。赤﨑が感情
をむき出しにするシーンでは、奏のお芝居で現場の空気が一瞬で変わったので、驚いたのを覚えています」
松井「僕も北人くんのお芝居に圧倒されました。池永は割と内気でおとなしいタイプの人で、感情をさらけだすことがほとんどないんです。それなのに、池永の思いがしっかりと伝わるし、池永が芯を食ったことを言う場面も説得力があって胸にズシっと響いたというか。そんな北人くんを間近で見て、“自分にはこんなお芝居できないな”“すごいな”と思いました」
── お二人はどのように仲を深めていかれたのでしょうか。
吉野「お芝居の話よりもお互いのアーティスト活動やプライベートの話をすることが多かったよね」
松井「うん。最初は『今日の夜はご飯何食べるの?』みたいなたわいない会話をきっかけにどんどん打ち解けていったね。先ほど僕が落ち込んだときに北人くんが声をかけてくれた話をしましたが、実は撮影期間中にちょうどIMP.のライブがあって、声をかけてもらったのはその翌日なんです」
吉野「あのときの奏、あからさまに表情に出ていたからね」
松井「あからさまに出てたんだ(笑)。あの日、ちょっと暗い顔をしていたら北人くんが『大丈夫?』って言ってくれて」
吉野「僕も同じような経験があるからわかるんです。IMP .として東京ドームのステージに立ってキラキラしたパフォーマンスをした翌日に、教室のセットの中でクラスの誰かが遺書を読むという重いシーンの撮影だったから、それはギャップを感じてしまうだろうなと。それで声をかけたらいろいろ話してくれたんだよね」
松井「あのとき僕の気持ちをすぐにわかってくれたことがうれしかったですし、『外の空気でも吸いに行こう』と誘ってくれて少し散歩したりして。本当にありがたかった」
── ちなみに吉野さんは俳優業とアーティスト活動のお仕事が重なったときはどのように気持ちを切り替えていますか?
吉野「そのときに演じている役や作品に気持ちが引っ張られることはありますけど、THE RAMPAGEでのお仕事の現場へ行くとメンバーがいますし、自然と切り替えができているように思います。ただ、これまでは本作ほど重たいシーンが続く作品はなかったので、奏はすごく大変だったんじゃないかなって。しかもドーム公演の翌日ですからね(笑)」
松井「でしょ? 僕めっちゃ頑張ったと思う(笑)」
── 話は変わりますが、お二人は映画館でのこだわりや、自宅で映画鑑賞をする際のこだわりは何かありますか。
松井「部屋を真っ暗にして、映画鑑賞用のスピーカーから音を出して臨場感を味わいながら観るのがこだわりです。サラウンドスピーカーは低音がちゃんと鳴るものをおすすめします。映画館でのこだわりはポップコーンを食べることぐらいですね。普段は甘いものを食べないんですけど、ポップコーンはキャラメル味が好きです。映画のお供にコーラとポップコーンがあれば最高ですね」
吉野「僕も家では部屋を暗くして観る派。音は近所迷惑にならない程度にボリュームを上げて、奏と一緒で臨場感を味わいながら観ています。映画館も、奏と同様キャラメルポップコーンとジュースを買ってから席に座るようにしています。劇場によってはプレミアムポップコーンが売っているので、見つけるとつい買っちゃいますね」
── 最後におすすめの映画をSCREEN読者に向けてご紹介いただけますか。
松井「僕は昔から『千と千尋の神隠し』が好きです。色味が華やかなシーンもあれば儚くて切ないシーンもあって、観たあとに余韻がしっかりと残る感じがたまらないですね。舞台版はキャスト陣の再現度が高いと聞いたので、いつか機会があれば観劇したいです」
吉野「最近、勉強のために賞を獲っている作品をたくさん観ているのですが、中でも印象的だったのがアカデミー賞で国際長編映画賞を受賞した『ドライブ・マイ・カー』。村上春樹さんの短編小説を映画化した作品ですが、独特な世界観で引き込まれましたし、鑑賞後に“すごい映画を観た”という満
足感があったのも好きなポイントでした」
松井「僕はあまり映画に詳しくないから、もっといろいろ教えてほしい」
吉野「じゃあ今度何か一緒に観に行こう!」
Hokuto Yoshino
1997年3月6日生まれ。宮崎県出身。2014年開催の「VOCAL BATTLE AUDITION 4」を経てTHE RAMPAGEの正式メンバーに。2017年1月に1st SINGLE「Lightning」でメジャーデビュー。2018年に出演したドラマ「PRINCE OF LEGEND」以降、俳優としても活躍。近年の主な出演作は、ドラマ「魔法のリノベ」( 22)、「スタンドUPスタート」(23)、配信ドラマ「1122 いいふうふ」(24)、映画『私がモテてどうすんだ』( 20)、『HiGH&LOW THE WORST X』(22)、『MY( K)NIGHT マイ・ナイト』(23)など。
Minato Matsui
2000年9月2日生まれ。千葉県出身。2023年8月、「IMP.」としてデジタルシングル「CRUISIN'」を世界同時配信。Billboard JAPAN総合ソング・チャート“ JAPAN Hot 100”で2位を記録。12月16日に、3rdシングル「BAM ‒ BOO/ミチシルベ」が発売。2025年1月より「IMPERIAL LIVE TOUR 2025」の開催が決定。
interview & text /奥村百恵
photo /久保田司
<吉野北人>
hair & make/大木利保(CONTINUE)
styling/吉田ケイスケ
<松井奏>
hair & make/大森創太(IKEDAYA TOKYO)
styling/日夏(YKP)
衣装協力/ALUDE TOKYO