嵐で辿り着いた無人島で、最新型アシスト・ロボットがひょんなことから雁(ガン)の雛鳥を育てることになり、悪戦苦闘しながらも絆を育み、立派に育て上げる。ドリームワークス・アニメーション最新作『野生の島のロズ』は43の国や地域で初登場1位を記録、第97回アカデミー賞®のノミネート発表において、【長編アニメーション映画賞】、【作曲賞(クリス・バワーズ)】、【音響賞】の3部門にノミネートされた。日本公開を前にクリス・サンダース監督が来日。SCREENONLINEのインタビューに応じてくれた。(取材・文/ほりきみき、撮影/SCREEN編集部)

影響を受けた、宮﨑駿のペース配分とディティールの細かさ

――本作は、宮﨑駿監督の作品からインスピレーションを受けたと聞きました。どのような点で影響を受けられているのでしょうか。また、他にインスピレーションを受けたものはありましたか。

宮﨑駿監督からはいろいろな面で影響を受けていますが、特にペース配分とディティールの凝り方は素晴らしいと思います。このことについて語る人はあまりいませんけれどね(笑)。

ペース配分に関しては、時間をたっぷりかけて描いているけれど、無駄な部分はありません。しかも情報過多で観客を圧倒してしまうこともなく、静寂の間もあり、観客は急かされることがない。キャラクターがこちらのペースに合わせて動いているように感じられるのです。

ディティールの凝り方については『紅の豚』を例に挙げるならば、そういえば、この作品も飛翔がテーマですね(笑)。『紅の豚』ではメカニック的にガタガタしたり、機体に水が当たったり、エンジンの不調具合といったことも細やかに描かれていて、そういうところがすごく心に響くのです。ですから、この作品でもディティールの細やかさを意識していました。

人間が登場し、未来を想起する都市のデザインに関しては、『ブレードランナー』などのSF作品を手掛けたデザイナー、シド・ミードのポジティブな未来像からインスピレーションを得ています。

画像: 影響を受けた、宮﨑駿のペース配分とディティールの細かさ

――ユーモアもみどころです。例えば、冒頭、ロズが断崖絶壁を上るとき、原作ではカニが割れ目をうまく使っているのを見て、真似する様子を細かく記していますが、この作品では簡略化してカニのように横歩きするだけでうまく上れるように見せ、笑いを誘います。また、キラリが生まれる瞬間について、原作では卵の中からヒナが生まれてくる様子を描写しているだけですが、この作品では慌てたロズが指で殻が割れるのを押さえようとあたふたする姿もユーモラスに表現しています。こういった表現はどのように思いつくのでしょうか。

「ユーモアを搾り出せ!」といったセッションが実は苦手です(笑)。アニメーションの世界ではそういう話し合いの場が設けられることが結構あるのですが、私はそういうときに全然出てこないのです。

しかし、すでにあるものの中で、「ここはユーモアとして立てられる」というフックになるところを見つけ、足し算や引き算をして笑いを生み出すのは割と得意なのです。孵化の場面はいい例ですね。ロズとしては彼女のプログラム通りに進んでいないと大パニックになります。だからあのシーンでは「まだ時間が来ていないのに、なぜ割れるの!」とロズの慌てる姿を加えると笑いになるわけです。

他にもいい例があって、冒頭でロズがタヌキにバラバラにされるシーンがあります。ここは「好奇心旺盛なタヌキが見たこともないロボットを見つけたら、バラバラにしてしまうだろう」と思いつき、ユーモラスさが生まれました。

<PROFILE>
クリス・サンダース

1962年3月12日生まれ。アメリカ出身。カリフォルニア芸術大学を卒業後、ウォルト・ディズニー・カンパニーでストーリー・アーティストとして、『美女と野獣』(91)、『アラジン』(92)、『ライオン・キング』(94)と立て続けに大ヒット作品に携わった後、『ムーラン』(98)で脚本を担当。『リロ&スティッチ』(02)ではディーン・デュポアと共に監督、脚本を務め、スティッチの声優も担当した。2006年にディズニーを離れてドリームワークス・アニメーションに加わり、再びディーン・デュポアと共同で『ヒックとドラゴン』(10)の監督、脚本を担当。同シリーズを世界的大ヒットに導いた。その他の代表作に『クルードさんちのはじめての冒険』(13)、『野生の叫び声』(20)などがある。

野生の島のロズ』2025年2月7日(金)より全国中

画像: - YouTube youtu.be

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<STORY>
無人島に漂着した最新型アシスト・ロボットのロズは、キツネのチャッカリとオポッサムのピンクシッポの協力のもと、雁のひな鳥キラリを育てるうち、心が芽生えはじめる。ロズの優しさに触れ、怪物として彼女を拒絶していた動物たちも、次第に島の“家族”として受け入れていく。いつしか島はロズにとっての“家”となっていくのだった。渡り鳥として巣立っていくキラリを見送り、動物たちと共に厳しい冬を越えた頃、回収ロボットが彼女を探しにやってくる。果たして、築いてきた動物たちとの絆から引き裂かれようとするロズの運命は!?島の存亡をかけたロズと動物たちの戦いが、いま始まろうとしていた──。

<STAFF&CAST>
監督・脚本:クリス・サンダース
声の出演:ルピタ・ニョンゴ、ペドロ・パスカル、キャサリン・オハラ、ビル・ナイ、キット・コナー、ステファニー・シューほか

<日本語吹替キャスト>
声の出演:綾瀬はるか、柄本佑、鈴木福、いとうまい子、千葉繁、種﨑敦美、山本高広、滝知史、田中美央、濱﨑司

配給:東宝東和、ギャガ 
Ⓒ2024 DREAMWORKS ANIMATION LLC.
公式サイト:https://gaga.ne.jp/roz-movie/

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