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ティモシー・シャラメが最年少主演男優賞受賞者に?

ティモシー・シャラメ
Photo by Axelle/Bauer-Griffin/FilmMagic
『名もなき者A COMPLETE UNKNOWN』で主演男優賞候補になったティモシー・シャラメは、『エデンの東』(55)『理由なき反抗』(56)で同賞候補になったジェームズ・ディーン以来、30歳以前に2回主演男優賞候補になった俳優という記録を達成。またもしシャラメが今回受賞すれば、今回も同賞候補になっているエイドリアン・ブロディが『戦場のピアニスト』(02)の時に29歳11か月で最年少主演男優賞受賞者になった記録を塗り替えることになる(シャラメは現在29歳3か月)。ただ今回はブロディが本命視されていて、シャラメの逆転が注目される。
渦中の人、カルラ・ソフィア・ガスコン
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カルラ・ソフィア・ガスコン
Photo by Amy Sussman/Getty Images
いろんな意味で今回最も注目される人になってしまったのが『エミリア・ペレス』の主演女優賞候補カルラ・ソフィア・ガスコンだ。彼女はトランスジェンダーを公言する俳優として初のオスカー候補者となったことで話題になっていたが、過去のSNSで人種差別的な発言をしていたことで、一気に別の意味で時の人になった。彼女は謝罪の言葉を述べ、受賞に向けてのキャンペーンから一切手を引く意思を示したが、これが彼女だけのことに留まらず、『エミリア・ペレス』の他の部門にまで影響が及んでしまうかもしれないという噂が浮上。オスカーの最終投票がこの件が発覚してから後にスタートするため、こういう話が出てきたのだと思われるが、最多候補の本命の1作だけにその結果が気にかかる。
キーラン・カルキンとジェレミー・ストロングの“兄弟”対決
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キーラン・カルキンとジェレミー・ストロング
Photo by Presley Ann/Getty Images
助演男優賞部門で話題になっているのが『リアル・ペイン〜心の旅〜』のキーラン・カルキンと『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』のジェレミー・ストロングの対決。2人は人気ドラマシリーズ「メディア王〜華麗なる一族〜」でロイ家の三男ローマンと次男ケンダルを演じる共演者同士。それぞれこの役でゴールデングローブ賞、プライムタイム・エミー賞の主演男優賞を受賞しているが、今回は映画部門での“兄弟対決”が勃発とファンの間で盛り上がっている。これまでの賞レースの結果から見ると“弟”キーランが優勢のようだが、本番ではどうなるか?
シンシア・エリヴォ、EGOTの仲間入りか
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シンシア・エリヴォ
Photo by Frazer Harrison/Getty Images
今回の主演女優賞候補者は全員の出演作がすべて作品賞候補にもなっているが、これは47年ぶりのことという(第50回以来)。その中で『ウィキッド ふたりの魔女』のシンシア・エリヴォは英国出身黒人女優として2回主演女優賞候補になった(前回は19年の『ハリエット』)初の俳優になる。さらにもし今回受賞すれば、EGOTを達成することになる。EGOTとは、エミー賞、グラミー賞、オスカー、トニー賞の4つの重要な賞を全て受賞した人物に与えられる称号。ショービズ界のグランドスラムとも言われる。これまでにオードリー・ヘプバーンやウーピー・ゴールドバーグなど20人ほどが達成しているが、シンシアはどうなるか?
日本関連作が今年も3作ノミネート
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伊藤詩織
Photo by Joe Maher/Getty Images for BFI
昨年度のアカデミー賞では『君たちはどう生きるか』が長編アニメーション賞、『ゴジラ-1.0』が視覚効果賞を受賞。『PERFECT DAYS』が国際長編映画賞にノミネートされ、大きな話題を呼んだ日本映画。今回も日本関連の作品が3つの部門で候補になっている。長編ドキュメンタリー映画賞で候補入りした『Black Box Diaries』は映像ジャーナリスト、伊藤詩織が性被害の告発後に自らに起こった出来事を記録した初監督作(英・米・日合作)。また短編ドキュメンタリー映画賞にノミネートされた『Instruments of a Beating Heart』は、日本で公開中の山崎エマ監督の長編作『小学校~それは小さな社会』(日・米・フィンランド・仏合作)から生まれた短編。また短編アニメーション部門で東映アニメーション製作の『あめだま』(西尾大介監督)も候補に。昨年に続く日本の快挙が見られるかもしれない。
ショーン・ベイカーとジャック・オーディアールが記録に挑む
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ショーン・ベイカー
Photo by Maya Dehlin Spach/FilmMagic
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ジャック・オーディアール
Photo by Karwai Tang/WireImage
監督賞部門では今回候補となった5人全員が初めてのノミネートで、これは1997年以来27年ぶりのこと。その時は『タイタニック』でジェームズ・キャメロンが受賞した。今回の候補者の内、『ANORA アノーラ』のショーン・ベイカーは他に作品・脚本・編集の全4部門でノミネートされている。一人で同時の4部門候補という快挙は『ノマドランド』のクロエ・ジャオ、『ROMA/ローマ』のアルフォンソ・キュアロンといった一部の監督が達成しているが、この2人は共にそのうち2部門で受賞した。さらに凄いのは『パラサイト半地下の家族』のポン・ジュノで、彼は監督賞の他、作品・脚本と国際長編映画も受賞。また『エミリア・ペレス』のジャック・オーディアールも監督賞以外に作品・脚色・オリジナル歌曲賞(“El Mal”の作詞担当)の4部門で候補に。監督賞と歌曲賞に同時にノミネートというのは例外中の例外(同時でなければレオ・マッケリー、スパイク・ジョーンズなどがいるという)で、彼らが今回どんな記録を作るか見もの。
クリス・サンダース監督が最多記録に並ぶ
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クリス・サンダース
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長編アニメーション映画部門『野生の島のロズ』のクリス・サンダース監督は今回の候補で4回目。これまで『リロ・アンド・スティッチ』『ヒックとドラゴン』『クルードさんちのはじめての冒険』でノミネートされていたが、受賞はまだ。しかしこの4回目というのはこの部門で、宮崎駿、ピート・ドクターに並ぶ3人目の最多記録になる。ちなみに宮崎監督はそのうち2回受賞(『千と千尋の神隠し』『君たちはどう生きるか』)、ドクター監督は3回受賞(『カールじいさんの空飛ぶ家』『インサイド・ヘッド』『ソウルフル・ワールド』)している。サンダースもこのあたりで受賞したいところだ。
ダイアン・ウォーレン、今度こそ初受賞なるか
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ダイアン・ウォーレン
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オリジナル歌曲賞でノミネートされた『6888郵便大隊』の“The Journey”によってソングライターのダイアン・ウォーレンが再び候補者となった。ウォーレンが候補に挙がるのはなんとこれで16回目。しかもこれまで一度も受賞できていない。そんな彼女の過去のノミネート作品では世界中で大ヒットした『アルマゲドン』の“ミス・ア・シング”や『コン・エアー』『パール・ハーバー』の主題歌などがあり、2年前の第95回では名誉賞を受賞している。今度こそ本選での受賞が期待されるが、強敵“El Mal”(『エミリア・ペレス』)などが控えており、どんでん返しが起きるか見守りたい。
Netflixがいよいよ悲願達成か
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最多ノミネートの『エミリア・ペレス』
© 2024 PAGE 114 – WHY NOT PRODUCTIONS – PATHÉ FILMS - FRANCE 2 CINÉMA
COPYRIGHT PHOTO:©Shanna Besson
12部門13ノミネートを受け、今回最多候補獲得作品となっている『エミリア・ペレス』。非英語作品としてこれは新記録。これまでの記録は『グリーン・デスティニー』と『ROMA/ローマ』の10部門だった。これによって作品賞の受賞も期待されているが、本作が受賞すればNetflix作品として初の作品賞受賞となることで、いよいよ悲願達成かと目されている。これまで配信系映画では第94回の『コーダ あいのうた』がApple TV+作品で先行受賞しているが、これまであと一歩のところまで来ていたNetflixがついに追いつけるか? ちなみに今回『エミリア…』と『ウィキッド ふたりの魔女』と、2本のミュージカル映画が作品賞候補に選出されているが、これは第41回の『オリバー!』と『ファニー・ガール』以来のこととか。
母親のリベンジ? を狙うフェルナンダ・トーレス
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フェルナンダ・トーレス
Photo by Charley Gallay/Getty Images for W Magazine
今回の主演女優賞部門で異彩を放っているノミニーが『アイム・スティル・ヒア』のフェルナンダ・トーレス。先日のゴールデングローブ賞でも同作でブラジル人女優初となる主演女優賞(ドラマ映画部門)を勝ち取り、スピーチで「この賞を母に捧げたい」と語っていた。彼女の母は、98年の『セントラル・ステーション』でこれまでブラジル人俳優唯一のゴールデングローブ賞とアカデミー賞主演女優賞候補に挙がったフェルナンダ・モンテネグロのこと。この時、母が受賞できなかったGG賞を受賞したトーレスが続いてオスカーでも奇跡を起こすのではという予想もある。もちろん受賞すればブラジル人俳優初の快挙となる。そして『アイム・スティル・ヒア』が作品賞、国際長編映画賞を受賞してもブラジル初となる(名作『黒いオルフェ』はフランス映画として受賞)。
恒例のライブ・パフォーマンスは中止に
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昨年のライアン・ゴズリングの“I’m Just Ken”のパフォーマンス
Photo by Kevin Winter/Getty Images
ノミネーションの発表前にアカデミー協会は、第97回授賞式では毎年恒例のオリジナル歌曲賞のライブパフォーマンスを行わないと公表している。これまでノミネートされた曲は授賞式の合間に、生中継で放映された数々のアーティストによるパフォーマンスが披露されてきた。例えば近年ではレディー・ガガとブラッドリー・クーパーによる“Shallow”のデュエットや、ライアン・ゴズリングとダンサーたちによる“I'm Just Ken”のライブステージなどが話題となったが、今年は作詞家に焦点を当てるのだそう。
また今回の式典では、グラミー賞でも見られたように、南カリフォルニアの壊滅的な山火事に関連して、ロサンゼルス市に対するトリビュート・モーメントもありそう。