『ANORA アノーラ』は、ニューヨークを舞台にストリップダンサーとロシア新興財閥の御曹司の身分違いの恋という古典的な題材を、リアルに映し出した、現代のアンチ・シンデレラストーリー。日本でも2月28日(金)に公開されると、SNSには「展開が面白過ぎる!」「ノンストップ&無尽蔵のエネルギーで139分は瞬く間!」「余韻がすごい。すぐにでももう一度観たい。誰かと話したい。」「激流に身を委ね、切ない余韻に浸る一作」等の感想が溢れている。
先日授賞式が開催された第97回アカデミー賞では、作品賞、主演女優賞、監督賞、脚本賞、編集賞の最多5部門を受賞。ショーン・ベイカー監督個人としては、本作で作品賞、監督賞、脚本賞、編集賞の4つの賞を受賞。史上初めて1つの映画で4つの賞を獲得したオスカー受賞者となった。今回の来日はオスカー受賞前に決定しており、日本での舞台挨拶が受賞後初の公の場となった。監督が日本にプロモーションで訪れるのは『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』(日本公開2018年5月)以来7年ぶり三度目の来日となる。
「キャスティングでも僕はクレジットされていますが、これが一番誇りに思っているクレジットです」
満員の観客の中、オスカー像を握りしめ登壇したショーン・ベイカー監督とプロデューサーのサマンサ・クァン。監督は「本日こうやって来日できたこと、そしてオスカー直後の来日でオスカー受賞を日本でお祝いできることを嬉しく思います」と挨拶。サマンサは「こんにちは、東京!」と流暢な日本語でご挨拶。

ショーン・ベイカー監督

プロデューサーのサマンサ・クァン
MCが監督が手に持っているオスカー像について聞くと「これは道で拾ってきたものなんです」とチャーミングなジョークが飛び出した。持ってきているものは監督賞のオスカー像だという。「本当は5つ全て持っていきたかったんですけど結構重いんですよね。1体で25ポンド(約11kg)もの重さがあるんです」と手を挙げて観客にオスカー像を見せながらコメント。
授賞式の様子について尋ねられると、監督は「みんなでハグしたり嬉し涙を流したりしました」とコメント。またマイキーにも今回の来日を伝えていたのだそう。実は6ヶ月前は日本に旅行で来ていたというマイキーと、互いにおすすめのイベントやお店についてシェアしていたといい、サマンサは登壇直前までマイキーと連絡を取り合っており「日本は大好きなので私もいきたかった!日本の皆さんに宜しくお伝えください」というマイキーからのメッセージを明かした。
今回の来日と舞台挨拶は監督たっての希望。「前回の『レッド・ロケット』では来日が叶わず残念だったんです。昔から日本の観客の皆さんには応援いただいており、僕にとってとても重要なことでした。それに加え、僕は日本映画の大ファンでもあり、作品作りの上でも大きな影響を受けておりこのように日本でオスカーを祝えることを嬉しく思っています」と感慨深げにコメント。
オスカー受賞の要因について尋ねられると、「正直今だに今回の受賞を驚いてはいますが、この作品はおとぎ話的なところがあります。アノーラのように叶えたい夢がある人は、夢を奪われかねない状況でもアメリカンドリームを掴もうと必死になる姿に共感してくれているのではないかと思います」と分析。
そして「もうひとつの要因は素晴らしいキャストが揃ったこと。このアンサンブルキャストをとても誇りに思っています。みんなユニークなキャラクターで、個性が溢れて強度があります。だからこそより楽しい作品になったと思っています」とアノーラ役のマイキー・マディソンを筆頭に、オスカーで助演男優賞にノミネートされたイゴール役のユーリー・ボリソフや、イヴァン役のマーク・エイデルシュテインらを称えた。
キャスティングのこだわりについては「この役に相応しいだろうか、スクリーン映えするだろうかというところを一番大事にしています。いつも監督とプロデューサーで考えていますが、見るだけでワクワクするような人をキャスティングしています」「マイキー・マディソンについて『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(2019)や『スクリーム』(2022)を観て彼女の姿をもっとスクリーンでみたいと思いました」とまさにアノーラに相応しいマイキーの魅力を語った。
続けて「キャスティングでも僕はクレジットされていますが、これが一番誇りに思っているクレジットです」と抜群に演じきっているキャスト陣へのリスペクトを伝えた。
『ANORA』に影響を与えた『女囚701号/さそり』の梶芽衣子がサプライズ登場!
そしてここで、『ANORA アノーラ』のお祝いに、今年で映画デビュー60周年となる梶芽衣子がサプライズで登場。 ショーン・ベイカー監督がアノーラのキャラクターを作り上げるにあたり梶芽衣子の代表作である『女囚701号/さそり』(1972)からインスピレーションを受けたという縁から今回のサプライズが実現した。

梶芽衣子
作品を見た梶は「私は昭和のアナログ人間だから、令和の物語だと思いました。最初は驚き、最後は感動し本当に素晴らしかった」と大絶賛。監督は「大スターにお会いできて大変光栄です。大ファンです。僕もアナログ世代の人間です。本作ではフィルムカメラで撮影していますし、さそりが撮影された時代の映画の大ファンです」と興奮気味に大スターに会えた喜びをあらわにした。

ここで梶が「今年でデビュー60周年ですが、この3月8日が私の映画撮影デビューなんです。すごくない!?この偶然!!一生忘れることのできない日になりました」とテンションMAXで話すと、「一緒にお祝いができて光栄です。まだオスカー授賞式が続いているかのようです」と応え、互いに称え合った。
梶が演じたさそりシリーズの主人公、松島ナミからのどこからインスピレーションを受けたかと聞かれると、「マイキーに役作りをしてもらうにあたり、早い段階で梶さんの『女囚701号/さそり』を見せました。この映画の中の梶さんはとても力強く、家父長制に戦う姿や体を張った演技が堂々としていてそこを見て欲しかった。この映画とアノーラは別ものの作品ではありますが、マイキーがスクリーン上の梶さんをエッセンスを取り込み確実にDNAは受け継がれていると思っています」と力強く説明。
これを受けて梶が「アノーラ役の彼女は本当に最高でしたね。体当たりな演技は見ていて気持ちよかったし、清々しさが残りました、特にラストが!これくらいは言っていいよね?!」と気持ちが高ぶるあまりに思わずネタバレをしそうになり、会場の笑いを誘った。
そして、日本の伝統の「くす玉」を使って、改めてオスカーをお祝い。梶、ベイカー監督、サマンサの3名でくす玉を割ると「アカデミー賞®︎最多5部門受賞!」の文字が現れ、会場からも拍手喝采が沸き起こった。
監督も初めてのくす玉わりに楽しそうにしながらも、最後に日本の観客に向けて本当に暖かく迎えてくれてくれたことを感謝しています。何よりも日本の皆さんが劇場での公開を応援してくださることが何よりもありがたく思っています。僕たちは映画の作り手として劇場での鑑賞体験を大事にしています。このように大きなスクリーンでの鑑賞をしていただき本当にありがとうございます」と5冠を達成したオスカー監督らしい映画愛溢れるコメントで締められ、盛大なお祝いムードで舞台挨拶の幕が閉じた。

『ANORA アノーラ』
大ヒット上映中
配給:ビターズ・エンド ユニバーサル映画
©2024 Focus Features LLC. All Rights Reserved.