イギリスの戯曲を原作に、舞台をニューヨークに移して描く
【厨房=世界の縮図】
スタッフの多くが移民で構成されたニューヨークの観光客向け大型レストラン「ザ・グリル」。本作は、その人間関係を時にユーモラスに、時に痛烈に描いたヒューマン・エンターテインメント。
原作は、イギリスの劇作家アーノルド・ウェスカーが書いた1959年初演の戯曲「調理場」。日本でも2005年に舞台演出家の蜷川幸雄の演出により「キッチン KITCHEN」として上演されるなど幾度となく舞台化されてきた作品で、映画化は本作で2度目となる。本作では舞台をニューヨークの観光客向けレストランに移し、まぶしく先進的な街と、レストランで働きながらアメリカン・ドリームを求めて滞在する移民たちの対比が全編ほぼモノクロームでスタイリッシュに描かれている。
様々なルーツを持つ彼ら/彼女らが働く職場は笑えるほどにブラック。文化や政治の違いと資本主義が作り上げた格差ループから抜けられない人々が付かず離れずひしめき合う。この世界の縮図のようでもある。
ルカ・グァダニーノが認めた、メキシコの新たなる鬼才
アロンソ・ルイスパラシオス監督
「ザ・グリル」の料理人のひとりでメキシコ移民である主人公ペドロを演じるのは『コップ・ムービー』『巣窟の祭典』などのラウル・ブリオネス。トラブルメーカーで大人になりきれないが料理の腕は一級という魅力的な人物像を文字通り熱演し、[The Hollywood Reporterが選ぶ2024年ベストパフォーマンス俳優]15名の一人に選ばれた。
彼の恋人で秘密を抱えるアメリカ人のウェイトレス・ジュリアを演じるのはハリウッドが誇る実力派のルーニー・マーラ。ふたりのラブストーリーはロマンチックだが、どこか訳あり。大混乱を極める厨房での一日のゆくえと絶妙に絡み合っている。

監督・脚本を務めたのは『コップ・ムービー』ほかベルリン国際映画祭常連のアロンソ・ルイスパラシオス。本作は第74回ベルリン国際映画祭でコンペティション部門に出品されその力強い表現が称賛されたほか、世界各国の映画祭で12の受賞を記録中。また、Indiewireが発表した[映画人の選ぶ2024年フェイバリット・フィルム]では『チャレンジャーズ』『君の名前で僕を呼んで』などのルカ・グァダニーノ監督が15本のうちの1本に挙げるなど高い評価を受けている。
モノクロームで描かれる予告編と、スタイリッシュなビジュアルが解禁
解禁となった日本版予告編が捉えるのは、レジだけで6台もあるニューヨークの大型レストラン「ザ・グリル」での一日だ。朝、前日の売上金の一部が消えたことが分かり、オーナーの指令で全従業員に対する“犯人捜し”が始まる。移民たちが慌ただしく働く活気に満ちた厨房の雰囲気から一変、ペドロをはじめ従業員たちのストレスは爆発寸前となり、予想だにしない事態へと発展していく様子の一端が伺える。
そして、お互い違う持ち場で働くペドロとジュリアが恋人らしく視線を交わす様子やバックヤードでのキスシーンだけでなく、ペドロがジュリアに大金を渡す場面も捉え、ふたりの訳ありの恋模様のゆくえも気になる映像に仕上がった。
映画『ラ・コシーナ/厨房』_60秒予告
www.youtube.com日本版ビジュアルでは、「ザ・グリル」のシンボルである大きな水槽を挟んで見つめ合うふたりの姿を捉えた。これは、恋人たちの間を隔てる余りに大きなものの象徴でもある。水槽の中には、映画に価値観のメタファーとして登場するロブスターや、アメリカン・ドリームを指す自由の女神像が配されているのもポイントである。
<STORY>
NYにある観光客向けの大型レストラン。“いつも”通りドラマチックでカオスな一日に、とんでもない事件が起きる…
ニューヨークの大型レストラン「ザ・グリル」の厨房の、いつも通り目の回るような忙しい朝。店の従業員たち全員に売上金盗難の疑いがかけられる。加えて次々に新しいトラブルが勃発し、料理人やウェイトレスたちのストレスはピークに。カオスと化した厨房での一日は、無事に終わるのだろうか…。
『ラ・コシーナ/厨房』
6月13日(金) ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国公開
監督・脚本:アロンソ・ルイスパラシオス
出演:ラウル・ブリオネス、ルーニー・マーラ
原作:アーノルド・ウェスカー
2024年|139分|モノクロ|スタンダード(一部ビスタ)|アメリカ・メキシコ|英語、スペイン語|5.1ch|G|原題:La Cocina |字幕翻訳:橋本裕充
配給:SUNDAE
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