キャスト・インタビュー
ナオミ・アッキー(ナーシャ役)
ポン・ジュノ監督はすごくワイルドなユーモアの持ち主

ナオミ・アッキー
ナーシャ(ナオミ・アッキー)
ミッキーの恋人であり、精神的な支えとなる存在。
ポン・ジュノ監督について、私が一番感じたのは、彼がすごくワイルドなユーモアの持ち主だということですね(笑)。しかも、自分のことをそれほど真面目だとは思っていません。他の映画監督の作品についてもオープンに語るし、とても想像力が豊かなんです。
彼の作品には共通するテーマがあります。それは“階級”と“人々がどのように他者を扱うか”。この脚本を読んだときにも、そのテーマが根底にあると感じました。「ああ、これはまた誰が使い捨てにされ、誰が価値を持つのかを探求する作品なんだな」と。そして、こういうテーマは私もとても重要なことだと思っています。
彼と初めて会うときは少し緊張してしまいました。だって、アカデミー賞を受賞した監督ですよ? 私は心の中で「どうしよう、めちゃくちゃ緊張する!」って思っていたんです。でもいざ会ってみたら、彼は「はい…それが私です!」みたいな感じで(笑)。実際にはとても自虐的で、おちゃめな人でした。それに、最初からすごくコラボレーションを大切にする人でした。ナーシャについてどう思うか、セリフが自然に聞こえるかどうか、私の意見を聞いてくれて、撮影中もずっとその対話が続きました。本当に素晴らしい経験でした。
スティーヴン・ユァン(ティモ役)
「この人の言うことを信じていれば間違いない」と思える監督です

スティーヴン・ユァン
ティモ(スティーヴン・ユァン)
パイロットでミッキーの幼なじみ。
ポン・ジュノ監督は、本当に素晴らしいリーダーです。監督として最も重要な資質の一つは、リーダーシップだと思いますが、彼のリーダーシップは本当に見事なんです。
彼のやり方は「俺についてこい! 全員俺の言うことを聞け!」というタイプではなく、もっと包括的で、チーム全体を巻き込むスタイルです。自身にビジョンがあって、それを実現する能力がある監督は本当に信頼できます。ポン監督と仕事をするとき、彼の友人としても、監督としても、「この人の言うことを信じていれば間違いない」と思えるんです。
時には、「この場所に立って、このフレーム内でこう動いて」と細かい指示を出されることもあります。自由に動きたい俳優にとっては挑戦と感じるかもしれません。でも、実際にはこれはすごく解放感のある演技方法なんです。「ここが君のフィールドだよ。あとは自由にやってみて」という感じですね。おかげで、余計なことを考えずに演技に集中できました。
ポン監督の作品は、「人間って本当にバカだよね」と思わせるけれど、同時に「でも、愛される価値はある」とも思わせてくれます。彼は観客を責めたりはしません。ただ、笑いながら抱きしめてくれるんです。
トニ・コレット(イルファ役)
固定観念にとらわれない作品を作る人を心から尊敬

トニ・コレット
イルファ(トニ・コレット)
厳格で支配的なマーシャルの妻。
私は、型にはまらず、ジャンルを横断しながらさまざまな世界を探求し、固定観念にとらわれない作品を作る人を心から尊敬しています。ポン・ジュノ監督は、あたかも特定のジャンルの中で物語を展開しているように見せながら、実際にはジャンルを融合し、まったく新しいものをつくり上げてしまうんです。その手法が大好きです。
なぜ大好きかって? 人生そのものがそうだから。人生は型にはまらないし、流動的で、変わりやすいものです。私たち人間もそうです。ポン監督の作品の根底には、私たち人類が自然をコントロールしようと必死になりながらも、実は私たち自身も自然の一部であり、その力に決して抗うことはできない、というテーマがあると思うんです。最終的には、そこに行き着くんじゃないでしょうか。
彼の作品には、いつも深い共感と優しさが込められています。決して説教じみることなく、純粋に楽しめるし、時には笑えるし、それでいて驚くほど感動的でもある。どうやってそれを両立させているのかはわからないけれど、彼は作品の“核心”を見事に捉えると同時に、その中の滑稽な部分をユーモラスに描き出すことができるんです。それが彼の魅力ですね。
マーク・ラファロ(マーシャル役)
観る人に深く考えさせる内容になっています

マーク・ラファロ
Photo by Lia Toby/Getty Images
マーシャル(マーク・ラファロ)
自分の得しか考えていない強欲なボス。
最初に脚本を読んだとき、ワクワクすると同時に圧倒されました。今までこんなキャラクターを演じたことがなかったからです。ポン・ジュノ監督と初めて会ったとき、僕はこう言いました。「僕がこの役にふさわしいのかわかりません…」。すると、彼は「何を言っているんですか? あなたの声を思い浮かべながらこれを書いたんですよ」と言ったんです。それには本当に驚きましたし、同時にすごく光栄に思いました。
僕が演じるマーシャルのキャラクターを理解するのにとても苦労しました。彼にはカルト的な政治家の要素がありますが、ポン監督は「もっと不安定で、三流の男にしてほしい」と言いました。彼には、カリスマ性のある伝道師のような一面があるけれど、真のカルト指導者にはなりきれない。だからこそ、滑稽でありながらも、脆く、それが逆に危険な存在でもあるんです。
脚本は素晴らしいものでした。この映画は、植民地主義、階級制度、人間性の喪失、優越意識、宗教と国家の融合といった大きなテーマを扱っていますが、それを辛辣な風刺として描いています。『博士の異常な愛情』や『ネットワーク』のような作品を思わせるユーモアと鋭さがあり、観る人に深く考えさせる内容になっています。
『ミッキー17』
2025年3月28日(金)公開
アメリカ/2025/2時間17分/配給:ワーナー・ブラザース映画
監督:ポン・ジュノ
出演:ロバート・パティンソン、ナオミ・アッキー、スティーヴン・ユァン、トニ・コレット、マーク・ラファロ
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