NTR Jr. プロフィール
1983年、インド生まれ。NTR Jr.は略称で、フルネームはナンダムーリ・ターラカ・ラーマ・ラオ・ジュニア。古典舞踊クーチプーディなどの訓練を受けて育つ。子役を経て、17歳の時に『Ninnu Choodalani (原題)』(01/日本未公開)で本格デビュー。日本で上映された作品は、ラーム・チャランとW主演を務めた大ヒット作『RRR』(22)のほか、『ヤマドンガ』(07)、『バードシャー テルグの皇帝』(13)などがある。
“僕が『デーヴァラ』を気に入ったのは、「人生には恐れが必要だ」というメッセージが込められていたことなんだ”

──『デーヴァラ』は世界的に大ヒットした『RRR』以降初の主演作ですが、プレッシャーはありましたか?
「プレッシャーは確かにあった。でも俳優や監督はプレッシャーを感じていたほうがいい仕事ができるんじゃないかな(笑)。少なくとも僕はプレッシャーがあったほうがいい仕事ができるし、だからこそ『デーヴァラ』という美しい作品を作り上げることができた。『RRR』があったからこそ得られた幸せだと思っているよ」
──『デーヴァラ』はシヴァ監督のアイデアから生まれたそうですが、出演の決め手は何だったのでしょうか?
「シヴァ監督の映画にはどれも根底にメッセージがある。インドに暮らす市民の一人として、またこの世界の一員として、常に観客にささやかなメッセージを届けようとしているんだ。僕が『デーヴァラ』を気に入ったのは、『人生には恐れが必要だ』というメッセージが込められていたこと。適度な恐怖心は、人に責任感を与えると思う。人間として、父親として、息子として、夫として。人は恐怖心を失った瞬間、理性や安定性を失ってしまう。つまり『恐れることを知らなければ、この世界を傷つけることになる』というメッセージでもあるんだ。そこにユニークな神話的表現が加わって、沿岸部に暮らす戦士たちの物語が生まれた。彼らが持っている恐怖、勇気、野蛮なまでの強さが、僕をこの映画に引き寄せたんだ」
──主演スターとして、脚本作りなどにも関わっているのでしょうか?
「かなり関わっているよ。僕はそれぞれが自分の持ち場でやる仕事を尊重しているけれど、映画は一人では作れないからね。作品を良くするための健全な話し合いは大歓迎だ。村の祭りで決闘が行われるシーンは、最初はもっと夢みたいな雰囲気になる予定だった。でも僕は『いや、これはもう少し無骨であるべきだ』と言ったんだ。ただのダンスじゃなく、戦士たちにふさわしいものでなければいけない。ニュージーランドのラグビーチームが試合前にハカを踊るみたいにね。そこに歌が加わって、より独創的なシーンになったと思う。4つの村の男たちが一緒に踊っている様子は、まさに僕が想像していた通りですごく嬉しかった」

──水上のアクションシーンの撮影に30日を費やしたそうですね。
「うん。でも、ほとんどが水の中だったよ(笑)」
──サイフ・アリ・カーンとの決闘シーンの撮影には10日間かかったと聞きました。
「しかも10日間毎晩ぶっ続けでね! 特に今回は水の撮影が大変だった。水中に潜り、息を止めて、演技をして、水上に戻って息をするの繰り返し。これまでのキャリアで一番大変だったと断言できるよ。でも完成品でサメとジャンプしている自分を見たら、あの過酷さを忘れるくらいハッピーな気分になれたけどね(笑)」
──タラクさんはアクションスターとしても素晴らしいですが、憧れたり影響を受けたりした俳優や映画スターはいますか?
「アクションでいえば、いつだって『ランボー』のシルヴェスター・スタローンが僕にとって最高のアクションスターだ。影響を受けた人は本当にたくさんいて、誰から始めていいかわからないな(笑)。どの役者にも違う表現法や魅力があるからね。僕は俳優と作品と結びつけて考えていて、個人よりも出演作や演技そのものを称賛する傾向がある。ウィル・スミスなら『幸せのちから』の彼が大好きだし、『レヴェナント:蘇えりし者』のレオナルド・ディカプリオも素晴らしい。アル・パチーノなら『セント・オブ・ウーマン/夢の香り』は外せないし、『トロイ』のブラッド・ピットも好きだ。でも映画のキャラクターで一番のお気に入りを挙げるなら『アイアンマン』だね」

──『RRR』や『バーフバリ』の成功でテルグ語圏の映画がインド全域や世界各地で観られるようになりました。『デーヴァラ』でもボリウッドのスターを招くなど、より広い観客層を意識していますよね。それでもなおテルグ映画らしさは感じられると思うんですが、タラクさんはどんな部分に現れていると思われますか?
「映画を作るとき、ある場所を描くとき、必ず自分の中にあるものが反映されると思うんだ。人は場所とともに生まれ、ともに育ち、その場所を胸に抱いて死んでいく。食べ物を食べ、空気を吸い、その土地の人々と暮らす。決して、心からその場所を奪うことはできない。切り離せる唯一の方法があるなら、死ぬときだけじゃないかな。だからテルグの映画には“テルグネス”が感じられるんだと思う。ヒンディー映画にはヒンディーらしさがあるし、タミル映画にはタミルらしさがある。日本で作られた映画に日本らしさが宿っているようにね」
──その“テルグネス”とは何か、言葉にしていただけませんか?
「そうだなあ……でもテルグらしさは日本にも通じている気がするんだ。温かくて、優しくて、謙虚で、他人への敬意を忘れない。そして常に神を畏れる心を持っていることかな」
作品紹介

『RRR』(2022)のNTR Jr.が、『ジャナタ・ガレージ』(2016)のコラターラ・シヴァ監督と再びタッグを組んだ、ノンストップ海洋バトル・エンタテイメント。悪しき慣習に真っ向から立ち向かう最強の男デーヴァラと、外見は生き写しながら気弱な、その息子ヴァラをNTR Jr.が一人二役で演じる。デーヴァラと反目するバイラ役で、『ヴィクラムとヴェーダ』(2022)のサイフ・アリ・カーン、ヴァラの幼馴染タンガ役で注目の新星ジャーンヴィー・カプールが共演。陸海を舞台にしたダイナミックなアクション、華麗な群舞も交えたダンスシーンが展開され、NTR Jr.主演作では『RRR』に次ぐヒットとなる全世界興行収入約90億円を達成。
あらすじ
“赤海”と呼ばれる、密輸で栄えていた村群。しかし、密輸した武器が村人の死を招く。心を痛めた村長の一人・デーヴァラは、密輸を禁じる。だが、反目するバイラが彼の暗殺を画策。ある晩、大きな抗争が起き、デーヴァラは「密輸を行う者は罰する」と書置きを残して姿を消す。それから12年。デーヴァラの殺害を諦めないバイラが一計を案じる。
『デーヴァラ』
2025年3月28日(金)公開
インド/2024/2時間52分/配給:ツイン
監督:コラターラ・シヴァ
出演:NTR Jr. 、ジャーンヴィー・カプール、サイフ・アリ・カーン
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