リーアム・ニーソン主演の『プロフェッショナル』(4月11日公開)は渋く滋味深いドラマの重厚さとキレのある痛快なアクションを併せ持つ大人のための極上のエンタテインメント。アイルランド北部を舞台に、裏の顔を持つ男が引退を決意した矢先、その優しさゆえ、再び戦いの連鎖に巻き込まれ、疲弊した心身を奮い立たせながら、最後の戦いに立ち向かっていく姿を描く。監督を長年、クリント・イーストウッド監督とタッグを組んできたロバート・ロレンツが務めており、公開を前に作品への思いを語ってくれた。(取材・文/ほりきみき)

見どころはアクションとドラマの絶妙なバランス


──主演のリーアム・ニーソンが先に脚本を読み、あなたを監督に推薦されて、お引き受けになったと聞きました。

とても光栄でした。というのも前作『マークスマン』(2022)でとてもいい関係が築け、撮影も楽しかったので、次もぜひ彼と組みたいと思っていたのです。彼から声を掛けてもらったのがうれしくて、すぐに脚本を読みました。物語として、この作品は西部劇的な要素が強く、私はウェスタンには馴染みがあるので、そういった自分の感性を持ち込めるのではないかと思い、ぜひ参画したいと伝えました。

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──では、脚本開発にも加わったのでしょうか。

やはり、この映画は私の映画でもあるので、私らしさを入れたいし、見せたい。自分が共感する部分がないと自分のものとして撮るのが難しいので、脚本に私らしさを反映させました。

例えば、最初の脚本ではみんな死んでしまうことになっていたのですが、私としては希望が持てるようにしたい。これからも生きている人の生活は続くことを示唆して終わるようにしたのです。

他にもちょこちょこっとそういった私らしさを加えたところがあります。


──作品の背景にアイルランドの歴史が描かれています。アメリカのウィスコンシン州で生まれ育った監督にとって、その点はいかがでしたか。

私の母の旧姓はオカラハンといい、アイルランド系です。アイルランドに行ったことはありませんが、私の半分は宗教的にもアイルランド系で、アイルランドに親しみのある家庭で育ちましたから、全く知らない文化ではないのです。ただ念のため、キャストやスタッフをほぼアイルランド人で固めて臨んでいます。

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──クライマックスの銃撃戦は見応えたっぷりでした。リーアム・ニーソンは70歳を超えていますが、アクションシーンも難なくこなしています。アクションシーンの撮影時のことで何かエピソードがありましたらお聞かせください。

彼はとても健康です。しかもいろいろなことをご自身でできる器用な方でもあります。

しかも、私はクリント・イーストウッド監督と長く一緒にやっていたので、高齢な方に慣れているということもありました。私がイーストウッド監督の元で働き始めたとき、彼はすでに80歳を過ぎていましたが、リーアム同様に健康維持を大事にされており、何より仕事がお好きで、現場を楽しんでいらっしゃったのです。

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──本作はアクションだけでなくドラマ部分もしっかり描かれているのが見どころです。演出のバランスはどうされましたか。

ご指摘いただいたように、この作品が他のアクション作品とは違うのはまさにアクションとドラマの絶妙なバランスだと思います。しかもユーモアも盛り込んでいます。それが日本語の字幕でも観客のみなさんに伝わっているといいのですが…。そういったトーンの違いをリーアム始め、キャストの役への理解度が深く、こちらの演出は不要でした。


──デラン・マッキャンを演じたケリー・コンドンは監督が提案してキャスティングされたと聞きました。

ケリーとは組んだことはありませんでしたが、映画やテレビなどで作品は見てきました。この作品には彼女が持っている熱量が不可欠だと思ったのです。他の女優の方も名前は上がりましたが、私はケリーを推しました。彼女に決まってうれしかったです。

ケリーはデラン・マッキャンという役が何たるかを完璧に理解しており、役についての説明をしなくても、本当に素晴らしい演技を披露してくれました。キャストの化学反応がうまくいけば、共通のゴールが見えるので、特に言葉を必要としません。相乗効果のように現場はうまく進み、こちらとしても、とても仕事がしやすい方でした。

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──特に印象に残るケリー・コンドンの演技シーンはありましたか。

ケリーはバランス感覚に優れているのでどのシーンもよく、特にこことは選べません。強いて言えば、アイルランド共和軍(IRA)の過激派グループのメンバーとのやり取りや終盤の銃撃シーンの表情は本当に役を理解しているなと感じました。

ケリーが作品に持ち込んでくれたものはとても大きかったと思います。一緒に仕事をするのはとても楽しかったので、次回もまた組みたいですね。


──監督はクリント・イーストウッド監督と永らく一緒に仕事をされてきました。先程、年配の方と仕事をするのは健康管理が大事であることを学んだと話されていましたが、演出的な部分ではどんなことを学びましたか。

20年以上、イーストウッド監督のマスタークラスを受けていたようなところがあるので、アプローチへのプロセスは似ている部分がかなりあると思います。彼のやり方が一般的なのか、一般的ではないのかはわかりませんが、彼がこれまでやってきて、ちゃんと機能しているのだから問題はないだろうという気持ちでやってきました。

具体的に言えば、彼は非常に冷静です。感情に波がなく、声を荒げたりしません。必要なことに注力して、みんなにもそれを期待する。やるべきことをきちんとやり、撮影がスムーズに進んでいけば、みんなも楽しい気持ちでいられますからね。

また、すべてを自分でマネジメントしようとするのではなく、むしろスタッフやキャストのアイデアを積極的に受け入れていました。

私は監督のあるべき姿として、イーストウッド監督からそういったことを継承しています。


──撮影のトム・スターンはイーストウッド監督の重要な作品の撮影を何作も担当されており、『チェンジリング』(2009)でアカデミー賞撮影賞にノミネートされています。本作でのトム・スターンの撮影はいかがでしたか。

トムは技術的な面での知識が深いだけでなく、抜きんでた視覚の感性を持っています。物語やテーマを視覚的に引き立てる映像表現は本当に素晴らしい。私はこの作品の暗いテーマと美しい風景とのコントラストを表現したかったのですが、私のビジョンを理解して、それを実現してくれました。舞台に選んだ小さな沿岸の町の開放感のある美しさを活かして、物語にバランスを持たせてくれたのです。

トムはかなり高齢ですが、とてもエネルギッシュで、冒険心にあふれています。しかも、長年、一緒に仕事をしているので、私の好みを伝えなくても分かっていて、その上で実験的な試みをしたり、ユニークな方法を取り込もうとしたりします。私の冒険心まで探究してくれる、いい相棒です。

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──最後に監督からご覧になったリーアム・ニーソンの俳優としての魅力を教えてください。

感情の伝え方が本当にうまい。映画を見た人は彼が演じたキャラクターに繋がりを感じ、共感してしまう。それができる稀有な俳優です。本当に才能豊かな方です。撮影の現場でも、プライベートでも優しくて、礼儀正しく寛容ですから、その辺が役柄に反映されてにじみ出てきているのでしょう。

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<PROFILE>  
監督:ロバート・ロレンツ 
1965年4月1日にウィスコンシン州で生まれ、特にクリント・イーストウッドとの長年にわたるコラボレーションで知られている。イーストウッドの映画制作会社「マルパソ・プロダクションズ」の主要メンバーとして、『ミスティック・リバー』(2003年)、『ミリオンダラー・ベイビー』(2004年)、『父親たちの星条旗』(2006年)、『硫黄島からの手紙』(2006年)、『グラン・トリノ』(2008年)など、多くの名作のプロデューサーを務めた。2012年には、クリント・イーストウッド主演のスポーツドラマ『人生の特等席』で監督デビューを果たし、2021年にはリーアム・ニーソン主演のアクションスリラー『マークスマン』を手がけた。彼の作品は、リアルで感情的なストーリーテリングを重視し、ドラマとサスペンスを巧みに融合させることが特徴である。プロデューサーとしての豊富な経験を活かし、今後も映画界での活躍が期待される監督の一人である。

『プロフェッショナル』4月11日(金)より、TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開

画像: - YouTube youtu.be

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<STORY> 
1970年代のアイルランド。血塗られた過去を捨て去りたいと願う暗殺者フィンバー・マーフィーは、正体を隠し、海辺の田舎町で静かに生きていた。だが、引退を決意した矢先、凄惨な爆破事件を起こしたアイルランド共和軍(IRA)の過激派が町に逃げ込んでくる。さらに、ある出来事が彼の怒りに火をつけ、テロリストとの殺るか殺られるかの壮絶な戦いが幕を開ける。避けられぬ宿命に導かれるように、フィンバーは過去に決着をつけるため、最後の死闘に身を投じる――。

<STAFF&CAST> 
監督:ロバート・ロレンツ フィリップ・リー  
製作:フィリップ・リー
撮影:トム・スターン 
出演:リーアム・ニーソン、ケリー・コンドン、ジャック・グリーソン、キアラン・ハインズ、デズモンド・イーストウッド、コルム・ミーニイ 
2025|アイルランド|106分|シネマスコープ|5.1ch|英題:In The Land of Saints and Sinners|字幕翻訳:西澤志保|映倫:G 
配給:AMGエンタテインメント 
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