Photo by Sebastien Vincent/Contour by Getty Images
映画初出演を飾ったのはミヒャエル・ハネケ作品
ここ数年、日本でも“セバスタ”の愛称が急速に広まっているように、セバスチャン・スタンの人気が拡大している。今年は初のオスカーノミネートも達成し、そのキャリアはますます進化しそうな気配だ。1982年、ルーマニアの東端、黒海沿岸のコンスタンツァに生まれ、8歳でオーストリアのウィーンに移った後、母親の再婚相手がいるアメリカ、ニューヨーク州ロックランド郡で暮らし始めたのが12歳の時。じつはこの渡米の頃、セバスチャンの初出演映画が完成している。後にカンヌ国際映画祭で2度のパルムドールに輝く鬼才、ミヒャエル・ハネケ監督の『71フラグメンツ』だ。ウィーンを舞台にした本作で、地下鉄のホームを歩く主人公のルーマニア人少年と、反対側のホームで無言のやりとりをする少年をセバスチャンが演じている。わずか数十秒の出番だが、子供時代から母親の熱心な勧めでオーディションを受け続け、ようやく掴んだ役だった。
当のセバスチャンはデビュー作での仕事は楽しめなかったと後に告白。それでも演技への興味は沸々と湧き上がり、ロックランド郡の学校に通いながら数多くの演劇の舞台に立った。かつてロバート・ダウニーJr.やナタリー・ポートマンも参加した俳優養成キャンプ「ステージドア・マナー・サマーキャンプ」での経験から、大学でも舞台芸術を学び、在学中に1年間、ロンドン留学で演技を磨いていく。
「ゴシップガール」で熱視線!そして、運命の役との出会いが
セバスチャンの本格的キャリアは、21歳の2003年、ドラマ「ロー&オーダー」で小さな役で始まった。ニューヨークのシネコンやH&Mなどで働きながらオーディションを受け続け、俳優として最初のステップとなったのが2006年、メインキャストの一人を演じた、ホラー・ファンタジー『レニー・ハーリン コベナント 幻魔降臨』。その翌2007年に、大ヒットシリーズ「ゴシップガール」のカーター役で、セバスチャンへの注目が集まる。世界を放浪する、いけすかない金持ち青年のカーターは計11話に登場。並行して『ブラック・スワン』(10)など話題作に出演しつつ、時にはアパートの家賃にも困る時期があったというが、ついに生涯の当たり役、MCUのバッキー・バーンズ/ウィンター・ソルジャー役と巡り合う。
2011年の『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』で、セバスチャンは当初、主人公スティーブ=キャプテン・アメリカ役の候補にもなったのは有名な話だが、バッキー役が回ってきたのは結果的に正解だった。かつてのスティーブの親友で、続編の『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』(14)では秘密結社ヒドラの暗殺者となるバッキーの、冷血な側面から悲痛な心情までを体現するうえで、セバスチャンの演技力が試されたからだ。2025年の現在、クリス・エヴァンスはキャプテン・アメリカ役を“卒業”したわけだが、セバスチャンのバッキー役は継続中。『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(16)では得意のルーマニア語のセリフもこなしている。

世界に注目された当たり役バッキー(『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』より)
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