――シスターを演じる、ソフィー・サッチャーとクロエ・イーストについても聞かせてください。ソフィーは前作『ブギーマン』でも組まれていますね。この映画の中でも、とても頼もしい存在を演じていますが、どんな理由で今回の映画に起⽤されたのでしょうか。
ベック「ソフィーに惹かれた理由の一つとして、どこか謎めいたところがある点だ。さらに強さもある。それはシスター・バーンズにも共通している要素だった。シスター・バーンズは見た目以上に複雑な人間で、すべては説明していないけど、過去に何かがあり、彼女の父親の死も何かしらの影響を与えているのが分かる。さらにソフィーはオーディションで、自己主張の強い演技を見せていたのが印象的だった。
シスター・バーンズは、ミスター・リードに立ち向かう唯一の人物だ。もちろんその後にストーリーは予想外の展開を迎えるけどね。とにかく信憑性があったんだ。セリフを言う時も、役になりきっている。シスター・パクストンを演じた、クロエにも同じことが言える。2人に求められる演技は、非常にレベルの高いものだった。相手がヒュー・グラントだからね。でも撮影を終えた時、あのベテラン俳優のヒューが、彼女たちの才能と真っ向から勝負するは大変だったと言っていたんだ。今回、ヒューとソフィーとクロエが出演してくれたことは、作品にとってすごく幸運だったよ」

(左から)バーンズ(ソフィー・サッチャー)、パクストン(クロエ・イースト)
――クロエ・イーストは、オーディションで決めたそうですね。映画の中でのソフィーとの正反対ぶりが印象に残りますが、どのような⼈物を求めてオーディションをしたのでしょうか。また、クロエを選んだ決め⼿は?
ウッズ「シスター・パクストンの役は、愛されキャラで、作品のハート(心)となれるような人物なんだ。表面的にはナイーブに見えるかもしれないけど、実は人間性に深みがあり、知性も備え持っている。クロエもまさにそのような人間なんだ。すごく頭がいいし、とても温かく、優しく、純粋な心を持っている。
だから役にぴったりだった。さらにモルモン教を信仰する家庭で育ったから、役に真実味を与えてくれた。モルモン教徒独特のアクセント(なまり)があるんだけど、それも見事にとらえていた。誰もが聞き取れるものではないけど、スコットも僕も、彼女の完璧なリズムをすぐに感じ取ることができた。信憑性のある演技ができて、この作品のハートとなり得て、さらには演技力がある役者を求めていて、クロエはそのすべてに当てはまったのさ」

――⽇本⼈としては、室内に⽴派なししおどしがある時点で緊張感を感じるのですが、今回のセット作成にあたり、フィリップ・メッシーナさんにはどんなオーダーをされたのでしょうか。
ベック「ししおどしについて聞いてくれてうれしいよ。家の奥に進むにつれて、謎が深まっていくような感覚に陥ってほしかった。リビングルームは、人を温かく迎え入れる雰囲気があるかもしれないけど、ディテールに目を向けると実は違和感があるはずなんだ。
窓が小さかったり、ドアの数が通常より少なかったり、あまりにも簡素すぎるインテリアだったり、女性が持っていそうな置物はあるけれど、ミスター・リードしかいなかったりする。さらに書斎に入ると、目の前に大きなドアが2つある。ミスター・リードにどちらか選ぶように言われる前から、選択肢を与えられているような気分になるはずだ。でも彼はすぐにはドアについて触れず、しばらく謎の要素として放置している。
そのような感じでフィリップとは、最初は安心感を与えつつ、次第に危険を感じるような、何層にも分かれているセットデザインにしようと話していた。そしてさらに奥に入っていくと、むき出しの質感のある部屋が目の前に現れる。
ししおどしに関しては、音でサスペンス感を出すためだった。水がしたたり落ちる音、そして竹が鳴らす大きな音でね。ししおどしの本来の用途は、野生生物を威嚇するためのものだから、本当ならパクストンとバーンズも怖がるはずなんだけど、彼女たちはそのまま留まり、気が付いた時には手遅れで抜け出せなくなっているんだ」
『異端者の家』全国公開中
配給:ハピネットファントム・スタジオ
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