『メガロポリス』フランシス・フォード・コッポラ監督インタビュー
長年温めてきた企画をいよいよ実現した『メガロポリス』のフランシス・フォード・コッポラ監督。映画史に名を残す巨匠が、この待望の新作と現代のアメリカが抱える問題について語ってくれました。

フランシス・フォード・コッポラ監督
Photo by GettyImages
この映画には社会学、政治、医学、SF、未来、物理学など様々なアイディアが盛り込まれていましたが、現代社会でメガロポリスを建設できる人はいると思いますか。
「何年も前にローマの叙事詩を現代のアメリカでやりたいと言った時、たくさんの人からその理由を聞かれました。理由はアメリカはローマ共和国の理念を元に建国されたからです。我々は王を望まず、ローマも欲しなかった。彼らはそこで元老院とローマ法に基づく“共和国”という新しい政治形態を考案したのです。我々が受け入れているすべてのものと共にローマのような都市を建設しました。しかしこの映画の企画を考えた時、今日の政治がここまで現実味を帯びるとは思いもしませんでした。私たちの共和国アメリカで、また民主主義で起きていることは、まさに何千年も前にローマが共和国を失った経緯と同じだからです。私たちの政治が私たちの共和制を失うかもしれない所まで追い詰めてしまったのです。もしメガロポリスを建設できるとすれば、それができるのは政治家でなくアーティストでしょう。私の希望は、我が国のアーティストたちが自作の中で今起きていることに光を当て人々に見せることですね。なぜなら見えていなければ行動を起こすことはできませんから』
製作するにあたって私財を投げ打ったそうですが。
「2008年のリーマン・ショックの時、私は当時2000万ドルを借りて、子供たちがワインを飲んでいる親たちのそばで何かできるワイナリーを作ろうと思いました。そこでデンマークにテーマパークのようなワイナリーを作りましたが、これは今ではどこのワイナリーも真似しようとしています。私は2000万ドルを借りた結果、予期せぬお金を手に入れ、リスクを取ることなく映画にリスクをかけただけです。私の子どもたちも財産の心配をする必要はないくらいに自立しているし、まだカリフォルニアのワイナリーを私は所有しています。お金は重要でなく、重要なのは友人です。彼らは決して失望させるようなことをしません。私はこの映画がどうあるべきかを考え、そのためにお金を払ったまでです」
自分のビジョンを保つため、また真のアーティストでい続けるために、どんな恐怖に立ち向かったのでしょう。
「この映画は他の映画と全く別物でした。他に例がなかったのでいろんなことを試みたんです。それにそうするべきと思いました。何故ならこの映画は私自身が出資して製作したからです。多くの人は死ぬときにこうすれば良かった、ああするべきだったと後悔をするでしょう。でも私はこの映画を完成させたこと、娘(ソフィア)がオスカーを受賞するのを見たこと、望み通りのワインを作ったこと、撮りたいと思った映画を実現してきたことを思い出すでしょう。そんなことを考えるのに忙しくて自分が死ぬ瞬間にも気づかないでしょうね(笑)」
『メガロポリス』
2025年6月20日(金)公開
アメリカ/2024年/2時間18分/配給:ハーク、松竹
監督・脚本:フランシス・フォード・コッポラ
出演:アダム・ドライヴァー、ジャンカルロ・エスポジート、ナタリー・エマニュエル、オーブリー・プラザ、シャイア・ラブーフ、ジョン・ヴォイト、ダスティン・ホフマン
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